血圧測定よりも血圧を安定させる生活習慣を(depositphotos.com)

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 健康関連の記事を書くときに、筆者らがとても困るのが、病気の呼称や正常値(基準値)の変化だ。呼称や正常値は時として同じではない――次のような混乱が起きた事案は記憶に新しい。

 2014年、高血圧の正常値として「日本高血圧学会」が定めた数値と「日本人間ドック学会」が定めた数値が異なることとなった。

 どちらが正しいのか? 正常値は誰がどうやって決めているのか? どこかの業界の陰謀なのか? 学会同士だけでなくマスコミも巻き込み論争を呼んだ。

 結局、日本高血圧学会が示した、「収縮期血圧(最高血圧)は120〜129mmHg」、「拡張期血圧(最低血圧)は80〜84mmHg」が「正常値」ということで落ち着いた。収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上になると、日本では高血圧だと診断される。

 高血圧が命に関わる重大な症状を引き起こすことは、すでに広く知られている。血圧が高くなれば動脈の血管壁が硬く厚くなる。これが「動脈硬化」であり、血管が詰まる「脳梗塞」や「心筋梗塞」などの重篤な病気を招く。

 そのほかにも、頭痛や肩凝り、めまいも高血圧で引き起こされる。血圧のコントロールは私たちにとって大事なことだ。そして、血圧とどう付き合っていけばいいのか? 最新研究をもとに考えてみたい。

血圧が激しく変動する人の認知症リスクは2.27倍

 血圧が日によって大きく変わる人は、血圧が安定している人と比べて「認知症」のリスクが2倍以上も高くなることが、九州大学大学院医学研究院精神病態医学の小原知之氏らの研究でわかった。

 この研究は、60歳以上で認知症のない男女1674人を、2007年から2012年まで追跡したものである。対象者は研究開始時に28日間にわたって毎朝3回、家庭用血圧計で血圧を測定した。

 3回の測定値の平均をその日の血圧の数値とし、日々の血圧の変動幅と、認知症リスクとの関係について調べた。

 その結果、対象者の中で194人が2012年までに認知症を発症した。収縮期血圧の変動幅を4段階に分けたところ、変動幅が最も大きい人のグループでは、最も小さい人のグループと比べて、認知症のリスクが2.27倍になった。

日ごとの血圧の変動幅が大きいと......

 「日本の一般的な高齢者において、日ごとの血圧の変動幅が大きいことは、認知症発症のリスク因子である」と小原氏は説明。同時に「血圧の変動幅が大きいことが原因で認知症を発症することが示されたわけではない」と注意を促している。

 一方で、医師や看護師の前では血圧が上がる「白衣高血圧」のように、ストレスによって血圧が上がることはよく知られている。

 また、年齢が高くなるとともに血圧を調整機能が低下するため、血圧が変動しやすくなる。そのため、高齢者が認知症や動脈硬化を心配し過ぎて、家庭用の血圧計で何度も血圧を測定していると、そのストレスで血圧の変動が大きくなる場合がある。これでは逆効果だ。

血圧測定よりも「血圧を安定させる生活習慣」を

 正常値については、過去にゴタゴタも起こったことだし、神経質にこだわることもないだろう。何度も血圧を測定するよりも、「血圧を安定させる生活習慣」を取り入れたい。

 たとえば「ウオーキング」。1日8000歩、そのうち早歩きを20分以上行うと高血圧の予防に役立つと、東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利氏の研究でわかっている。

 国立長寿医療センター研究所所長だった鈴木隆雄氏も、<歩ける能力を維持する>ことが健康長寿を楽しむ第一歩だと著書『超高齢社会の基礎知識』(講談社現代新書)で語っている。
(文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。