「時代劇」から「時代ドラマ」へと様変わりしたNHK土曜ドラマ18時枠。ドラマ『悦ちゃん』でユースケ・サンタマリアが演じる主人公、碌さんは冴えない男やもめの作詞家で、娘の悦ちゃん(平尾菜々花)にしばしばハッパをかけられている。

 悦ちゃんが10歳にしては、おませでしっかり者のせいもあるが、それにしても碌さんは頼りない。3年前に妻を亡くした碌さんがしみったれた生活を送っているのを見かねた人たちが、あれこれ世話を焼きたくなるのもよくわかる。

 銀行の令嬢、日下部カオル(石田ニコル)との縁談を皮切りに、碌さんの周辺がざわつきだし、デパート勤めをしていた池辺鏡子(門脇麦)とも付かず離れずの程よい距離に……。女性に対して一歩引いたところのある碌さんに美女が集まってくるモテ期が訪れているのだ。

 なぜ、碌さんはモテるのか。碌さんは悦ちゃんに対して父親らしく説教をしたりはしない。親子というよりも友だちのような、兄妹のような関係に見える。娘に対しても、目の前にいる美しい女性に対しても、自分の好意を押し付けたりはしない。

 モテたい男性が失敗しがちなのは、自分の理想や好意を押し付けることで相手を引かせてしまうことだ。女性だって、誰かを好きだという気持ちを楽しみたいし、ときめきを実感したい。ちょっと情けなくて、程よく落ち着いたユースケ・サンタマリアの魅力が碌さんのモテに説得力を与えるのだ。

 今の時代でも言えることだが、『悦ちゃん』出てくる登場人物のように、「父親なら父親らしく」「子どもなら子どもらしく」「女は女らしく」などと、型にはめたがる人は多い。しかし、「好きなものは好き」「イヤなものはイヤ」だけど、碌さんにしても悦ちゃんにしても、型にはまらない個性を尊重しあうところが心地よい。碌さんにしても、そのままの自分で勝負していくところにおおらかさ、懐の深さを感じる。

 ガチガチに力の入ったファッションより、抜け感のあるおしゃれに心惹かれるように、自分らしくいられる状態を人は求めてしまうものだ。結婚観も、親と子の関係も昭和初期とは変わってきたとはいえ、『悦ちゃん』を見ていると、やっぱり懐かしく、誰かを好きになったり、好きという気持ちを表現することは幸せなことだと思わせてくれる。碌さんが悦ちゃんの鼻をツンとつつくシーンが印象的で、それこそが愛情のしるしだと伝わる。ふとした瞬間に見せる温かみのある愛情表現こそ、モテる秘訣といえるかもしれない。(池沢奈々見)