中国紙・環球時報は30日、ベトナムの歴史教科書が、南シナ海の島の領有権を主張するために従来とは異なる記述をしたが、かえって墓穴を掘ったと論評する文章を発表した。写真は16年6月11日、東京代々木公園で開かれたベトナム領の南シナ海の写真展示。

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中国紙・環球時報は30日、ベトナム政府直属のベトナム社会科学院がこのほど出版した教科書の「ベトナム史」で、南シナ海の島の領有権を主張するために従来とは異なる記述をしたが、かえって「自国のために大穴を掘る(=墓穴を掘る)」ことになったと論評する文章を発表した。文章は中国東南亜研究会常務理事でベトナム問題の研究者である司鎮涛(スー・ジェンタオ)氏によるもの。

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ベトナムでは第二次世界大戦後、ベトナム民主共和国(北ベトナム)とベトナム共和国(南ベトナム)の2政権が誕生。双方とも相手側政権を認めず、1960年代からは本格的な交戦状態(ベトナム戦争)になった。同戦争において、ソ連や中国など社会主義陣営は北ベトナムを支援、米国や韓国など一部自由主義陣営国はベトナムに派兵して北側と本格的に交戦した。

ベトナム戦争は1975年に北ベトナムの勝利で終結した。全土を統一した北ベトナムはベトナム社会主義共和国と国名を変更。また、南ベトナムが首都としていたサイゴン市をホーチミン市と改称した。

南シナ海にあるパラセル諸島(西沙諸島)は1950年代から中国が東部諸島を、南ベトナムが西部諸島を実効支配していたが、中国は1974年に西部諸島に侵攻して南ベトナム軍を駆逐。パラセル諸島全体を実効支配することになり、現在に至っている。ベトナムは同諸島すべてに対して領有権を主張。中国は、北ベトナムが同諸島に対する中国の主張を認めていたことなどを論拠として、自国領だと主張している。

環球時報掲載の文章は、ベトナム社会科学院による「ベトナム史」が、これまで同国が「サイゴン偽政権」と称していた南ベトナムを「サイゴン政権」とし、「偽軍」と称していた南ベトナム軍を「サイゴン軍」と記述したことに注目。

さらにベトナム政府系メディアが、「南ベトナムの呼称から『偽』を外したことで、南ベトナム政権が南シナ海の島の領有権を主張していたことが、現在のベトナムが領有権を主張する法理的根拠」と報じたことを紹介した。

文章は、現在のベトナムがかつての南ベトナムを「合法的政府」と認めることは、北ベトナム勝利によるベトナム統一は「北側が南側に存在していた国を武力侵略した」ことになると主張。さらに、ベトナム戦争における米国の介入も、南側が合法的な政府として「北からの侵略に抵抗するために支援を求めた」ということになり、「米国は侵略者だった」とするベトナムの従来の主張と矛盾すると論じた。

文章はさらに、「ベトナム人民の偉大なる指導者であるホーチミン主席が代表するベトナム民主共和国は1945年から75年までの30年間において一貫して明確に、南シナ海における中国の立場を固く持続して支持していた。サイゴン政権の主張とは完全に違っていた」とし、南シナ海の島の領有権についてのベトナムの立場には一貫性がないと批判した。(翻訳・編集/如月隼人)