東芝の半導体事業がいよいよ外資の手に落ちる…。 東芝経営陣と銀行団の無能ぶりを嘆く

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東芝の半導体事業の売却話がまとまりかけていますが、日本のマスコミはどうも「都合の良いところだけ」を報道しているようです。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』はこれまでも「外資に売ってはいけない」と警鐘を鳴らし続けていますが、事態は当事者意識を失っている東芝と考えのない銀行団が、外資をボロ儲けさせるだけの破滅の道へと進めてしまっています。

銀行団が融資する7000億円は
そのまま外資系ファンドが懐に入れる

 最新の報道によると、東芝の半導体事業売却は次のような線で進んでいるとされています。

●米系ファンドKKR・産業改革機構・政策投資銀行が1兆円前後を出資、うち日本勢(産業改革機構と政策投資銀行)が議決権ベースの過半数を確保する。
●ウェスタンデジタル(WD)も1500億円を拠出するものの、当初は議決権のない転換社債や優先株とすることで調整中。
●東芝自身も1000億〜2000億円を出資して影響力を残す。
●主力銀行が7000億円を融資する。
●以上により、半導体事業の売却総額は2兆円前後となる見込み。

 これだけだと何が何だかわかりません。そこで少しだけ推測を交えて、この「カラクリ」を解説します。

 東芝は2017年3月末で5529億円の債務超過となっており、2018年3月末までにこの状態を解消しなければ上場廃止となってしまいます(今回は上場廃止を回避するために半導体事業を売却してしまうことの是非は論じないことにします)。

 東芝が子会社化した半導体事業の帳簿価格は7000億円であるため、今期の期間損益をゼロとすれば、単純に7000億円を債務超過分の5529億円上回る価格で売却すればいいはずです。

 しかし、東芝には税務上相殺できる累積赤字がないため、仮に2兆円で売却し1兆3000億円の売却益が出ても5000億円ほどの税金がかかって、自己資本は8000億円増えるだけになります。仮に今季中にウエスティングハウス(WH)の法的整理が完了すれば、税務当局がこれを「損失」と認め5000億円は還付される可能性もありますが、実際問題としては難しく支払いっぱなしとなってしまうでしょう。

 だから最初から「2兆円ありき」で話が進められているのですが、そうするとこの2兆円は半導体事業会社の株式購入代金(つまり出資金)として払い込まれる必要があります。今回もたぶんKKRが主導して、買収のための「特別目的会社」を設立するはずです。

 特別目的会社から払い込まれる株式購入代金を本紙は、KKRが4000億円、産業革新機構が3000億円、政策投資銀行が3000億円、WDが(優先株であれば)1500億円、それに東芝が1500億円と推測していますが、それだと最大1兆3000億円にしかなりません。

 残りの7000億円は主力銀行の「融資」となりますが、この資金は特別目的会社に貸し付けられるため「誰かの出資分」として半導体事業会社に払い込まれる必要があります。

 買収が完了すると、この特別目的会社はいつものように買収された会社(つまり東芝の半導体事業会社)と合併します。そうして、特別目的会社+半導体事業会社は人件費も設備投資もケチって、銀行から借りた融資7000億円をせっせと返済するのです。

 それでは、半導体事業を買収するために払い込まれた2兆円は(というより近い将来に新規上場した時にもっと増えているはずの株式価値は)誰のものとなるのでしょう?

 先ほど考えた通り、実際の出資のために払い込まれる資金は最大1兆3000億円なので、「誰かが」7000億円の融資分(実際は近い将来にもっと増えるはずの7000億円分の株式価値を)をタダで貰ってしまうことになります。

 出資者全員で案分する可能性も1%くらいはありますが、KKRの正体は世界最大のLBOファンドです。LBOのLはレバレッジのL、自分の出資分をはるかに上回る株式価値を確保しないとそもそも出資しない集団です。産業革新機構や政策投資銀行と同じ利益率を求めてわざわざ出動するはずがありません。この買収はKKRだけがボロ儲けする構造になっていると考えておくべきです。

議決権の過半数を国内勢が確保して
安心するのは能天気すぎる!

 「日本勢が議決権の過半数を持つから問題ないのでは?」

 そう考える人もいるかもしれません。しかし、それはあくまでも当初の議決権だけの話。KKRも当初は優先株を取り混ぜて議決権を抑えるはずですが、売却時には普通株に転換してしまいます。

 おそらくKKRは1500億円を出資するWDにもボロ儲けを配分するはずですが、当初の議決権の過半数確保だけで「メンツが守られた」と喜んでいる日本勢には配分されるはずがありません。このあたりを頭に入れて今後の報道に注目してください。

 残念ながら東芝の半導体事業売却はもう止まることはありませんが、最初から選択肢を間違えていると言わざるを得ません。

 8月30日時点の最新報道では「東芝はWDに独占交渉権を与えて9月中に契約締結を目指すことを8月31日の取締役会に諮る」とされています。この報道はパニックになっている銀行団が、東芝経営陣の背中を押すためのリークのようです。

 主力行はすでに半導体事業会社の株式も担保で確保しているはずなので下位行だけが騒いでいるのかもしれませんが、なにがなんでも半導体事業を売り飛ばしてしまおうという思惑ばかりが見えてきます。

 残念ながらもう売却が止まることはないでしょうが、そもそも産業革新機構と政策投資銀行が今回予定をしている出資分6000億円で東芝本体の第三者割当増資を引き受ければ、半導体事業を売却せずとも東芝の債務超過は解消されます。また、2017年4〜6月期で半導体事業は903億円の営業利益が上げており、これはこの期間の東芝全体の営業利益の93%に相当しています。

 それでも、完全に思考停止している東芝経営陣は銀行団に言われるがままに、半導体事業を売却しようというのです。

2015年5月8日、東芝が出した「さっぱり要領を得ないIR」に、闇株新聞が「これは何かある」と睨んで記事にしてから2年4カ月が経ちます。当初、東芝がここまでの事態に陥ることをどのマスコミが指摘したでしょうか。それからも金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』はこの問題を折に触れて取り上げ、解説してきました。読者の皆様は東芝の闇が次々と露わになり、また東芝がどんどん闇の深みへと嵌っていく様をリアルタイムに目撃し理解されたことと思います。残念ながら日本にとって失うばかりの結末になってしまいそうです。