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外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2017年8月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円相場8月の振り返り】

8月のドル/円相場は108.259〜111.047円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%の小幅な下落(ドル安・円高)となった。トランプ米政権の混乱・内紛(16日に、助言組織である製造業評議会と戦略・政策フォーラムを解散、18日にバノン首席戦略官が退任など)や、米連邦公開市場委員会(FOMC)の年内追加利上げに対する不透明感(16日のFOMC議事録で低インフレ懸念が示された)からドルの上値は重く、4日の米7月雇用統計で付けた111.047円を高値に伸び悩んだ。

一方で、ミサイル発射実験などの挑発行為を繰り返す北朝鮮の暴発懸念も相まって108円台に差し込む場面も幾度かあったが、その度に反発するなど下値も堅かった。29日には4月に付けた年初来安値(108.134円)に迫ったが、北朝鮮情勢に対する過度な不安が後退した事や、トランプ米大統領による税制改革への期待が再燃した事から切り返した。

【ドル/円相場9月の見通し】

8月のドル/円相場は、3円未満の値幅に留まる小動きであったが、9月相場は注目イベントが多く、レート変動も大きくなりそうだ。19-20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、バランスシートの縮小が始まる公算が大きい。追加利上げは見送る公算だが、12月の利上げ再開を巡って経済見通し(特にインフレ見通し)や金利見通し(いわゆるドットチャート)が焦点となろう。なお、8月31日終了時点での12月利上げ確率(米短期金利市場や米金利デリバティブ市場の織り込み度合い)は30-35%前後であり、市場には利上げを織り込む余地も、見送りを織り込む余地も残っている。

また、9月5日に夏季休暇明けで再開する米議会の動向も注目されよう。債務上限引き上げの期限が9月末に迫っており、引上げに合意できなければ、10月からの新年度予算が組めずに、政府機関の一部閉鎖が行われる可能性も出てくる。政府機関の閉鎖は過去に18回も行われており、閉鎖が長期化しない限り米経済への影響は小さい事もわかってはいるが、2011年には米国債の格下げという想定外の事態に発展したケースもある。今回の債務上限引上げ問題は、市場が期待するトランプ減税とも絡んでくると見られるだけに、市場心理への影響という点では無視できない材料であり、ドルレートにも影響が出る公算が大きい。

その他、9月9日は北朝鮮の建国記念日に当たり、核実験等の挑発行為に出るとの観測がある。また、12日から25日には国連総会が開催される。ドル/円相場が北朝鮮問題に揺さぶられる場面は9月にも見られそうだ。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya