<中国の圧力で検閲に加担したケンブリッジ大学の弱腰は、アカデミズムに広がる収益変調をあぶり出した>

イギリスの名門大学の出版局が中国当局の圧力に屈して、論文の検閲に加担する――。

ケンブリッジ大学出版局の8月18日の発表に研究者や学生は耳を疑った。中国当局の要請を受けて、学術誌「チャイナ・クォータリー」のサイトに掲載された天安門事件関連などの論文300点以上について、中国からのアクセスを遮断したというのだ。

世界中の学者が抗議の声を上げたため、同出版局は3日後に決定を撤回したが、問題はこれでは終わらない。

中国当局は国内はもちろん、外国に滞在する学生や研究者にも監視の目を光らせる。欧米の大学や学術関係者はこうした動きにどう対応すべきなのか。

ここ10年に欧米で学ぶ中国人留学生は急増した。00年には外国に留学する中国人学生は年間5万人足らずだったが、15年には52万人を突破。中国の教育制度では思考力よりも暗記力が重視される上、退屈なマルクス主義の講座を何コマも履修しなければならない。そんな息苦しい環境から逃れて、欧米で学びたいと思う若者は大勢いるのだ。

【参考記事】ケンブリッジ大学出版局が中国検閲受け入れを撤回

欧米の大学もニーズに応じようと、リクルーターを中国に送り込み、現地の留学斡旋会社を通じて入学志願者を募っている。一方で、名門大学が中国に分校を開設したり、中国の大学と提携したりする動きも活発だ。デューク、ジョンズ・ホプキンズなどアメリカの大学12校が中国の大学と学位・単位の相互認定協定を結んでいる。

しかし検閲や自己検閲が常態化し、学問の自由が抑圧されている中国の大学との提携には批判的な学術関係者もいる。

中国で思想・言論統制が一段と強化されたのは、12年に習近平(シー・チンピン)が権力の座に就いてからだ。大学教授はメディアの取材を避け、当たり障りのないテーマでも口をつぐむようになった。「過去40年で今ほど言論の自由が制限されたことはない」と、ある著名な中国人教授は言う。

中国当局は統制の意図を隠そうともせず、大学の教職員向けの検閲ガイドラインを一般に公開している。それによれば、憲法と共産党指導部の批判は一切許されず、宗教について論じることも禁止されている。

クリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)