ブロックチェーンベースのソーシャルメディア「ALIS」が描く、メディアの未来

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『人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な一歩だ』とは、人類史上初の月面着陸を成し遂げたニール・アームストロングの言葉だが、今日、2017年9月1日は日本のメディア界にとって歴史的な一日になるかもしれない。

ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディア「ALIS」のICOプロジェクトが始まるのだ。日本国内のICOとしては過去最大規模の、世界に向けたプロジェクトとなる。

ICO(Initial Coin Offering)といえば、Mozilla前CEOが設立したBraveが30秒で3500万ドル調達したことで話題になったが、IPOなど株式を用いた資金調達とは異なり、仮想通貨の売却を通じて資金調達を行う新たなファイナンス手法として注目を集めている。

なぜ、ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディアを立ち上げようと思ったのか、資金調達の手段として、なぜICOを選択したのか、その背景にあるストーリーをALISの代表である安 昌浩氏に聞いた。

ブロックチェーン技術を使って、日本のメディアをアップデートしたい

「テクノロジーの力で、人類の進歩に貢献したい」

そう考えていた安氏が、AIやVR・ARなど、様々なテクノロジーが注目を集める中で、ひときわ可能性を感じたのが「ブロックチェーン技術」だった。

ブロックチェーン技術は日本語では「分散型台帳技術」と訳され、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を支える基盤技術として有名だが、この技術を活用すれば医療や不動産、著作権管理などあらゆる産業をアップデートする可能性を秘めている。かつて、インターネット技術が世界中の産業構造を大きく変えたように。


安 昌浩氏:ALIS ファウンダー

安氏:昨年から、一部のWebメディアが「行き過ぎたSEO対策」と「徹底したコスト削減」により、信頼性の低い記事を量産していることが問題になりました。スマホ・ソーシャル時代において、Webメディアを信用できない、というのは大問題です。実際、僕ら自身が仮想通貨やブロックチェーン技術に興味を持ったときに、日本のメディアの情報があまりにも質が低くて愕然としました。

もちろん、そうした粗製乱造を良しとして、デマ情報や役に立たないコンテンツを配信するメディアの責任ばかりが追求されがちです。しかしながら、Webメディアの広告収益を産むためのモノサシが記事の質ではなく量を評価する「PV数」であり続ける限り、「記事の質ではなくコストを賭けずに量(PV)を最大化する」という構造になってしまうのだと考えています。

つまり、「もっと質の高い情報が流通する世の中にしたい」という思いを形にするには、記事コンテンツの質を適切に評価をする「新たなモノサシ」が必要なのですが、新たなモノサシをつくるコア技術としてブロックチェーン技術が有力なのではないか、と考えたのです──

毎日、世界中のブロックチェーン関連サービスを片っ端から使い倒す日々を送る中で、ひときわ心を掴んだのが、Steemというブロックチェーンベースのソーシャルメディアだ。

Steemのユーザーは、質の高い記事コンテンツをSteemに投稿し、他のユーザーからUpvote(いいね)が得られると報酬がもらえる仕組み。Steem上で信頼度の高いユーザーからたくさんいいねされるほど、多くの報酬がもらえるようになっている。


水澤 貴氏:ALIS Co-Founder / Marketing

どのくらいたくさんの人に読まれたか(量)ではなく、どのくらいたくさんの人にいいねされたか(質)によって記事コンテンツの価値が決まる。さらに、すべての人のいいねを同列に扱うのではなく、その分野の専門家など、信頼度や影響力が高い人のいいねほど高値がつくため、コンテンツの書き手側には「専門家にも認めてもらえるような記事コンテンツをしっかり書こう」というインセンティブが働くようになるのだ。

安氏:Steemをはじめて見た瞬間に「これだ!」と直観したのですが、実際に使ってみて、直観は確信に変わりました。

チームメンバーの一人がちょうど南米旅行に行く機会があったので、マチュピチュやボリビアのラグナ・コロラダなどの南米旅行記を写真を交えて紹介したところ、わずか1記事で数時間のうちに30ドル相当の仮想通貨を稼いでしまったのです。

この仕組みならば、「専門家にも認めてもらえるような質の高いコンテンツをつくる」というインセンティブを構造的に作り出すことができる。ブロックチェーンベースのソーシャルメディアプラットフォームに大きな可能性を感じました。

一方で、実際にSteemを使ってみて感じたのは、あまりに複雑な仕組みと、使い勝手の悪さ。だったら、自分たちでSteemを超える「世界一シンプルで使い勝手の良いブロックチェーンベースのソーシャルメディア」を作ってしまおうと考えたのです──

なぜ「日本国内初の大規模のICO」に踏み切れたのか?

「ブロックチェーンとトークンの仕組みを活用したソーシャルメディアをつくることができれば、日本のメディアを進化させられるに違いない」

そう確信したALISチームは、サービス開発や人員強化、マーケティングに必要な資金を調達する方法としてICOを選択した。海外ではいくつか成功事例が出てきつあるものの、日本国内ではまだ前例がなかったICO。リスクが大きい中で、ALISチームはなぜICOによる資金調達を決断したのか。


石井 壮太氏:Co-Founder / Engineering

安氏:海外でのICOが軒並み資金調達をしていたので、我々も海外でプロジェクトをスタートすることも視野に入れていました。でも、できることなら日本でやりたかった。日本でもICOできるんだぞ、ということを、日本人である僕らが証明したい、と考えたからです。インターネット技術が出てきたとき、日本企業がことごとく乗り遅れてしまい、グーグルやアップル、アマゾンといった海外の企業の後塵を拝してしまいました。

インターネットの次の技術として注目をされるブロックチェーン技術では、同じ轍を踏まないように、日本発で世界と闘えるブロックチェーン活用プラットフォームをつくりたい、そしてもっと日本国内のブロックチェーンを盛り上げて行きたいと考えるようになったのです。

ところが、今年の4月に施行された改正資金決済法によって、仮想通貨が定義され、ビットコインなどの仮想通貨の売買等を行う仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されることになりました。

「ICOは仮想通貨として定義されるのか否か」について、当初は金融庁の判断がどう転ぶかわからない状態でした。もし、ICOが改正資金決済法の対象に入るとすると、国内登録事業者になる必要があり、資本金が1000万円以上必要なほか、約9000万円ほどのコストがかかってしまいます。

そうしたリスクを抱えていた状態だったので、当初は日本でのICOを諦めて、ALISのホワイトペーパーも英語や中国語で出し、日本以外の海外の国だけを対象にしたICOに向けてマーケティングなどを行っていました。

その後、国際的な状況を踏まえて、「(ALISが発行するような)トークンはあくまでデジタルアセットであり、仮想通貨には当たらない」という公式見解が出たのです。「これでいよいよ、日本初のICOプロジェクトを堂々とスタートできる…!」 そうして、日本発の世界に向けたALISのICOが始まったのです──

30億円の資金調達によって実現する「ALIS経済圏」

ブロックチェーン技術をベースとしたソーシャルメディアプラットフォーム「ALIS」のトークンの販売は、いよいよ今日、2017年9月1日にスタートする。日本初の大型ICOプロジェクトの幕開けである。

プレスリリースによれば、「まず初期に5億枚を発⾏。その半分を用いての Ethereumとの交換を実施します。配布分の上限は2.5億枚となり、残りの 2.5億枚をALISの運営サイドや運営に協力してくださる方が所有する」するとのこと。目標としている調達金額は3.5億円だが、最高調達金額は30億円に上る。日本国内初の大規模ICO案件で、注目度の高いメディア領域での取り組みとあって、億単位での資金調達に成功する可能性は十分にある。ICOによって調達した資金を活用して、どんなロードマップを描いているのだろうか。

安氏:ICOによって資金調達と並行して、サービス開発に向けたエンジニアの採用と、システム設計を進め、3ヶ月でユーザが触れるモックレベルのMVPを、半年以内のβ版リリースを計画しています。

ALISのリリース後、まずは仮想通貨に特化したメディアづくりを進めます。特にこの領域は質の低い情報が横溢しているからこそ、この分野に対して詳しく、大きな影響力を持った書き手を多く集め、「仮想通貨のことを学びたいならALISで情報収集しよう」というブランドを確立します。その次のステップとしては、仮想通貨という領域から他領域にも横展開し、グルメや旅などクチコミサイトにもチャレンジしようかなと思ってます。

そうして、様々な分野で記事コンテンツが蓄積され、信頼性の高い記事がどれで、信頼性の高い文章が書ける人が誰で、どのユーザーが誰を評価しているかというデータが貯まれば、そのデータベースの上にCtoCの経済圏を構築したいと思っています。ALIS上で時間やスキル・ノウハウのシェアリングができる『ALIS経済圏』をつくりあげるイメージです。

誰かが中央集権的に決めた基準でその人やコンテンツの価値が決まるのではなく、分散型かつ流動的にコンテンツの価値が決定され、流通されていく。そうした営みを可能にすることこそが、ブロックチェーン技術の本質──
 


ALISの登場によって、メディアやコンテンツの価値をはかるモノサシが変わる。これは日本のメディア界にとっても大きな出来事になるのではないか。ALISの動向に、これからも目が離せない。