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法務省は来年度から、空港における日本人の出入国審査について、コンピュータによる「顔認証」の技術を活用して、本人確認するシステムを本格的に導入する。

法務省によると、(1)日本人の利用者が空港の出入国ゲートで、ICパスポートをリーダーにかざすと、ICチップ内の顔写真を読み取る、(2)同時にゲート内のカメラで、利用者の顔写真を撮影する、(3)その2つの画像を照合する−−という流れだ。

より多くの入国審査官を外国人の審査に振り分けることで、出入国審査を円滑にしたり、その厳格さを維持・充実することを目的としているという。これまでの自動化ゲートは、事前に指紋を登録する必要があったが、顔認証によって面倒な事前登録が不要になる。

一方で、顔写真の利用があることからプライバシー侵害などを危惧する声もある。法務省の担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に「顔画像は照合が終われば消去する。プライバシーに配慮して適切に運用していきたい」と話している。

今秋にも、成田や羽田、関西空港など、利用者の多い空港で、この顔認証の自動化システムが導入される予定だ。はたして、今回のようなシステムは法的に問題ないのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

●「法務省が本当に顔画像を消去しているかを確認する制度的保障がない」

「このシステムで法律的に問題となりうるのは、まず、みだりに写真を撮られない権利としての肖像権ないしプライバシー権です。

しかし、顔認証システム導入前の入出国審査は、人間の係員がパスポートの写真と見くらべて本人かどうか確認しているわけです。この作業を機械に代行させるだけですから、基本的には、適法と考えられます。

また、実際問題として、日本人用ゲートを全部無人化することは技術的に無理でしょうから、どうしても顔認証されたくない人は、有人ゲートを利用すればよいということになります。

ただし、顔画像の取扱いには問題が残ります。法務省は『顔画像は照合が終われば消去する』と回答しているとのことですが、本当にそのとおり運用されているか否かを確認する制度的保障がないからです。

わが国は、今年5月に施行された改正個人情報保護法で、初めて『第三者委員会』を導入しました。しかし、この第三者委員会は、たとえば英国のプライバシーコミッショナーと異なり、政府機関を監視監督する権限を持ちません。

法務省が本当に顔画像を消去しているか否かを確認することはできませんし、まして、消去を命令する権限もありません。

顔画像を消去せず、ICチップ付きパスポートの情報を紐付けて、国単位で管理すれば、国民の入出国履歴は正確に把握できることになります。将来は、世界の多くの国で同様のシステムが導入され、国際的な移動経路が全部把握されることになるでしょう。

技術的にも、テロ防止の観点からも、それ自体は避けられないでしょうが、法律的には、『海外渡航の自由』『移動・居住の自由』『信教の自由』『表現の自由』にかかわる問題になりかねません。

個人情報保護法が改正されたことは、進歩ではあるものの、30年前の英国にすら追いついていないことを自覚したうえで、技術の進歩に合わせて、人権保護の仕組みを考えていく必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
小林 正啓(こばやし・まさひろ)弁護士
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。
事務所名:花水木法律事務所
事務所URL:http://www.hanamizukilaw.jp/