オーストラリア戦に臨んだ日本代表のスターティングイレブン【写真:Getty Images】

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「4:6」の狙い。ボールハンターと速攻要員

 8月31日、2018年ロシアW杯アジア最終予選オーストラリア戦に臨んだ日本代表。ボールポゼッションでは相手を下回ったものの、ボール奪取とカウンターに長けた陣容で効率よくゴールを奪取し本大会出場権を確保した。日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、リアリスティックかつ明確な狙いをもってして僅差勝負をモノにしたと言える。(取材・文:西部謙司)

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【日本代表2-0オーストラリア代表】

 日本のボールポゼッションは38.4%、オーストラリアは61.6%。勝ったのは支配率の低い日本、よくある結果といっていい。

 支配率7:3なら、7のほうが相当な確率で勝利する。ところが、6:4なら「4」のほうが勝つ。統計を調べたわけではないが、そう外れていないと思う。サッカーはそういう傾向のある競技だからだ。

 6:4のゲームで「4」のチームはカウンターアタックを狙っている。「6」のチームはボールを持てるけれども、引いている相手に対して攻撃をすることになる。人数をかけてスペースを消して守る相手を崩して得点するのは簡単ではない。

 一方、「4」のチームはスペースを持ってのカウンターなので攻撃しやすい。7:3になってしまうと「3」のチームは自陣から出られず、チャンスすらなかなか作れない状況になってしまうが、6:4なら「4」のほうがむしろ有利なのだ。

 ハリルホジッチ監督は4:6の試合を挑んだ。オーストラリアはおあつらえ向きの相手だった。

 ポステコグルー監督は展望と勇気のある指導者だと思う。古い英国サッカーのようなフィジカルとパワーによるシンプルなスタイルから、パスをつなぐスタイルへ変えた。これがオーストラリアに本当に合っているのかはともかく必要な要素ではある。将来、このときが分岐点だったといわれる時も来るかもしれない。

 ただし、現時点でのオーストラリアのポゼッション・プレーはまだ板に付いていない。そこそこつなげるが、引いている相手を崩すための方法が明確でない。そのため、容易にボールを持たされている状況に陥る。70%とれるほどのパスワークでもない。最後の答えを持たないパスワークはつなげばつなぐほどミスの確率が上がる。

 日本は長谷部誠、山口蛍、井手口陽介のボールハンター3人を中盤中央に配置した。浅野拓磨、乾貴士のスピードと運動量のある両翼、キープ力抜群でタメを作れる大迫勇也の3トップは完全なカウンター要員だ。

 日本は4人のゾーンでは横幅を守れないが、5人で埋めて人につけば守れる。つながせても怖くない、つなぎすぎればオーストラリアは必ずミスをする。ハリルホジッチ監督の狙いは明確だった。

ピンチの後に…大きかった先制点

 前半20分で日本はハイプレスを諦めて撤退に入る。オーストラリアが支配する予想どおりの展開へ。38分、マシュー・レッキーのシュートがポストに当たって外れる。攻め手のないオーストラリアでも押し込めばそれなりのチャンスはつかめる。しかし41分、長友佑都のクロスをオフサイドぎりぎりで飛び出した浅野が沈めて先制した。

 後半もオーストラリアが攻め込むが、有効な崩しは出来ず。逆にミスを拾った日本がゴールに迫る。大迫のボールを収める能力は傑出していて、チャンスになりそうにない状況でもキープしてタメを作り、逆襲につなげる。82分には原口元気のボール奪取から井手口が豪快なミドルを叩き込み2-0とリードを広げた。

 日本にとって大きかったのは先制点だ。逆に先制されてオーストラリアに引かれ、縦のスペースを消されていたら、「縦に速い攻撃」しかできない日本は選手交代なしには打開できなかっただろう。レッキーのシュートがポストを叩き、少し後に浅野のシュートが入ったのはターニングポイントだった。

 オーストラリアはGKからもパスをつなぐ姿勢をみせていた。日本にプレスさせてロングボールで裏返しにするつもりだったのだろうがフィードに精度を欠き、唯一形になりそうな攻め手も奏功せず。トミ・ユリッチとティム・ケーヒルを投入した後も放り込みに徹することもなく、最後まで日本に脅威を与えるに至らなかった。

 日本、オーストラリア、サウジアラビア、UAEの力が均衡していた今回の予選では、丁寧に相手の良さを潰して僅差勝負をモノにしなければならなかった。UAEに緒戦で敗れた後、リアリズムに徹したハリルホジッチ監督の下でもぎとった予選突破だった。

(取材・文:西部謙司)

text by 西部謙司