本田圭佑はベンチスタートとなり、オーストラリア戦で出番なしに終わった【写真:Getty Images】

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「本田、香川がいないのは心配」「乾はいい違いを生む」

日本代表は8月31日、ロシアW杯アジア最終予選でホームにオーストラリア代表を迎え、2-0で勝利した。そして6大会連続となるW杯出場権を獲得。来年、ロシアで開催されるW杯本大会への切符を手にした。この試合中、スタジアムで取材するイングランド人ライターのショーン・キャロル氏に随時話を聞いた。

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ーー日本代表のスターティングメンバーが発表されました。本田圭佑香川真司がいませんね。ハリルホジッチ監督は思い切った決断を下しました。

「びっくりしましたね。本田、香川、岡崎のような選手がいないので少し心配…。オーストラリアは最近フォーメーションやプレースタイルが変わったので、ハリル監督は足もとがうまくてスピードのある、もう少し若い選手を使いたいのかな」

ーーオーストラリアの3バックの裏をサイドから突きたいということでしょうか。

「その通りですね。オーストラリアのディフェンスはそんなに強くない。裏を狙えば可能性はある。でも、正直に言えばこのような試合では経験がある選手の方がいいかもしれない」

ーーオーストラリアのスターティングメンバーにも意外な選手が入っています。

「ムーイは風邪で、ユリッチは怪我だからね」

ーー試合が始まりました。日本の入りはとてもいいように見えます。

「オーストラリアのDFは少し緊張しているみたい。日本はいいプレッシングをかけている。前からしっかりプレッシャーを与えているね。本当にいい入りだけど、まだチャンスは作っていない」

ーースタジアムの雰囲気はいつものW杯予選の試合と違いますか?

「雰囲気はすごくいい。本当のサッカーの試合の雰囲気!」

ーー序盤、オーストラリアの攻撃の狙いは見えますか?

「最初の10分間はカウンターを狙っているように見える。オーストラリアはたぶん、勝ち点1で満足じゃないかな。次はタイとのホームゲームだからね。日本はこの試合、勝たなければいけないと思う」

ーーなぜでしょうか? もちろん勝ってほしいですが、日本は引き分け以下でもW杯出場の可能性が残ります。

「いや、もし今日勝てなかったらサウジアラビアとのアウェイゲームで勝ち点1が必要になる。それは難しい。サウジアラビアはこの前にUAEに負けたから、次は絶対に勝つつもりのはず」

ーー確かに、サウジアラビアのホームでは何が起こるかわからない…。

「そうですよね!」

ーー乾貴士がミドルシュートを打ちました。それ以外の場面でも積極的で本当に目立っていますね。

「彼はこのメンバーの中で一番積極的かもね。チームにいい違いを生むと思う」

ーー今日は井手口陽介がコーナーキックを蹴っています。ここまでの彼はいかがですか?

「彼の守備はアグレッシブだね。タックルするのが好きみたい(笑)。オーストラリアと戦う時には、そういう選手は重要だよ」

「攻撃が遅すぎる」「酒井宏樹が目立っていた」

ーー前半ここまでで、本田と香川がいないことの影響はありますか?

「今のところないですね。このメンバーは思ったよりいい流れを作った。主導権を取ったね」

ーーまだオーストラリアにシュート1本しか打たれていません。守備がうまくいっている印象です。

「でも、日本もあまりいいチャンスを作っていない…」

ーー主導権を握ってもチャンスが増えないのはなぜでしょうか。

「ファイナルサードでの判断力や精度を上げなければいけないと思う。大迫と乾、浅野の3人が一緒にプレーするのは初めてかな?」

ーー6月のシリア戦後半に20分弱だけ3人揃ってピッチに立っていたはずです。

「そうか。でも先発では初めてだね。ちょっと時間がかかりそう」

ーーこの状況を打開して、より多くのチャンスを作るには何が必要ですか?

「ペースを変えないといけない。今、攻撃が遅すぎる。大迫がワイド、浅野がセンターフォワードだと少し変わるかな」

ーー攻撃の課題を話していたら浅野が先制ゴール! 絶妙なタイミングの素晴らしい飛び出しでした。

「やっぱり浅野がセンターフォワードの方がいいかな(笑)」

ーー先制したら日本はまた前線からのプレスがうまくハマるようになってきて、チャンスを作れましたね。

「でも、オーストラリアのDFがパニックになっているわけではないと思う。まだ時間があるからね。ただ攻撃にスピードとインテンシティを加えたらゴールになる可能性が高まる」

ーー前半は1-0で日本がリードして終了しました。

「カウンターで少し危険な場面もありましたが、全体的に良かったね」

ーー得点した浅野はもちろんですが、一番目立っていたのは酒井宏樹のような気がします。攻撃にも守備にも要所で効果的なプレーを見せていました。

「僕もそれに同意。宏樹はとても目立っていた選手」

ーー後半、いきなりオーストラリアにチャンスを作られました。前半は日本がカウンター、オーストラリアがポゼッションという展開でした。この流れが変わると日本にとっては少し危ないような気がします。

「いや、たぶん日本が変わった方がいいと思う。日本がもう少しボールを持てれば、オーストラリアは疲れるはず」

ーー大迫のボールキープから乾が飛び出してドリブルで仕掛け、2人だけでカウンターを完結させました。日本がこれだけ少ない人数で攻撃できるとは、数年前には想像もできませんでした…。

「そうですね。でも、今はリードしているので前がかりになりすぎない方がいいと思う。オーストラリアのディフェンスラインが上がれば、裏にカウンターを狙う可能性はもっと高まる」

「若手の方がマッチしている」「長谷部の存在はすごく重要」

ーーオーストラリアはエースFWのトミ・ユリッチを投入してきました。長身のストライカーが入ったことで少し前に出てくるでしょうか。

「少しロングボールが増えるかもね」

ーーそしてティム・ケーヒルが入ってきます。この交代でチームの雰囲気が変わるかもしれません。

「日本がビビらないように願っています(笑)」

ーー70分まで見てきて、本田と香川がいない影響はさほどないように思います。むしろ2人がいないことによって、ハリルホジッチ監督が理想とするスタイルに近づいているような…。

「そうですね。この若手たちの方がオーストラリアのエネルギーとマッチしている。ここまではいいですが、まだ終わっていない」

ーー乾が交代します。彼は本当に成長しました。守備でも効果的な働きができるようになり、ドリブルもチームのために活かせるようになりました。頼もしい選手です。彼の成長をどう見ますか?

「以前は僕の頭の中で彼のイメージといえば『攻撃的な選手』だけでしたね。いい意味で少しわがままなタイプでした。でも、6月の代表戦で自分のプレーだけ考えるのではなく、チームに貢献するスタンスになったのが見られました」

ーー乾は代表のレギュラーに定着できると思いますか?

「どうだろうね。あのポジションでどんな選手が出るのかは対戦相手によると思います」

ーー井手口がものすごいゴールを決めました! 先ほどのミスを帳消しにするとんでもないミドルシュートでしたね。

「すごかったね!」

ーー井手口はアーバインを抑えながらシュートまで持ち込みました。守備でも激しく相手にぶつかっていきました。本当に21歳なのか? と…。彼はこれから代表の中心になっていくでしょうか?

「そうですね。僕も井手口がスタメンに入ったときは少しびっくりしましたが、今日の活躍はもっと年をとった経験がある選手みたいでしたね。もしあのレベルをキープできれば代表の中心になれるかもしれないけど、常に同じレベルでプレーしないといけないね」

ーーそして長谷部誠が中盤にいるとチームが本当に落ち着きます。ひざの状態は100%ではなかったようですが、彼の存在は大きいですね。

「その通りですね。今日はたまにミスもありましたが、彼の存在はすごく重要。僕は火曜日に彼と岡崎にインタビューして、彼の雰囲気は本当に良い。何を言っても信頼できるタイプですね。ピッチに立っている時、チームメイトにとっても頼もしい存在です」

「本田や香川が必要ないわけがない」「絶対にハリルで続けるべき」

ーー2-0で勝利! 日本代表の6大会連続のW杯出場が決まりました。率直な感想を聞かせてください。

「正直に言えば驚いていますね! この試合の前は『絶対引き分けになるかな』と感じていて、W杯出場が決まるかどうかはサウジアラビア戦になると思いました。でも、今日のパフォーマンスは本当にプロフェッショナルでした。チームは成長していると思います」

ーー香川と本田がいないチームで勝ちました。ハリルホジッチ監督がオーストラリアの弱点を狙ったゲームプランを立てて、それがうまくハマった試合になりました。このまま今日のような戦い方を続けていくべきでしょうか?

「それは両面あるでしょうね。もちろん今日は若手で、本田や香川なしで勝ちましたが、今から彼らのような経験豊富な選手たちが必要ないわけがない。サッカーにはいろいろな時があるので、これからも彼らは大いに貢献できると思います」

ーーとはいえボール支配率33.5%でシュート17本、勝利。日本の世代交代とスタイルの変化を象徴する試合になったのではないでしょうか。

「難しいね。今日、日本よりも相手の方がポゼッションする試合も勝てると証明したけど、まだ1試合だけからわからないね」

ーーハリルホジッチ監督は予選を通して香川や本田をアンタッチャブルな存在にすることなく、大迫、久保、乾、井手口…と結果的に新しい選手を欠かせない戦力に育てました。監督の手腕はどのように評価しますか?

「僕は個人的にハリル監督を評価する。彼は常に周りを意識せず、自分のやりたいことをしますね。今までもちろん苦しいときもありましたが、彼は同じように進んできたので、W杯出場につながっている結果も評価しなければいけないと思います」

ーーまずは一安心。W杯出場を決めました。サウジアラビア戦、そしてその先はどのように戦っていくべきでしょうか?

「まあ、サウジアラビア戦は意味ないですね。もちろん負けたくはないけど、目的は達成しました。だけど、その先はまだいろいろな点で成長しないといけない。今日のようなパフォーマンスを時々見せるだけではなくて、恒常的にこのようなパフォーマンスを発揮しなければなりません」

ーーハリルホジッチ監督はプライベートの問題を抱えているようですね。W杯まで監督をやってくれるか心配です…。

「僕はその問題について何も知りませんが、絶対にハリル監督で続けた方がいいと思います」

ーーありがとうございました! また次の試合もよろしくお願いします!

▽語り手:ショーン・キャロル
1985年、イングランド生まれ。2009年に来日。「デイリーヨミウリ」「Jリーグ公式ウェブサイト」などにも寄稿。高校サッカー、Jリーグ、日本代表など幅広く取材している。過去にはスカパーのJリーグ番組出演も。

text by 編集部