先日、市民団体によりネット上に公開された、加計学園獣医学部の設計図。この図からは、192億円とされる建設費の「水増し疑惑」と、重篤な病気を引き起こす病原体を扱うBSL3の実験室の杜撰な配置等が明らかになりました。同図を入手し詳細に検討したメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、その危険性を指摘し専門家の意見を引きつつ192億円というコストについて疑問を呈すとともに、メディアから逃げ回り続ける同学園の加計孝太郎理事長の姿勢を厳しく批判しています。

建築図面から疑う加計獣医学部の「国際水準」

今治市の市民によって、加計学園・獣医学部の建築図面がネット上に公開された。

それを見た専門家は細菌やウイルスを封じ込める設備の貧弱さを見抜き、建築家は192億円の建設コストが高すぎると指摘した。

市民団体は過大な補助金を今治市から引き出すための建設費水増しではないか、市民が病原体の危険にさらされるのではないか、と不安を募らせる。

人口減少が続く今治市。大学を呼び込んで街の活性化をはかりたい気持ちはわかる。だが、財政は悪化の一途。資金の余裕はない。

にもかかわらず、獣医学部誘致のために、37億円相当の土地を無償譲渡し、さらに最大で96億円もの補助金を投入する基本協定書を加計学園とかわした。借金でまかなうにしても、市民の税金で返済していくほかはない。

加計学園系列の千葉科学大学を設立するのに77億5,000万円にのぼる補助金を負担し、多額の借金にあえいでいる銚子市の二の舞となりかねない。

そんな状況に直面している今治市民が、加計学園・岡山理科大の獣医学部新設にかかわる市の巨額負担を知ったのは、今春になって問題が表面化してからのことだ。

4月に初めて行われた市の説明会では、市民の怒りが噴出し、千葉科学大の吉川泰弘教授(加計学園新学部設置準備室長)に厳しい意見が浴びせられた。その後のマスコミ報道によって「総理の権力私物化」疑惑が全国に広がり、獣医学部新設に反対する市民の声が強まっている。

おまけに、加計学園理事長と今治市長が、誘致に賛成するよう議員たちを買収したという疑惑まで持ち上がり、市民が地検に告発する事態に発展している。

今治市などに情報公開を求めてきた市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表は、獣医学部の建築図面を内部告発で入手した。広く意見を求めるため公開しているので、筆者もダウンロードしてみた。

なにはともあれ、獣医学部棟の図面を見てみよう。

1階にはマウスなど小動物の飼育室がぎっしり並んでいる。その一角に動物実験センターと感染実験室、通常実験室があり、それぞれ洗い場が設置されている。2階はほとんど講義室。3、4階は講義室と実習室。

注目すべきは5階だ。教員室、学生室と研究スペースになっているが、通常は安全性の面から別棟になっているはずのBSL3(バイオセーフティレベル3)の実験室が、レベル2実験室の隣に配置されている。

BSL3は、生死に関わる重篤な病気を引き起こすが、ヒトからヒトへの伝染はない黄熱ウイルス、狂犬病ウイルスなどグループ3に分類される病原体を取り扱える実験室だ。

ヒトからヒトへ感染するエボラウイルスなどBSL4の施設は日本では国立感染症研究所と理化学研究所筑波研究所にしかなく、筑波の場合は周辺住民の反対でBSL3までしか使用されないという。

日本の大学でBSL3施設を持っているのは

北海道大学東京大学長崎大学京都産業大学大阪大学大阪府立大学鳥取大学佐賀大学麻布大学

で、獣医学部なら必ずこの施設があるわけではなさそうだ。

危険なウイルスを扱い、なおかつ完全に密閉するというのは、研究実績のない大学には、かなりハードルが高いといえるのではないか。

しかし、加計学園の獣医学部が、先端ライフサイエンス研究、越境感染症や人獣共通感染症の水際対策を掲げている以上、BSL3実験施設は欠かせないということになるのだろう。

そこで、設計図面におけるBSL3実験室に目をこらした。

学生室と研究スペースにはさまれたP2実験室(BSL2)の一角に、ユニットの部屋がつくられ、「クリーンルームP3」と記されているのがそれである。ただし、図面上、BSL3らしい設備が確認できるのは「エアーロックルーム」と記載されていることくらいだ。

「エアーロックルーム」はバイオハザード対策の装置で、気密構造のドアと、室内の負圧化によって汚染の拡散を防ぐという。

だが、これで万が一の事態に対応できるのだろうか。最大の問題はBSL3施設が別棟になっていないことだ。

普通の壁ひとつ隔てた隣には学生室や研究スペースがある。何らかのミスや故障等により実験室内で感染が起きた場合、感染者が、室外に出ただけで、この建物内が汚染され、感染が広がる恐れが出てくるだろう。あまりにも無神経ではないか。

BSL3について、WHOの指針には「実験室は、建物内の交通が制約されていない区域と切り離さなければならない」とある。つまり学生や教員が自由に往来できる場所に隣接するということ自体、その指針に違反している。

むろん、かりに認可され、1年生が入学してすぐにそんな研究にとりかかれるわけがなく、実験室がすぐに役立つということではない。

たとえば北海道大学獣医学部における6年間の教育課程を見てみると、1年生は一般教養であり、2〜4年生で基盤的獣医学、臨床獣医学を含む「コアカリキュラム」を履修する。5年生から附属動物病院などでの臨床実習とともに、卒業後を考慮した課題研究に取り組むことになる。

つまり岡山理科大獣医学部のBSL3実験室が本格的に使用されるとしても、かなり先のことになる。だからといって、必要となった時にきちんとしたものにすればいいという甘い考えでは、うまくいかないだろう。図面を見る限り実験室はかなり狭く、必要な機器が設置できるスペースが確保できるかどうかも疑わしい。

ガス消毒用の通気管システムや自動の手洗い場など設備の詳細はこの平面図に書き込まれていないのでなんとも言えないが、別棟にもせず、スペースが狭いのは明らかである。先述した通り、学生室や研究室と隣接しているのも危険だ。

なぜこんな中途半端な設計にするのだろうか。レベル3の病原体に挑もうという気などさらさらないからではないか。そんな疑いが図面から湧きあがる。

BSL3実験室をつくることにして、特区提案に必要な先端研究施設の体裁だけを整え、その実、中身はあとまわし。認可されてしまえばこっちのもの、ということではないのだろうか。

そこで問題となってくるのが先述した192億円という建設費だ。先進的な設備にコストが高くつくのは当然で、構想にふさわしい施設を建設するなら、そのくらいかかるだろう。

だが、設計図面を見る限りでは、ごく普通の仕様である。建築エコノミスト・森山高至氏も「鉄骨造で、壁は6cmの成形コンクリート版、床は配線・配管などの底上げなしのコンクリート打ち、室内壁・天井は石膏ボードにビニルクロス、何一つ高いものはなく倉庫に毛が生えたような建築仕様」(黒川氏のサイトより)と指摘する。

「建築コストをケチって普通の住宅やオフィス程度に作っていることがバレバレである。そうすればお金が余って着服することもできる」と言う黒川氏の憤りも、あながち大げさとはいえないかもしれない。

加計学園の加計孝太郎理事長はメディアから逃げ回らず、記者会見なりして獣医学部新設の理念を自ら語ったらどうか。

四国に獣医学部がなく、感染症の水際対策にあたる公務員獣医師が不足していることを問題視するのであれば、愛媛県、今治市と連携し、学生が公務員獣医師として地域にとどまる仕組みを考えるべきだ。

全体数としては足りている獣医師が偏在し、公務員獣医師の不足が深刻なのは確かである。そこを埋める意志が具体化された計画なら、国家戦略特区の特例的学部新設として意味があるだろう。

既設の獣医学部にはできない教育研究機関になると信じられる判断材料はいまのところ皆無だ。しかも、やり方があまりに姑息なのではないか。

姑息といえば、「一点の曇りもないの大嘘。今度は政府公開の『議事要旨』に疑惑」で取り上げた国家戦略特区ワーキンググループの議事要旨改ざん問題に関し、内閣府と八田座長のとった対応策にも、呆れてしまう。

民進党の疑惑調査チームから議事要旨ではなく、議事録そのものを出すよう要求され、「それなら」とばかりに、議事録をサイトにアップしたのはいいのだが、これが姑息というか、なんとも人を食った内容なのだ。

まずは、おさらいをしておこう。

2015年6月5日の愛媛県、今治市に対する獣医学部新設計画のヒアリング。「議事要旨」の冒頭に、次のようなやりとりが記されている。

藤原(内閣府地方創生推進室)次長「資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか」

 

山下(愛媛県)地域振興局長「はい」

実はこの時、愛媛県の地域振興局長は「非公開」を希望していた。「議事録」とは別に、「議事要旨」を作成した今春になって初めて愛媛県と今治市は公表を了承したのだ。

つまり、「はい」と言ったのは2年後のことである。なのに、それをヒアリング当日のこととして議事要旨に書き込んだ。

しかもこの議事要旨には、出席していたはずの加計学園幹部の名と、彼らの発言、説明内容は全て削除されている。明らかに「加計隠し」だ。

民進党の疑惑調査チームは「これは改ざんだ」と批判、正式な議事録の公開とともに、八田座長からの説明聴取を求めていた。

八田座長は出席を拒み、議事録と称するものを出して、議事改ざん問題の決着をはかろうとしているように見える。議事要旨と議事録を比べてみよう。

<議事要旨>

 

藤原次長 資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか。

 

山下地域振興局長 はい。

<議事録>

 

藤原次長 資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか。

 

山下地域振興局長 済みません。諸般の事情によりまして、非公開でお願いできたらと思っておるのです。理由は、対抗するというか、いろいろな意見を持った勢力もかなりあることと、行政の支援で、議会筋のようなところにまだ説明が至っていないので、その辺はちょっと非公開でお願いできたらという理由でございます。

 

八田座長 わかりました。ただし、提案なさっていること自体は議会の方も御存じですね。

 

山下地域振興局長 はい。

 

藤原次長 提案をしていただくこと自体は公開させていただきますけれども、提案内容、議事録は非公開という位置づけにさせていただきます。

この変更箇所以外は、すべて議事要旨と同じである。これでは、議事録と議事要旨の違いは、都合の悪いところを変えただけということになる。要旨とは、内容のあらましをまとめたものであるはずだ。相反する記述の議事録と議事要旨が内閣府のサイトに並んでいる。前代未聞ではないか。

なにより、出席した加計学園側の発言が相変わらずカットされているのは不可解だ。提案者ではなく「説明補助者」である加計学園側の発言は非公式なもので議事録には載せないという内閣府の説明は、内部的にそう決めているのかもしれないが、国民を納得させうるものではない。そもそも疑惑の払拭に逆行するではないか。

獣医学部の設計図面も同じだ。文科省は、BSL3施設が適切であるかどうかは大学設置認可の審査対象ではなく、厚労省の所管だと言う。それなら、厚労省はいつ調査するのかと民進党議員が追及しても、明確に答えない。

総理が主導する国家戦略特区がらみのこの案件に、厚労省が関与を避けていたことが思い出される。こんなことでよいのだろうか。

8月末までに出す予定だった答申をいったん保留にした大学設置・学校法人審議会は、ポーズに過ぎなかったと言われないよう、細部にわたって厳正に審査してもらいたい。

image by: 首相官邸

出典元:まぐまぐニュース!