[8.31 W杯アジア最終予選 日本2-0オーストラリア 埼玉]

 左サイドから送られたボールに反応したのは、一人だった。完全にフリーでファーサイドで待ち構える日本代表FW浅野拓磨(シュツットガルト)は、「本当に時間があった」と得点場面を振り返った――ー。

 勝利すればW杯出場が決まる大一番のオーストラリア戦。浅野にスタメンが伝えられたのは前日のミーティングだという。「トレーニングの流れからは大体予想していたけど、確実に分かったのは前夜」。代表戦以外の試合でも「基本緊張する」浅野にとって、それからの時間は「どの試合よりも緊張した」時間であり、「ピッチに入るまでドキドキした」ようだ。

 右ウイングの位置に入った浅野だが、前半22分にはDF酒井宏樹(マルセイユ)とのワンツーでリターンパスを失敗。同35分にはDF長友佑都(インテル)から送られたクロスをヘディングで合わせるもジャストミートさせられず、同40分にはグラウンダーのクロスを味方に合わせられないなど、ボールに絡みながらもなかなか得点に結び付けられなかった。

 だが、スコアレスで迎えた前半41分に大仕事をやってのける。左サイドでボールを持った長友が鋭いクロスを送ると、「逆サイドの人が中に切れ込んだときや、中盤の人がボールを持ったときの抜け出しは常に狙っていた」と浅野が相手マーカーを完全に置き去りにして裏に飛び出し、ゴール前でフリーになる。

「空中のボールもゆっくり見えていたし、前に大迫(勇也)さんが詰めているのも見えていた。(自分のところまで)誰も触らずに来れば『ゴールだな』という考えを持てる時間もあったので、慌てずに枠に入れることだけを考えた」

 冷静に左足ダイレクトで合わせたボールが、ゴールネットを揺らす。6大会連続のW杯出場に大きく前進する先制点を記録すると、代名詞とも言える“ジャガーポーズ”を披露して歓喜を爆発させた。 値千金の先制点で主導権を握った日本は、後半37分にMF井手口陽介(G大阪)がダメ押しとなる鮮やかなミドルシュートを突き刺し、2-0の完封勝利を収めてW杯出場を自力で決める。

「僕は今まで貢献できたなかったからこそ、『ここで決めたらヒーローだ』と自分に言い聞かせて、『ヒーローになるんだ』という気持ちでやったし、大舞台に強いんだと言い聞かせるくらいで、ピッチに入った。今までにないくらい緊張して、一日緊張しながら準備したけど、本当に良かった」。言葉どおり、“ヒーロー”となった男は、緊張から解放されて安堵の表情を浮かべていた。

(取材・文 折戸岳彦)


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