By Sam Churchill

コンピューターゲームやビデオゲームでの対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」は、近年アメフトやバスケットボールなどのプロスポーツ業界を脅かす存在になっているともいわれており、賞金総額約20億円の世界一高額なeスポーツの世界大会が海外で開催されたり、日本国内でも賞金1億円の世界大会につながる国内最大級のeスポーツイベントが開催されたりと盛り上がりを見せています。そんなeスポーツがオリンピックの種目に選ばれる可能性が浮上しているのですが、そこにはひとつの大きな問題が存在するようです。

Violent video games have ‘no place at the Olympics’, but e-sports are still in the running | South China Morning Post

http://www.scmp.com/news/china/society/article/2108501/violent-video-games-have-no-place-olympics-e-sports-are-still



If esports come to the Olympics, don’t expect to see ‘violent’ titles - Polygon

https://www.polygon.com/2017/8/30/16228134/olympics-esports-violent-video-games

2020年東京オリンピックの次の夏季開催となる2024年オリンピックは、フランスの首都パリで開催される予定となっています。パリオリンピックでは東京オリンピックと同じ28の正式競技が実施される予定なのですが、その他に、オリンピック主催国で根付いているスポーツや、多くの国で親しまれているスポーツをオリンピック競技として実験的に実施する「追加種目」として、eスポーツの追加が検討されています。

2024年のパリオリンピックでは「eスポーツ」が正式種目化か、委員会が種目追加の可能性を言及 - GIGAZINE



しかし、オリンピックの主催およびオリンピックに参加する各種国際スポーツ統括団体を統括する国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、「もしもeスポーツがパリオリンピックの競技に選ばれたとしても、特に人気の高いゲームタイトルは含まれないだろう」と、South China Morning Postとのインタビューの中で語っています。

バッハ会長はeスポーツとオリンピックについて、「我々は、非差別、非暴力の中で人々の平和を促進していきたいと考えています。この理念は、暴力や爆発、殺害などが含まれるようなビデオゲームとは一致しないため、明確に一線を引かなければいけません」と語り、暴力的な描写が含まれるゲームはオリンピックの競技としてプレイされるのにふさわしくないとしています。つまり、eスポーツの大会が開催されているFPSのCounter-Strikeやオーバーウォッチ、さらにはリアルタイムストラテジーゲームのDota 2やLeague of Legendsといった人気の高いゲームは、オリンピックでプレイされるのにふさわしくないものと認識される可能性が高いということです。



By dronepicr

それではどういったものがオリンピックでプレイされるのにふさわしいのかと言えば、「サッカーゲームをプレイしたり、その他のスポーツゲームをプレイしたりすることに、我々は強い関心を持っています。我々が望むのは、そういったゲーム(スポーツゲーム)のプレイヤーが、実際のスポーツと遜色ないパフォーマンスを披露してくれることです。そして、それらを見たファンが最終的に現実世界でのスポーツに興味を持ってくれれば、我々はさらに幸せだろう」とバッハ会長は語っています。

スポーツ専門のゲームブランドであるEAスポーツは世界的なヒット作であるFIFAやNBA 2Kといったスポーツゲームシリーズを持っていますが、これらはゲーム実況配信サービスのTwitch上では視聴数がトップ10にも入っていないそうで、実際にeスポーツとして人気のあるタイトルとオリンピックでプレイするのにふさわしいタイトルの間には食い違いがあるとゲーム関連メディアのPolygonは指摘しています。

また、もしもスポーツゲームがeスポーツとしてオリンピックでプレイされることとなったとして、同じ大会の中で現実で行われているスポーツではなくゲームの中で行われているスポーツを誰が見るのか、という疑問も浮かび上がります。オリンピックはスポーツそのものの価値や哲学を大きく普及できる舞台ではありますが、広告主がオリンピックの放送権に対して惜しみなくお金を支払っているのは、オリンピックというコンテンツが数千億円規模の巨大な宣伝広告の場として魅力的なものであるからです。そう考えると、「誰がオリンピックで開催されているeスポーツを見るのか?」という部分もふまえて競技されるゲームを選ぶ必要があります。



By Tobechi Ugwumba

さらに、バッハ会長はeスポーツをオリンピックの追加種目とするために共に働くべき、国際陸上競技連盟(IAAF)や国際水泳連盟(FINA)のような世界的な統括機関が存在しない点も問題であると語っています。これについては、Polygonが「世界的な統括機関がないという指摘は、ゲームが暴力的だという苦情よりも厄介だ」と記しています。

それでも、若年層の取り込みに積極的になっているIOCによる、若年層から絶大な人気を誇るeスポーツを競技として取り込もうという動きは確実に進行中です。実際、バッハ会長と会合を持ったアリババのジャック・マー会長は、「オリンピックをデジタル化するためにIOCと協力する予定だ」と語っています。これは若年層の間で進むTV離れへの対策であり、その上でデジタルプラットフォームとの相性の良いeスポーツの取り込みを狙っているというわけです。