『バイキング』(フジテレビ)ホームページより

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 今月上旬に「週刊文春」の報道で、二股不倫が発覚した雨上がり決死隊の宮迫博之。騒動も冷めやらぬなか、先週末の『24時間テレビ』(日本テレビ)でスペシャルサポーターを務めた。

『24時間テレビ』直後の『行列のできる法律相談所』(同上)の生放送で、宮迫は不倫騒動渦中での『24時間テレビ』出演について、こんなことを語った。

「ほんとにこんな状態の僕を出していただいた、24時間のスタッフ様、日テレ様、本当に感謝です」
「最初は出ないほうがいいのかな、と思ったんですけど、出していただいたことによって、いろんな面でホンマに反省もできましたし、反省もしましたし......」

 不倫スキャンダルにもかかわらず降板させず出演させてくれた日テレに対し、感謝を述べ感極まって涙まで見せたのである。『24時間テレビ』の余韻にも助けられ、なんとなく"いい話"っぽくなっていたが、ちょっと待ってほしい。

 本サイトはべつに不倫を批判するつもりもないし、むしろ不倫を犯罪のごとく糾弾する現在の風潮には批判的だ。だから、『24時間テレビ』に宮迫が出演したことにも日テレの判断にも、なんの文句もない。

 だけど、だったら、ベッキーは? 矢口は?

 日テレだけとっても、ベッキーは『世界の果てまでイッテQ!』、矢口は『ヒルナンデス!』のレギュラーだったが、騒動から1年以上経ったいまもまだ復帰できていないままだ。宮迫を『24時間テレビ』に出演させ、『行列』のレギュラーも継続するのであれば、ベッキーや矢口をなぜ復帰させないのか。

 日テレだけの話ではない。ベッキーも矢口も騒動時、全レギュラーを降板したが、宮迫はアフラックのCMが削除されたくらいでレギュラー番組については、降板や休止の話は出ていない。

 こう言うと、たとえばベッキーは会見で嘘をついたり会見で質問を受け付けなかったが、宮迫は生放送の『バイキング』で厳しい追及にさらされながら正々堂々と説明したから、などと言う人もいるかもしれない。

 しかし、『バイキング』での生釈明をあらためて思い返してほしい。宮迫は、本当に、厳しい追及にさらされ、正々堂々と説明していただろうか。

『バイキング』は自身がレギュラーを務める番組で、いわばホーム。質問したのもなじみのある共演者ばかり。様々なメディアが参加できる記者会見とはまったくちがう。実際、ベッキーや矢口が糾弾されていたときのような、厳しい批判や追及はほとんどなかった。それどころか、「黒!」「グレー!」「オフホワイト!」などと、真相を追及するというよりは、宮迫をいじることで笑いに変換してあげようという空気に満ち満ちていた。

 たとえば、宮迫は下心があったことは認め謝罪しつつも、モデルの小山ひかると1回目にホテルに行った際は「泥酔していたので、寝てしまって、何もしていない」。小山と2回目に行ったときは「誘ったが、断られて、何もできなかった」などと、"一線は越えていない"と否定。複数回ホテルに行っておいて、ふつうなら通用するはずのない言い訳を展開した。これがほかのタレントだったら、「あり得ない」「嘘つき」と厳しく批判されているはずだ。

 しかし坂上忍や東国原英夫ら共演者も、「部屋に入った時点で外形的には何かあったのと同じ」などと言いながら、"一線は超えていない"という宮迫の詭弁に、疑いを差し挟んだり、厳しく突っ込む者は誰ひとりいなかった。

 また、宮迫は泥酔していたと主張しているが、文春に掲載されている部屋に入る宮迫の写真は、泥酔しているようにはまったく見えない。これもほかのタレントであれば、絶対に突っ込まれていたと思うが、誰もそんなことは言わない。

 さらに、運転手にチェックインさせ、宮迫や女性はフロントを通らず客室に向かうという計画的な手口に対し、坂上は「プロの手口ですね」と言っておきながら、その明らかに継続的に不倫しているとしか思えないルーティン化した手口と宮迫の「その夜たまたま魔が差した」的な言い分との矛盾には触れない。

 それどころか、文春の記事にあったのに、テレビではほとんど触れられなかったこともある。『バイキング』では、宮迫の密会について、その夜限りの"一夜の火遊び"(実際は撮られてるだけでも2回だが)的なニュアンスでしか扱われていなかったが、文春の記事では、宮迫と小山がそれなりの長い不倫関係であることを示唆する、小山の知人のこんな証言が掲載されていた。

〈ひかるもいまの関係には悩んでいて、『年末に別れる』という話し合いをしたそうですが、『僕(宮迫)が結婚した二十七歳になるまでには別れないとね』ということに落ち着いたみたいです。宮迫さんは『ひかるが一番だよ』と甘い言葉をかけてくるんです。ひかるが『他にもいるだろうけど』と強がっているのが忍びないですよ〉

 つまり、宮迫と小山は昨年末以前から交際していて、年末に別れ話になったが、宮迫が「小山が27歳になるまでには」と別れを引き延ばした、ということだ。

 この証言と、宮迫の釈明はまったく食い違っている。もしこの証言が事実ならば、宮迫が釈明したような、その夜、泥酔していたとか、一線を超えたか超えてないかとか、オフホワイトかグレーとか、そういう話ではない。というか、宮迫の説明は、真摯どころか、本当の疑惑には一切触れない大嘘だ。ベッキーの「友だちで押し通す予定!」とハッキリ言ってなんら変わらない。

 しかし、『バイキング』でこの食い違いに突っ込む者は誰ひとりいなかった。というより、そもそも『バイキング』をはじめどの番組でも、この証言についてはほとんど取り上げられていない。

 それ以前に、2回同じ女性とホテルに泊っておいて「2回とも"一線は越えていない"はあり得ないだろう」とか、宮迫は泥酔していたと主張しているが「文春」に掲載されている部屋に入る宮迫の写真は、「泥酔しているようにはまったく見えない」とか、ほかの人のスキャンダルだったら、絶対ツッコんでいるはずだ。

 実際、『バイキング』は宮迫釈明の前日には、斉藤由貴の不倫釈明会見での表情を、心理学者に分析させ、「左上を見てるから嘘をついている」などというデタラメな批判までしていた。

 しかし宮迫の不倫についてはそんな追及は一切なく、あくまで"一夜の火遊び"的なものとして、笑い話にして片づけてしまったのだ。

 さらに、宮迫は得意の"恐妻家ネタ"でいかに妻に怒られたかを披露したあと、「あなたのガンが再発したとか、子どもが交通事故に遭ったとか、に比べれば、こんなことは屁でもない」「家族だから味方する」という妻からの言葉を、涙ながらに語る。坂上も「家族の問題だから」「奥さんが許しているのであれば」などと応じ、片岡鶴太郎にいたっては「芸人の妻なら浮気も甘受すべき」などと言い出し、最後は宮迫の妻がすばらしいという美談仕立てでまとめられてしまった。

 ベッキーのLINEの言葉尻を執拗に責め上げ、矢口の男癖のあることないこと騒ぎ立てていたのとは、大違いだ。

 いったいこの扱いの違いはなんなのか。本サイトで繰り返し指摘している通り、ひとつは所属事務所の力の差によるものだ。ワイドショーやスポーツ紙などの御用芸能マスコミは、同じ不倫でも、ベッキーや矢口のように弱小事務所に所属するタレントは犯罪者のごとく糾弾される一方、ジャニーズ事務所やバーニング系列のタレントであれば、不倫のような恋愛スキャンダルはもちろん、犯罪まがいの不祥事すら一切触れない。

 宮迫の所属する吉本興業はジャニーズやバーニングほどではないが、松本人志はじめ、幹部級や超売れっ子タレントについては、批判やスキャンダルを封じ込めようと動くことでも知られている。また、各テレビ局は吉本の株主になっているらめ、決定的な醜聞については自主規制する傾向もある。

 しかも、ワイドショーには、大量の所属芸人がコメンテーターとして送り込まれている。『スッキリ!!』(日本テレビ)には加藤浩次と近藤春菜(ハリセンボン)、『ビビット』(TBS)には千原ジュニアと中田敦彦(オリエンタルラジオ)、『バイキング』(フジテレビ)にはブラックマヨネーズと小籔千豊とフットボールアワーと横澤夏子と雨上がり決死隊、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)には高橋茂雄(サバンナ)と川島明(麒麟)と斎藤司(トレンディエンジェル)、そして、『ワイドナショー』には松本人志と東野幸治......。全国放送の主なワイドショーだけでもこれだけの芸人が出演している。関西やその他のローカル番組、インターネットやラジオなども含めれば、その数倍にものぼるだろう。

 そのため、芸人に何かスキャンダルや不祥事が起きたとき、お仲間の芸人が、互いのスキャンダルをギャグにしてかばい合う構造ができあがってしまっているのだ。

 今回の宮迫の件は、その最たるものだ。宮迫生釈明の2日前、不倫の一報が報じられた水曜日の時点から、『スッキリ!!』(日テレ)などスルーするワイドショーも多かったなか、『バイキング』では、まず冒頭から坂上が「ハッキリ言っておきましょう、クロです」と言って、コメンテーター陣も、オセロの松嶋も白って言ってあげたいけど、黒(笑)」、アンガールズ田中も「先輩だけど、黒(笑)」、おぎやはぎの矢作が「漆黒だな(笑)」と口々に黒と言いながら、みんなで爆笑。一見、「黒」と言って宮迫をディスってるふうを装いながら、完全に笑いにしていた。明らかに、2日後金曜日の宮迫出演に向け、宮迫が出てきやすい笑いの下地をつくっていた。

 そして、金曜日の宮迫生釈明も、前述のとおり、いかにディスりつつ笑いにしてやるかに、MCの坂上はじめ出演者たちは注力していた。話術のないコメンテーターがただ擁護しても逆に炎上するだけだが、芸人たちはなまじ話術がたくみなだけに、ディスりつつ笑いにするという団体芸で、視聴者もだまされてしまう。

 所属事務所の力の差、芸人のお仲間意識...ここまで、宮迫がほとんど追及されなかった理由について分析してきたが、しかし、宮迫とベッキー、矢口の扱いの違いにはもうひとつ大きい理由がある。それは、不倫をしたのが男性か、女性か、という違いだ。男性の不倫、しかも芸人の場合は"芸の肥やし""ヤンチャ"などの言葉で許容されるが、女性の不倫に関してはほとんど犯罪者のような扱いで糾弾される。

 男女のどちらが既婚か未婚かも関係ない。ふつうに考えたら、既婚者である宮迫と、未婚でかつ相手が既婚者であることも知らなかったベッキーを比べたら、ベッキーより宮迫のほうが非難されそうなものだが、現実は逆だ。

 しかも女性に子どもでもいようものなら、「そもそも母親が家に帰らず何をしているのか」という批判が上乗せされる、宮迫にも子どもがいると思うが「父親が家に帰らず何をしているのか」とは決して言われない。

 女性にだけ貞操を求め、男性の不倫はネタとして笑い話にされる。しかも、男性の不倫を許容する妻が良き妻として称賛される。

 この傾向は、不倫や浮気をした女性に厳しいだけでなく、実際は不倫された妻のほうも蔑ろにされている。

 宮迫が使った"恐妻家ネタ"や"できた奥さん"のような美談も、一見妻を尊重しているように見えるかもしれないが、実のところ、女性を蔑ろにしている。宮迫がどんなに恐妻家キャラを演じたところで、メディアに自ら発言の場をもっておらず、経済的に支配下にある妻は、実際は圧倒的に弱い立場だ。本当に許容するような発言をしたのか、それが本音なのかはわからない。

 実際、昨年不倫が発覚した乙武洋匡氏の元妻は、乙武氏に対し、『ワイドナショー』で「妻も不倫はもともと知っていた」などと離婚の経緯について事実と異なることを話したとして提訴している。

 しかし、芸人たちが、不倫を許してくれる妻を称賛することで、許容しない妻をガマンが足りないと暗黙のうちに非難するのだ。乙武洋匡氏の元妻のように「自分にも責任があった」とまで言わされたり、夫の浮気が原因で離婚した小倉優子は明石家さんまから「おまえが悪い」と言われていた。

 もちろんこれはメディアの問題だけでなく、女性の性に不寛容な日本社会の空気という問題もある。べつに男性だけが女性を批判し男性を許容しているというわけではなく、女性でも男性の不倫は許容しつつ女性の不倫には厳しい人も少なくない。もともとマッチョで男尊女卑の傾向が強い芸人たちが、さらに世間の空気に乗ってお仲間の不倫は笑いにしつつ、女性の不倫は厳しく批判する。そして、話術に長けた芸人たちがスピーカーとなることで、女性により厳しい空気がさらに強化されているのだ。

 ネトウヨたちが、いまの日本は女尊男卑だなどとよく言うが、宮迫の不倫報道を見て、それでもまだそんなことが言えるのだろうか。
(本田コッペ)