切り口で断面の絵柄が変わる話題の羊羹(ようかん)「Fly Me to The Moon羊羹ファンタジア」について、製造する老舗菓子店・本家長門屋の6代目夫婦、鈴木哲也さんと鈴木静さんに取材した。

鳥が徐々に羽ばたき、満月に

この羊羹は、1848年創業の福島県会津若松市の本家長門屋が販売している。

三日月で止まっていた鳥が、徐々に満月に向かって羽ばたき、景色も少しづつ夜の帳が降りていくストーリーが羊羹の中で展開される。

暮れゆく空色に変わりゆく山並み、羽ばたく鳥などジャズメロディーのような味わいを持つ、切り分けるのが楽しくなる一品。切る場所で一切れの味わいも変化する。

出典:本家長門屋

先日ネット上に商品についてのツイートが投稿されたところ、たちまち話題沸騰。

「綺麗」「芸術作品」「おしゃれ」「涼しげ」「アートだよね」「食べるのがもったいないぐらい可愛い!」など反響が殺到し、投稿から3日足らずで4万5000超リツイート、8万4000超のいいね!がされている。

伝統和菓子に新たなシーンを創出

同店では6年前から「伝統和菓子に新たなシーンを創出する」ことをコンセプトにした和菓子シリーズの開発に取り組んでいる。

「羊羹ファンタジア」は第3弾として1年かけて開発し、今年4月1日から販売を始めた。

ひと口サイズが好まれる昨今ですが、羊羹のような棹菓子は、切り分ける事でひとつのテーブルを囲むという良さもあります。今回の商品は、そんな昔ながらの羊羹の良さを現代にマッチさせたいと思い開発しました。

面倒と思われがちな羊羹の切り分けを、ケーキのように、取り分けが楽しくなり、今までにないコミュニケーションを生むことができるようイメージを膨らませ、試行錯誤した結果、今の形となりました。

ぜひ多くの方に、和菓子を囲むひとときをみんなでシェアして楽しんで頂きたいです。

出典:「本家長門屋」HP

和菓子ならではの遊び心が

今回の羊羹のストーリーとデザインは、長門屋の6代目夫婦が考えた。

他にも色々なアイディアはあったのですが、世界中の人たちと共感できるモチーフを探す中で鳥と月のストーリーとなりました。

出典:「本家長門屋」HP

菓銘の「Fly Me to The Moon」(私を月に連れて行って)は、フランク・シナトラが大ヒットさせた往年のジャズナンバー。和菓子ならではの楽しみ方を世界中の人と分かち合いたいと命名した。

和菓子には、最中や羊羹といった商品名のほかに「菓銘」が付けられており、多くの場合地域の名所、花鳥風月、和歌などから付けられます。

これは菓銘を知ってから食べることで、菓銘に潜む物語をその和菓子と一緒に楽しむという和菓子ならではの文化です。

菓銘の曲は、愛する人に思いを告げる熱いラブソング。気になる彼女からこのお菓子をプレゼントされたら…?少しドキドキするギフトになるのではないでしょうか。

月へ向かう鳥の色は幸せのブルーバードです。お菓子を通じて、きっとあの人に想いが届きますように。

パッケージと背景にもこだわり

パッケージと背景にもこだわりがある。

デザインを担当したのは、日本画家の舛田玲香さん。同県浪江町の出身で、津波被害を受けて現在も避難生活を送る。

舛田玲香さん出典:「本家長門屋」HP

震災後、「美しい絵は人を笑顔にする」との信念から、日本画の技術で美しいファンタジーの世界を描く挑戦をしているという。

ワクワクするギフトにふさわしいものにしようと、日本画家の舛田さんに依頼し、羊羹に合うパッケージを描き下ろして頂きました。

今回のコラボレーションでは、お互いが良い相乗効果を生み出し、従来の和菓子のイメージを覆すようなオシャレなパッケージに仕上げることができました。

鳥と月の変化はもちろん、背景の色も実は少しずつ変化しています。

写真に撮られたあと、ぜひ満月と三日月の背景色の変化を見比べてみてくださいね。

デザインの原画 出典:「本家長門屋」HP

羊羹の専用容器を新たに開発

専用の「羊羹容器」も新たに開発した。

羊羹を切ってくださいという提案は、「すべて手間なく便利に」を追及する今の時代とは真逆を行くものです。

切って楽しんで頂くご提案をする以上、簡単に切り分けられ、更に簡単にしまいやすい事が必要不可欠であると思い、一から新たな羊羹容器を開発いたしました。

羊羹を出しやすく、切るときはまな板に、しまう時もそのまましまえる容器です。台形の形をしているので、お皿に乗せるときに立てやすくなっています。

提供:長門屋

和菓子は「五感の芸術」

販売開始からまだ5カ月弱にも関わらず、店にはSNSなどを通じて商品への多くの反響が届いているという。

特に、和菓子離れと言われる若い方が多数お店に来て頂けるようになってきており、ネット時代ならではの反響の大きさと嬉しさを感じております。

本家長門屋/Facebook

「食べるのがもったいない」という声も多い。

和菓子は五感の芸術と言われます。見て、食べて、嗅いで、耳で菓銘を聞き、触れる事で全てを味わい尽くすことができます。

見た目から手にした方にも、ぜひ味わっていただくことで、手作りならではの和菓子の美味しさを感じて頂けたら何よりの幸いです。

福島の食をポジティブなイメージに

この商品には「福島」の未来への思いを込めているという。

素材には会津特産の鬼くるみを使用し、様々な側面から福島を語ることができる商品だ。

6年前から始めたシリーズ同様、この羊羹も「福島の食を未来志向のポジティブイメージに変えていく」ことを大きな目的のひとつとしています。

Cool JAPAN ならぬ、Cool FUKUSHIMAを物語る商品として、福島のこれからを知ってもらうためのハブ商品としても育てていきたいと考えています。

 

出典:「本家長門屋」HP

 

今後、羊羹ファンタジアをシリーズ化する予定はあるのか。

「未定ですが、将来的にはぜひ作っていきたいです」

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