その他の写真

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は大ヒット中の『スパイダーマン』新作。マーベルはマンガもしっかり読み込むほどの小出部長とハマ・オカモトが、マーベル素人の福岡とレイジの前でしゃべりまくり!


活動第37回[後編]『スパイダーマン:ホームカミング』


参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)



マーベル大好き小出部長とハマが語りまくりな[前編]はこちら


『スパイダーマン:ホームカミング』は初心者にも優しい


福岡 私、マーベルのって、この映画部でしか観てないかも。でも今回のが面白かったから、今までの他の映画も観たくなった。


ハマ そうさせる要素も絶妙で良かったです。マーベルに馴染みのないお客さんに「観てないとわからないや」と思わせてしまうともったいないじゃないですか。これは初心者にも優しいですし、他の作品への興味も引くという理想的なバランス。


福岡 何より主人公が親しみやすい。ピーター役のトム・ホランドって男の子、声が高いのがめっちゃ良かった。


ハマ 実年齢は今21歳だったかな。でも完全に高校生に見えますよね。


福岡 他の『アベンジャーズ』とかは全部ゴツそうやったけど、このピーターはかわいらしいな。


小出 そうだね。そもそもスパイダーマンの原作のキャラクターイメージって、陽気なヤツなのよ。そこから考えると、映画の旧シリーズのスパイダーマン=ピーターって、みんなめちゃめちゃナイーブじゃないですか。


レイジ 暗かった。


小出 暗い暗い。


ハマ 『アメイジング・スパイダーマン』は、暗い設定をチャラい表情の人(アンドリュー・ガーフィールド)が演じていて、僕はそれがすごくダメでした……。


──ある時期から、特に9.11以降、アメコミものってヒーローのリアルな暗さと弱さを描くのが流行って、当面はそっちがスタンダードになりましたよね。


小出 そうですよね。サム・ライミ監督の『スパイダーマン』旧シリーズ(2002年〜2007年)は、その傾向の走りみたいな感じで。そのあとクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008年)とかが出てきた。


だけど『アベンジャーズ』シリーズはこの2年くらいコメディ要素をしっかり盛り込んでいて、キャラクター同士の掛け合いも楽しみになってますよね。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はシリアスな内容だったけど、スパイダーマンやアントマンが和ませてくれました。


 


ジョン・ワッツ監督のひとつ前の映画もすっごい良い作品


ハマ ちなみに今回の監督、ガチのオタクで、東映の特撮テレビシリーズ『スパイダーマン』(1978年〜1979年)も全部観ているらしいです。


小出 そう、ジョン・ワッツね。この『スパイダーマン:ホームカミング』が大きい商業映画デビュー作品になるんですけど、ひとつ前の映画が『COP CAR/コップ・カー』(2015年)っていう作品で。


低予算だしスケールもタイトな映画なんだけど、すっごい良い映画で。お話の発端は、男の子ふたりが林でパトカーを見つけてふざけて乗ろうとする。で、本当に動いちゃってそのまま運転して行っちゃうの、パトカーを。


福岡 うんうん。


小出 しばらくしたら、パトカーの持ち主の警官が戻ってきて「あれ? 車がない」って(笑)。実はその警官は悪いヤツで、パトカー置いて自分が殺した男の死体を埋めてたのよ。でもトランクにはもうひとり入ってる。


車は男の子コンビが運転してどこかへ行っちゃった。これはマズいぞ! と追いかけっこが始まるっていう。ブラックコメディな感じで始まるんだけど、終盤はすごいシリアス。そしてラストは息を飲んで見守りたくなるという。


福岡 え〜! それ観たい。


小出 主人公の男の子はやんちゃなのと気弱なヤツのコンビで、そのふたりの成長譚でもあるんだよね。大人の怖さを知ることで、階段をのぼる。


今回のピーターとバルチャーの中の人の関係性もそうでしたよね。スパイダーマンとバルチャーとしての戦いではわからなかった、中の大人の怖さ。


福岡 たしかに。


小出 そして人に頼らず、自分で自分を「立てスパイダーマン!」と鼓舞して戦う。それが大人への一歩だったし、本当のヒーローへの一歩だったと。「大いなる力には大いなる責任が伴う」の今回バージョンみたいなことなんだと思う。


 


あの頃、クラスでは隅っこの存在だったふたりが……


福岡 『スパイダーマン:ホームカミング』も男の子コンビの話やもんな。ピーターの親友になるネッド(ジェイコブ・バタロン)って子もすごい良かった。


小出 あいつ、個人的にもたまらないんだよね。クラスで無視されて友達がいなくなった中1のときも、見放さずに友達でいてくれたデブの友達がいるんだけど。ムネカワっていう、そいつにすげぇ似てる。


ハマ 重ねちゃう感じですね?


小出 もう重ねちゃって、重ねちゃって。そいつがいなかったら中学時代を乗り切れなかったかも。


ハマ 良い話ですね。今、ここでムネカワくんに想いを伝えます?


小出 当時、登下校で学校から駅までバスに乗ってたんだけど、カースト上位の連中と一緒のバスになりたくないから、いつもわざと1本遅らせてたのね。それにムネカワが付き合ってくれて。


そこで、お互いにロボットアニメが好きだから、ムネカワが『ゲッターロボ』シリーズの漫画を貸してくれたり、僕は『マジンガーZ』を教えたり、『新世紀エヴァンゲリオン』のラストについて熱く語ったりしてたんだけど。


そんなムネカワが、休み時間に分厚い本を熱心に読んでることがあって。「何読んでんの?」って聞いたら、時刻表の本なのよ! 時刻表検定受けるためのやつ。


ハマ ガチのやつだ。本当に好きな人だったんですね。


小出 彼は電車オタクでもあったんで、やっぱり将来は電車系の仕事に就きたいって。実際、部活も鉄道研究部だったしね。


福岡 鉄研!


小出 でも高校を卒業してからは疎遠になって、会うことはなかったのね。で、僕らがメジャーデビューして5年目くらい、ツアー初日で京都に前乗りの日だったんだけど、僕だけ東京で仕事したあとにひとりで新幹線移動で。


でも、その日体調が良くなかったから自腹でグリーン車で行こうと思って、東京駅のみどりの窓口に切符を変更しに向かったのね。で、窓口で「グリーン車にしてください」って切符を出したら……「こいちゃん?」って言われて。


レイジ おぉっ!


小出 ムネカワだったのよ!


ハマ おぉぉぉぉ〜!!


福岡 えぇぇ〜すごーい!!


小出 「えっ、ムネカワ、ここで働いてるの!?」「そう、JRに入ったんだよね」って。「本当にJRの人になったんだ! すごいじゃん!」って興奮してたら、ムネカワが変更の手続きしながら「こいちゃんもバンド、頑張ってるらしいね」って。


──おぉ〜!!


小出 「CD買ってるよ」。それまで一切連絡取り合ってなかったんだよ? えぇっ! と思って。


福岡 ……泣ける!


小出 「今日はどこかで仕事なの?」「明日からツアーで」って言ったら「頑張ってね。俺、ここ担当だから何かあったらここに来て」って。でも、俺の後ろにもうおばさんとかが並んでいたから、そんなに立ち話する訳にもいかず。


「また来るから!」って、ムネカワが変更してくれたグリーン車に乗ったんだけど、もうめっちゃ泣いちゃって(笑)。グスグス泣きながら、京都に行ったという。


福岡 うわ〜っ、めっちゃええ話やな。


小出 バンドやってて良かった! って心から思ったよね。。


──この話、映画を超えてるかも(笑)。何より素晴らしいのは、中学の時にやりたかったことをお互い仕事にして続けているっていうね。


小出 そうなんですよ。あの頃、クラスでは隅っこの存在だったふたりがね……。だからネッドはね、ピーターのムネカワになってもらいたいですよ。


レイジ それはすごい。マジで感動しました!


ハマ うん。ムネカワさん、『スパイダーマン』観てね!(笑)。


TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)



終演後、次回は何を観ようか検討中。『ドリーム』の看板を見て、邦題改変について話が止まらない部員たち。このテーマを語る回もやってみたい……。