秋山英宏 全米レポート(3)今もっともギラギラした男、杉田祐一が初戦に快勝

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1回戦を突破したダニエル太郎の記者会見は、スペイン語、英語での短い質疑応答のあと、日本語でのやりとりに移った。この夏、成績が伸びなかったことで「今日もあまり勝てる自信がなかった」とダニエル。その「自信」についてさらに説明を求められると、こう答えた。

「モチベーションが上がってこない感じ。もちろん勝ちたいけど、本当に勝てると信じてないみたいな。だから、あきらめたりとかはしてないですけど、たまに、そこにいるだけみたいな感じがする」

「そこにいるだけ」というのが面白い。語学に堪能だから日本語の表現力も高いのだろう。選手というのは、そこにいるだけではダメなのだ。確かに、試合に勝つのは、自信がにじみ出るようなたたずまいで、ギラギラした強い存在感を放つ選手だ。

残念ながら、今季の錦織圭はトッププレーヤーにふさわしい存在感を示せていない。一方、強いオーラを放っているのが杉田祐一だ。

ウィンブルドンの前哨戦アンタルヤでツアー初優勝を飾ると、全米前哨戦のシンシナティでは、マスターズ1000大会初の8強入りを果たした。この1回戦でも、絶好調の選手ならではの勢いと存在感を見せ、最初から最後まで、ドヤ顔で試合を進めていった。

前日は2セットを続けて奪いながら、第3セットの最初のゲームで降雨中断、そのまま順延となった。リードしていた選手には恨みの雨だろう。しかし今の杉田には何の影響もない。晴天のもと再開された試合は、前日以上のワンサイドゲームになった。

6-2,6-2,6-0で決着した試合を杉田が振り返る。

「若い選手は体力もあるので、一回乗せてしまうと危ないという危機感はあった。なるべくチャンスを与えないことを心がけた」

相手を乗せるどころか、チャンスの芽さえ与えない、見事な試合運びだった。

全米初出場、初勝利となった。だが、記者会見で感想を聞かれた杉田は素っ気なく答えた。

「うれしいですが、(初出場、初勝利の)意味は特には」

松岡修造氏をしのぐランキング43位をマークし、テニス人生最大のブレークスルーのただ中にある杉田には、特別大きな勲章というわけではないのだろう。

ツアー初優勝以降、周囲の自分を見る目が変わってきたのを感じるという。

「選手も警戒してくれている。ここから戦っていかなくてはいけないんだなという環境になっている」

あえて客観的な言葉を使っているが、そこには杉田の覚悟が読み取れる。

もっともっと、ギラギラした感じを押し出そう。ドヤ顔で、どんどん行こう。

どこまで走れるか。杉田には、今が勝負の時なのだ。

(秋山英宏)

※※写真は「全米オープン」1回戦でブランカノーをストレートで下した杉田祐一
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