『ドラえもん物語 〜藤子・F・不二雄先生の背中〜』(むぎわらしんたろう/小学館)

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 今年(2017年)『月刊コロコロコミック』5・6月号に掲載され、大反響を呼んだ話題のマンガが20ページの描き下ろしを加えて、ついに単行本化された。8月29日に発売された『ドラえもん物語 〜藤子・F・不二雄先生の背中〜』(むぎわらしんたろう/小学館)はマンガ家・むぎわらしんたろうさんが、ドラえもんの生みの親である藤子・F・不二雄氏と過ごした日々を回想した実録コミックである。ここではその見所を、いくつかのポイントに分けて紹介してゆこう。

●point.1 藤子プロの日常が分かる!

 少年時代に『ドラえもん』と出会い、マンガ家を目指すようになったむぎわらさんは19歳で藤子不二雄賞に入選。それがきっかけとなって藤子・F・不二雄先生の藤子プロに誘われる。本作には若き日のむぎわらさんが覗いた、藤子プロのリアルな日常が描かれていて興味津々。

 なかなか見ることができない仕事場マンションの間取り、机まわりの様子、F先生の1日のスケジュール、独特だったというペンの持ち方、仕事場でよくかかっていたCDのこと。本作は夢にあふれたF作品の舞台裏が見られる、“メイキング・オブ・ドラえもん”なのである。

●point.2 マニア心をくすぐる数々のドラえもん秘話

 本作を読んで驚いたのは、ドラえもんの体のあの“タテ線”がトーンではなかったということ。F先生のこだわりで、すべてスタッフが手描きしていたらしい。本作はそんなマニア心をくすぐるドラえもんネタも満載だ。
のび太のママの旧姓の意外すぎる決め方とは? のび太の家が黒電話からプッシュホンになった意外なわけは? 気になる答えは本編でどうぞ。

●point.3 F先生の優しさにとにかく感動

 物静かできちょうめん、本と映画が大好き、そしてとっても心優しかったF先生。その素敵な人柄を伝えるエピソードの数々には、涙腺を刺激されっぱなしだ。最後の長編となった『のび太のねじ巻き都市(シティー)冒険記』の原稿チェックの際、F先生がむぎわらさんにかけた一言には、師弟の深い絆を感じて思わず号泣。ドラえもんの存在を信じているベトナムの子どもたちとの、心温まるエピソードも印象的だった。一度でいいからF先生に会ってみたかった。これを読んでそう感じる読者も多いのでは。

●point.4  マンガ家としてのすごさに驚嘆

 亡くなる直前まで、自宅の机でペンを握っていたというF先生。本書には絶筆となった『のび太のねじ巻き都市(シティー)冒険記』第3回の下絵ラフも一部掲載されている。その気迫のこもった線には、一生マンガ家であろうとするF先生の意志がこめられているようだ。

 多忙な仕事の合間を縫って、むぎわらさんの作品に詳しいアドバイスをつけてくれたというエピソードからも、F先生のマンガに対する妥協のない姿勢が伝わってきた。「F先生は、やっぱりすごい!」とつくづく感嘆してしまう。

●point.5  貴重な資料も特別公開!

 また、巻末の「Gallery&Memory」コーナーでは貴重な資料をたっぷりと掲載。F先生の仕事部屋の写真や、スタッフへの細かい指示の入った直筆下絵、むぎわらさんがアシスタント時代に役立てていた秘蔵のノートなど盛りだくさんの内容。

 いかがだっただろうか? 人気キャラクターとしてのドラえもんは知っていても、その原作者についてはあまりよく知らない、という人もいるかもしれないが、本書『ドラえもん物語』はそんな人にこそ手にとってほしい作品だ。藤子・F・不二雄先生のあたたかな人柄を知ることで、ドラえもんの世界がこれまで以上に愛おしく思えるだろう。
 もちろんかつての『コロコロ』キッズ、現役読者の小学生たちも必読である。

文=朝宮運河