<内戦でシリア政府を支持したのは長年の同盟国を助けるだけではなく、宿敵NATOに対抗する目的か>

一石二鳥を狙ったのか、運よく漁夫の利を得たのか。いずれにせよロシアはシリアのアサド政権を支援し、軍事介入に踏み切ったことで地中海東岸に新たな軍事拠点を築き、仇敵NATO(北大西洋条約機構)に改めて挑戦状を突き付けることができそうだ。

各地の国際紛争を監視しているアメリカのシンクタンク「軍事研究所」は7月の報告書で、ロシアがアサド政権とその軍隊に肩入れする背景には、欧州大陸の大半で優位に立つNATOに対抗する足場を固めたい思惑があると指摘した。

このところ、ロシアとNATOは冷戦時代を思わせるような軍拡競争と非難合戦を繰り広げている。そんな状況で、ロシアは中東における長年の同盟国シリアの支援に乗り出し、ついでに欧州大陸をにらむ戦略的拠点も(先に一方的に「編入」したウクライナのクリミア半島に続いて)確保したらしい。

「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、地中海で長期の軍事的プレゼンスを築こうとしている。米軍の動きを牽制するためであり、NATO圏の南端を揺さぶるためでもある」。今回の報告を執筆したチャールズ・フラティニ3世とジュネビーブ・カサグランデはそう指摘している。

カサグランデによれば、シリア内戦に対するロシアの介入には「ほとんど最初から」NATO圏の南端、とりわけトルコに接近する意図が見て取れたという。トルコはシリア内戦の勃発当時からシリア政権側の人権侵害や政治的迫害を非難し、反アサドの武装勢力を支援してきた。実際、内戦の初期にはアメリカや湾岸諸国からの支援も得た反政権派が軍事的優位に立ち、政権側は後退に次ぐ後退を余儀なくされた。

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だが15年になると情勢は一変した。アサドの要請を受け、ロシアが直接的な軍事介入を開始したからだ。ロシア軍の猛烈な空爆に助けられた政府軍は、やすやすと国内の多くの地域を奪還できた。反政権派の武装勢力はアルカイダやISIS(自称イスラム国)といったテロ組織との抗争で戦闘員の多くを失っていたから、一時は支配下に置いていた地域のほとんどから撤退するしかなかった。

シリア内戦のおそらく最大の分岐点だったのは、昨年12月のアレッポ陥落だ。シリア北部最大の都市アレッポは反政権派の拠点で、トルコ領にも近い。だからトルコは、一貫してアレッポに立てこもる反政権派武装勢力を支援してきた。しかしトルコはこの時点で彼らに見切りをつけ、ロシア側と前代未聞の合意を結んだ。

こうして始まったのがカザフスタンの首都アスタナでの和平協議だ。シリア内戦に政治的解決をもたらすためと称するこの協議は、国連主導の和平交渉と並行して現在も続いている。カサグランデによれば、アサド政権と敵対し、NATOの同盟諸国とも対立しがちで「矛盾だらけの」トルコを説得し、シリア政府とその後見人であるイランとの交渉の席に着かせたのはロシアの政治力。これで事態はロシア政府にとって有利な方向に動き始めた。

トム・オコナー