「ここはどこ? 天国かしら?」雲の上のテーブルマウンテンからケープタウンを眺める

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アフリカ大陸縦断もいよいよ終盤戦! ついに最南端の南アフリカ共和国へ――。

南アフリカと言えば2010年にはW杯も開かれ、当時の経済規模は神奈川県とほぼ同じだったというアフリカ最大の経済大国。

しかし、開催地だったヨハネスブルグは世界一治安が悪いと有名で、これまで何人もの旅人たちが危険な目に遭い、たくさんの凶悪伝説が生まれた。中でも強烈なのは「中心駅から半径200mは強盗に遭う確率が150%」というもの。150%という数字は、一度襲われてまた襲われる確率が50%の意味なんだとか…。

というわけで、そんな危ない都市は避け、私が目指すのはケープタウン。世界屈指の美しい港町であり、テーブルマウンテン、喜望峰など世界的に有名な絶景がある。旅友が「新婚旅行は南アフリカのケープタウンで決まり!」と大絶賛していたので、私は期待に胸を膨らませた。

ケープタウンへはナミビアの首都ウィントフックから長距離バスで約20時間。

国境越えもスムーズに進み、すんなりと南アフリカに入国したが…、な、な、なんと途中でバスが故障!? あと3時間くらいで到着というところで、煙を吹いてしまった。

正午の炎天下でバスの中も外も暑く、ペットボトルの水も残り少ないが、周りには何もない。バスが直る気配はなく、夜の9時に代わりの車が来るというので、それを待たなくてはいけないという。

一緒に乗っていた客の数人はヒッチハイクに切り替えたようで、道路に出て車が止まってくれるのを待っている様子。

「アフリカでヒッチハイクなんて、そんな恐ろしいことはありえない!」

私はそう思っていたのだが、正直、ここにいても時間通りに助けが来るとは限らないし、そもそも夜に到着するのは危険なので絶対イヤだ。それが一番の理由で、私も仕方がなくヒッチハイクを選んだ。

往年のハンドサイン、「いいね」のように親指を上げていたら、アフリカ人のママに「それはOKって意味よ。止まってほしい時は手を下げてパタパタ仰ぐのよ」と、アフリカ版ヒッチハイクの方法を教えられた。

車は何台も通り過ぎて行き、なかなか止まってくれなかったけれど、ついに有名スーパーの大型トラックが止まった。個人車じゃないことにも安心したし、よしこれに乗ろう! 私は日本人の旅友とバスで仲良くなったアフリカ人と4人で乗り込んだ。

車に乗り込んだのはイイが、残り200km以上の道のりを大型のトラックでは時速80kmまでしか出せずノロノロ。

夜到着するのが怖いからヒッチハイクを選んだってゆーのに、夕方を過ぎて辺りは結局暗くなってしまった。トラック運転手は良い人で、わりと街の近くで降ろしてくれたが、それでもケープタウンまでまだ20kmもある。

同乗していたアフリカ人男子が次に停めた車は、タクシーではなく地元の足らしきミニバンだった。

「早く! 乗り込め!」

旅人の情報でも聞いたことがないミニバンは見るからに危なっかしかったが、これに乗らずに見知らぬ場所に置いていかれるのも怖い。考えたりつべこべ言ったりしているヒマはなく、私も急いで乗り込んだ。車内はガンガンの大音量でEDMやヒップホップが流れ、車のドアは開けっ放しで運転は荒く、白い集金袋を持った男はなんだか怪しい。乗客に観光客はおらず、どちらかと言えば低所得層の地元民だろうか。

「ヤバイな。コレは怖い。どうか無事にケープタウンに着きますように…」。緊張から私は身動きが取れず、ほぼ息も止めて、静かにバックパックをギュっと抱きしめた。

ケープタウンが近づくと、特に高い金額をふっかけられることもなく12.50ランド(約125円)を請求され、意外とお釣りもくれた。

降ろされたところはバスターミナルだろうか、ズラっと並ぶ露店商がちょうど店じまいをしているところだった。人こそいっぱいいるが危険なことに変わりはなく、バックパックを持った日本人はとっても目立つので、私は黒いジャケットのフードを被り、マスクで顔を隠した。

そこから宿までは1kmくらいで、タクシーに乗るのもまたタクシー強盗が怖いし、というかタクシーなど見当たらないし、とりあえず歩くしかない。すぐに鉄道のケープタウン駅に辿(たど)り着くと、やっと建物の電気が明るかったので少しだけホっとした。…すると、突然忍び寄ってきた男が呟いた。

「マネー…」

目に飛び込んできたのは…、ナイフ!!!!



私は強盗にあったらお金を渡すべきと考えていたが、同時に正直に答えようと心がけていた。だからこそ自然に出てしまった。

「ノーマネー!」

だって、ナミビアのお金は南アフリカでは使えないから使い果たしてきたし、こっちに着いてからお金を下ろすつもりだったので現金がない。ヒッチハイクとミニバンで残り少ないお金をほぼ使ってしまったのだ。

ヤバい! 刺されるかな。

ところが、犯人はあっさり「…オーケー」と言って去って行った。ただの脅しだったのだろうか、とにかく刺されずに済んで本当によかったのだが、あまりにも早速すぎてパニック!

「中心駅から半径200mは強盗に遭う確率が150%」はヨハネスブルグだけじゃない! このままでは宿に着くまでに再び強盗に遭遇することもありえそうなので、とにかく最初に見つけたホテルに逃げ込んだ。そして宿まではあと300mなのに、ホテルのタクシーに乗ってなんとか命は守り切った。

宿の周りは、さっきまでの街の雰囲気とはうって変わって、たくさんの観光客や若者で賑わっていた。その日はアートウィークということもあり、周辺のギャラリーで作品展示が行なわれていて、宿もまたそのひとつとして盛り上がっていた。

本来だったら全部見て回りたいところだけど、今はとてもじゃないけど外に出る気分ではない。さっき、もしかしたら死ぬ寸前だったんだもの。私はものすごい精神疲労に襲われていた。

6人部屋に入り、足元に荷物を置くと、目に飛び込んできたのはペンが刺さった林檎とパイナップル。

ペンパイナッポーアッポーペンは南アフリカまで届いていたのか…」

これを見てやっと、少しだけクスっと笑える気持ちを取り戻したが、この果物たちのようにブスっと刺されなくて本当に良かった。

【This week’s BLUE】

ギャラリーで見つけた青いアインシュタイン。私もこのくらい青冷めてたんだろうな…

●旅人マリーシャ

平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】