ドイツ・ハンブルガーSVキャプテンであり、サッカー日本代表選手の酒井高徳。一流選手がしのぎを削り合うステージで活躍する酒井が、自分との向き合い方、メンタルコントロールなどを語った。 撮影/RYUGO SAITO (C)oricon ME inc.

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 ドイツ・ハンブルガーSVキャプテンであり、サッカー日本代表選手の酒井高徳。一流選手がしのぎを削り合うステージで活躍する酒井が、自分との向き合い方、メンタルコントロールなどを語ってくれた。

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■自分にプレッシャーをかけることを意識

 Jリーグのキャリア2年目に若干20歳でドイツに渡り、現在は日本代表選手としても活躍。ハンブルガーSVの監督からも「酒井のメンタルはピカイチ」と評される酒井だが、プレッシャーとどう向き合っているのだろうか。

 「20歳の頃は海外に慣れていなかったし、日本代表に呼ばれることもなかった時代でした。大丈夫かな、できるのかなっていうプレッシャーはあったのですが、経験を積むことによってプレッシャーがなくなったというよりは、長くドイツにいてプレッシャーのかかり方が変わってきました。今は、“いいプレーをしなきゃだめだ”とか、“活躍してどんどん自分を高めていかないとだめだ”、という自分で自分に対して常にプレッシャーをかけるようにしています」

 今期は、ブンデスリーガで日本人初となるチームキャプテンを務め、シーズンを戦い抜いた。自分を鼓舞させるために必要なことは。

 「最初やると決めた時から、何をすべきか分かっていたので、プレッシャーというよりは、『やるぞ!』『キャプテンになったからには責任はまっとうする』という想いでした。今回は残留してシーズンを終えましたけれど、試合が終わりに近づくにつれてキャプテンである重大さをどんどん認識していった。過去、一度も2部に降格したことがないチームだったので、その実感が湧けば湧くほど、自分がどういう立場にいるのかどんどんはっきりしてきました」

■試合前のルーティーンは良い状態の自分を徹底的にイメージ

 「試合にいくまでのルーティーン、イメージは常に大事にしています。いつも同じことをするわけではなく、前試合の結果に合わせて、前の試合は左足からスパイクを履いた、テーピングを巻くときは左から巻いてもらったとか、細かいところまでいうとアクセサリーを外す順番までコントロールして細かく気持ちを整えています。試合に入る前はバスなどの移動中もずっと“自分が良いシチュエーションでいいプレーをしている”というシーンを自分の中で何度も再現する。こういうシーンだったらこう動いて、こういう風にチャンスを作って、こういう守備をして…っていうのを常にイメージしながら試合に向かっていって、ホイッスルがなるまでしっかり自分の頭と心で準備をしています」

 自らを客観視しつつ、イメージによりメンタルをいい状態に持っていく。さらに、続ける。

 「あまり“気合入っているぞ”っていう姿を試合前には見せたくないんですよ。試合で爆発させるので、本番になったらそんなのは関係ないですが。気持ち、テンションは頭の中のイメージで作り上げています。本当にいい自分の姿をシュミレーションして、自分に言い聞かせる。“勝つんだ!勝つんだ!! いいプレーをするんだ!”っていうのが一番ですね。自分のプレー集や試合のハイライトで良かったシーンを見ています。この時はこれがよかった、ということはもちろん、自分のスタイル、プレーを再確認するという意味でも良いですね」

■アスリートとしての目標をアップデートし続ける

 Jリーグでプレーをしていた時期、海外に渡った時期、日本代表に招集された時期、キャプテンマークを付けた時期…。着実にプレイヤーとしてステップアップをしている酒井。目標をどのように自分に課しているのだろうか。

 「プロサッカーリーグでは“強豪チーム”はどの国にもありますよね。Jリーグでやっていた時は、強豪チームと闘いたい、いいチームでハイレベルなプレーをしたいという気持ちがありました。個人的にずっと海外志向が強く、いつか世界に出たいという思いを持っていて“海外で活躍するために、まずはJリーグで活躍するんだ”という気持ちでした。海外に行ってからは、スターチーム、スター選手と闘って、やれるぞっていう手応えを掴む。次は、トップクラブで自分がプレーする自分に近づくために、日々の努力、海外での自分の功績を残すこと。海外に行ってからはトップ選手たちと一緒の環境でやれるように近づきたいと思ってやっています。Jリーグの上位にいきたかったというのが、世界でのトップのレベルにいきたいと変わったってのはありますよね。海外でのプレーは、いつか日本に帰るための“武者修行”ではなく、骨をうずめるつもりでやっています」

■闘うためには、自分を知ることが大事

 海外リーグでのプレーはもちろん、日本代表選手としても招集される酒井。一流プレーヤーが競い合うステージで存在感を発揮するために心掛けていることとは。

 「一番は自分の特徴、“ここで勝負していく”というポイントを出すことですね。クラブチームだったら、毎日練習して、みんなと戦術確認をして試合に臨みますが、代表戦となると集合の時間もコミュニケーションの時間も限られていて、その中で自分の色を出さないといけない。チーム戦術を尊重しつつも、自分がこういう選手であるというのをプレッシャーなく瞬発力を持って発揮できるというのが大事です。毎試合結果を求めながら、自分の強味を出すためにどうしたらいいのかは常に考えています」

 「とはいえ、日本代表チームはみんな仲が良いですね。ギスギスして蹴落とし合いをするような雰囲気ではないです。サッカーで高め合っている感じでしょうか。普段はみんな一人の男です。僕は調子乗りな部分もありますし、ワイワイするのが好きで、日本代表チームは実際和気あいあいとしている。山口蛍(セレッソ大阪)と岡崎慎司さん(レスター・シティFC)は特別仲がいいですね。ロンドンオリンピックで戦った世代は特に」

■挑戦が自分を強くする。不安は友と乗り越える

 「僕はこれまでの人生で、ずっと“挑戦”をしてきました。何事にも挑戦する心は生きるために大事な事だと思っています。海外に行くと決めた時期は、Jリーグでまだ2年くらいしかやっていない20歳でした。もちろん不安もありましたけれど、ドイツに行って挑戦して得られるもののほうがきっと大きいと思ったんです。結果的に、人としてもサッカー選手としても、すごく大きなものが得られたと思います」

 「何かをやる時は絶対、期待の反面となる“恐怖”や“不安”があると思いますが、それに打ち勝って挑戦をやり遂げるというのは、サッカーでも野球でも仕事でもジャンルは関係なく、人として生きる道のうえで自分を強くしてくれるものだと思います。それを自分で体験してからは、挑戦して失敗するよりも、挑戦しないで終わることの方が嫌だと思っています。どんなことでも、やってみてダメでもその後にも道がある。これからも自分の人生をどんどん挑戦して生きていきたいと思っています。僕が人に伝えられるのは、“逃げずに挑戦してほしい”ということです」

 「恐怖や不安を乗り越えていくために、僕の場合はいろいろな人に意見を聞きました。両親、心を寄せている親友、恩師。“こういうことをしたい”っていう思いを誰かに共感してもらう、後押ししてもらうことはエネルギーになります。自分だけで考え込んでしまわないことです。自分が見ている自分と人が見ている自分は全然違うと思うんですよね。そういった意味でも、何か大事なことを決める時こそ信頼できる人に意見を求めるのは大切なこと。たくさんの人に助けられての自分、サポートがあってこその自分ですから、信頼できる友を作っておきたいですね」