東芝メモリの主力工場である四日市工場に建設中の第6製造棟完成イメージ(写真: 東芝の発表資料より)

写真拡大

 30日の日本経済新聞は東芝が協業先の米ウエスタンデジタル(WD)の陣営に半導体メモリー事業の売却に係る独占交渉権を与える方向で調整に入ったと伝えている。売却額は約2兆円で31日に開く取締役会で決議を目指すという。更にその後、WDの出資方法など残る条件を詰めたうえで、9月中に最終契約を結びたいとしている。

【こちらも】東芝の半導体事業売却、「日米連合」と大筋合意か

 協業先であるWDがメモリー事業の売却に反対して提訴におよび、経産省の半導体事業を守るという大前提がある以上、WDを参加させない選択肢は元々なかったと言える。東芝もWDとの交渉を本格化すべく八方手を尽くしたのであろうが、タフなネゴシエーターでかつ懐具合の厳しいWDは焦らすに焦らした。アメリカの投資家はWDの交渉ぶりを冷静に見つめている。下手な妥協はミリガンCEO自身の命取りともなりかねないのだ。

 膠着状態を打開する糸口が見えないまま、いたずらに時を過ごしているのを見かねた銀行団が8月中の契約成立が今後の融資の条件である、旨を表明したことから東芝とWDの尻に火が付いた形となり、WDが1,500億円を拠出することを条件として、契約という体裁を整えることになった。

 通常、「契約」とは細かい条件を積み上げて(すり合わせて)、そのうえで双方の負担額を決定して調印するものであるが、今回の東芝とWDの契約ではWDがどの程度経営に関与できるのかというシェアの決着が付かず、今後の調整を必要とする項目も多いことから、9月中に契約に至るにしても玉虫色状態の部分が出て来ることは避けられないであろう。しかも中国を始めとする各国の独占禁止法の審査には最短でも6カ月の期間が必要である。契約締結の後、各国の独禁法審査が始まり18年3月末までに売却が完了しなければ東芝の2期連続の債務超過が確定し上場廃止となる。

 そうなれば「契約」のために重ねた双方の我慢が爆発して収拾のつかない状態になることも懸念される。もっとも現在がすでに“ガラス細工の合意”である。しかもケチの付けどころは満載だ。部外者は、そんなケチが付いてヒビが入るかも知れない合意を息を詰めて見守るしかないのかも知れない。