アメリカのフィットネスクラブ内に設置されている「アマゾンロッカー」

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 現在、日本では年間約40億個の荷物が配達されている。毎度述べているように、国内の物流の約9割はトラックによる貨物輸送だ。筆者が夜明け前の高速で見てきたあのテールランプの大列は、まさに「日本経済の血流」だった。自分もその血漿の一部なのだと思いながら大きなハンドルを握っていると、幾ばくかの誇りを感じたものだ。

 以前、筆者の経験をもとに長距離のトラックドライバーの苦悩を紹介したが、彼らと同じように、地場を回るルート配送のドライバー達にも、高齢化や人材不足、ネット通販による荷物の急増などといった数々の問題が山積している。特に、十人十色の消費者に直接商品を送り届けるドライバー達は、彼らの生活背景に沿った要望に応えなければならず、運転技術以上に、柔軟な適応力・判断力がモノを言う。

 現在、日本の一般宅配の約20%が再配達であり、そのうちの約1%は3回以上の再配達がなされている現状がある。

 中でも特筆すべき点は、1日2万個もの配達物が居留守である可能性があることだ。

 その度にドライバーには、「緑の制服」の目をかいくぐって停めたトラックに重い荷物を戻し、不在伝票を書いてポストへ投函、指定のあった時間に再び同じことを繰り返す手間が発生するわけだ。

 そういう点からすると、日本の「客は神である」という意識は、サービスを提供する側以上に、受ける側により強くあるように思えてくる。元トラックドライバーから言わせれば、これが故意的な居留守だった場合、客は神ではなく、ただの「モンスター」か「ドS」でしかない。

 しかし、居留守をする側にも、言い分や事情があるようだ。

 それには、寝起き姿だったり、料理の最中で火を使っていたりと、「突然の訪問」に対応できないという理由のものだけでなく、業者を装う事件が横行している昨今においては、「不在連絡票で確認してから荷物を受け取りたい」という、居留守を“受取り手段”と位置付けるものまで様々だ。

 そう言われると、なるほど気持ちだけは分からなくもないが、「受取人の母が不在だから出直してくれ」や「電話中だから1時間後に来てくれ」など、年々エスカレートしていく「堂々たる居留守」に、1軒1軒 “神対応”できるほど配達員には余裕などない。

 国土交通省の調査によると、再配達によって費やされるドライバーの労働時間は、年間1.8億時間にものぼり、1日の平均労働時間を8時間、年間労働日数250日を前提とした場合、年間9万人(ドライバーの約1割)に相当する労働力が再配達に費やされている計算になるという。

 こうした問題に配達業者ももちろん、ただ手をこまねいているわけではない。配達手段に工夫をこらし、“神対応”のままドライバーの負担を少しでも軽くしようと、様々なサービスがなされるようになってきている。

 ここでいくつか、その内容と問題点を紹介してみよう。

◆便利なものの、まだまだ改善点が多い「置き配」

 昨今、一気に注目されるようになったのが「置き配」サービスだ。

 「置き配」とは、文字通り、不在時に配達員が荷物を玄関先などに置いていく配達方法である。

 最近では、通販大手のアスクルが都内10区や大阪市内9区の対象地域で、個人向け通販「ロハコ」の利用者に対し、指定の場所に配達物を置いていく「置き場所指定配送」ができるサービスを開始して話題になった。サービス開始から約1か月。同社に問い合わせてみたところ、今のところ大きな問題はないそうだ。国内全体での再配達率が約20%であるのに対し、同社は、このサービスによって1%台にまで減少させることを目標としている。

 この置き配サービスは、これまでに大手通販会社のAmazonや各食材配達業者などでも、再配達・居留守問題に風穴を開ける画期的な取り組みとして採用されており、今後も利用者が増加することが予想される。しかし、筆者が現在住んでいるアメリカでは、「盗難補償よりも再配達のほうがコストがかかる」という計算のもと、受取側に有無を言わさず荷物を置いていく配達方法が昔から日常的になされており、様々なトラブルの元となっている。詳しくは、以前紹介した通りだ。