インディカー・シリーズ第15戦ゲートウェイ。ポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が、セントルイス郊外の1.2マイル・オーバルで優勝した。これで勝利数も単独トップとなる4勝目、チャンピオンになる資格は十分……ではあるのだが、今回は勝ち方に問題があった。


ゲートウェイで優勝、年間チャンピオンに近づいたジョセフ・ニューガーデン

 終盤のバトルで、先輩チームメイトのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)にぶつけてしまったのだ。先行するパジェノーのイン側から接触してラインをこじ開けて前に出ると、バランスを崩したパジェノーはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)にも抜かれ、3位でのゴールとなった。

 ウィナーとなったニューガーデンは、「あそこでインを開けてもらえるとは思わなかった」とか、「真横まで並びかけたんだから、今度からはもう少しスペースを与えてほしい」とか、「あの前まで僕がずっとレースをリードし続けていて、2番手に落ちたのはピットストップでのことだった。だからあのまま僕が負けを受け入れるとは思えないだろう?」などと、自らの正当性を饒舌に主張していた。

 一方、敗れたパジェノーは、テレビのインタビューでは冷静を装いつつ、実は大いに怒っていた。

「ロードレースだったら、あれは素晴らしいパスだったよ。時速40マイルとか50マイルでの接触ならね。しかし、このコースのターン1でインディカーのスピードは時速190マイル(約300キロ)ぐらい出ている。そのスピードでの接触はあまりにも危険だ。受け入れ難い。彼に対する尊敬の念も、コース上で競い合うドライバーとしての信頼も消えた。彼は私に対して敬意を払っていない」

 パジェノーというドライバーは、フェアプレー精神に溢れたファイターだ。チームのことも深く考えて走っている。だが、今回のバトルにおけるニューガーデンは、自分のことしか考えていなかった。

「あのまま行ったら(イン側の)縁石に乗り上げてしまう。そうしたらコントロールを失って、チームメイトもろともクラッシュという事態になる可能性が高かった」と、ニューガーデンは状況を説明した。まさにその通りなのだが、”一か八か、共倒れになってしまうリスクを孕んだオーバーテイクは仕掛けないのがチームメイト”というのがパジェノーの考え方だ。

 パジェノーが”もうコレ以上は突っ込んで来ないだろう”というギリギリの線までインサイドを守って走り、コーナーに差しかかってアウト側にラインを取ろうというところで接触は起きた。これについてニューガーデンは、「縁石に乗り上げたくなかったからああなった(接触した)」と言っており、故意にぶつけたことを認めたに等しい。

“エキサイティングなパスを決めた”と、ニューガーデンは褒めてもらえるとさえ思っていたのだろうが、危険なドライビングという判定の方が妥当に思える。しかし、彼がオフィシャルによってペナルティを課せられることはなさそうだ。なぜなら、ぶつけられたパジェノーがバランスを崩してラインを大きく外れながらも、何とかコントロールを保って3位でゴールしたからだ。

 今年はもうオーバルでのレースはない。しかし、今週末のワトキンスグレンを迎える前にニューガーデンとパジェノーは話し合い、チームメイト同士のバトルでどこまでのことが許されるのか、合意点を見つける必要があるだろう。ニューガーデンは現在のポイントリーダーだが、パジェノーは先輩チームメイトであり、ディフェンディング・チャンピオンでもある。年下だからとペコペコする必要は一切ないが、彼が活躍できる土壌を築いてくれたひとりであるパジェノーに対しては敬意を払うべきだ。

 残るレースはワトキンスグレンとソノマ。どちらか、あるいは両方のレースでこの2人が優勝争いを演じる可能性もある。その時に彼らはどんな接近戦を繰り広げるのか。ニューガーデンが一線を超えたアグレッシブさを見せた時、パジェノーはどう対処するだろうか。舐められないようにと強い態度に出るのか。それともチームのことを考え、同士討ちだけは絶対に回避するという行動に出るのか。

 まさかニューガーデンが、そんなパジェノーの人の好さにつけ込んだ戦いをするとは思えないが、後にシコリを残さないフェアな戦いを見せてほしいものだ。

 といっても、まだこの2人のどちらかがチャンピオンになると決まったわけではない。4回のタイトル獲得経験を誇るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)はニューガーデンと31点差の2番手につけているし、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)も42点差で3番手にいる。最終戦のソノマはダブルポイント(ポイントが通常の2倍になる)であり、彼らが2017年の王座を手にする可能性もまだまだ大きく残されている。

■モータースポーツ 記事一覧>>