アリババが描く「小売業の未来」 Eコマースと実店舗を統合へ

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中国のアリババはEコマース分野で国内の覇権を握ったが、同社の未来はリアル店舗にある。アリババは実店舗の買収を進め、Eコマースとリアル店舗の買い物を統合する動きに出ている。

過去2年でアリババは約80億ドル(約8700億円)の資金をリアル店舗に投資し、今年1月には百貨店チェーンの銀泰商業集団(インタイム・リテール・グループ)の株式を最大26億ドル(約3000億円)で買収し非公開化する提案を行った。

時価総額が3920億ドル(約43兆円)を超えるアリババは生鮮食品スーパーの「盒馬鮮生(Hema Xiansheng)」にも出資し、新たなショッピング体験を都市部の中国人に提供しようとしている。

アマゾンは137億ドル(約1兆5300億円)を投じ、食品スーパーのホールフーズを買収したが、アリババも同様の試みを行っている。中国の小売市場は昨年4.9兆ドル(約532兆円)に達し米国を抜いて世界最大規模になったが、eMarketerの調査ではその80%以上が今も実店舗の売り上げだ。

一方でEコマースの成長速度は2年前の年間40%増から、現在は20%に減速したと伝えられる。これまでの成長スピードを維持するためには、オンラインとオフラインの融合が欠かせない。

「新たな小売業」を模索

アリババは実店舗への投資により”新たな小売業"の在り方を模索している。中国商務部の統計によるとEコマースの拡大や人件費の高騰によりリアル店舗の売り上げは縮小し、中国でトップ100の小売店の売り上げは2016年に0.5%の減少となっている。

アリババは消費者の購入履歴や店への訪問時間等のデータを分析し、消費トレンドやその変化を予測しようとしている。データは商品のレコメンドや販売戦略に活用され、物流ネットワークの改善にも役立てられる。アリババCEOのダニエル・チャンは直近の四半期決算発表の場で、「全く新しいショッピング体験を構築していく」と宣言した。

その一例に挙げられるのが、店舗内でアプリを通じて商品のレコメンド情報を流し、購入したアイテムを顧客の自宅に30分以内に配達する試みだ。これにより顧客は買い物袋を持ち歩く必要がなくなる。

アリババは出資先のHemaの店舗でこの実験を行っている。中国全土に13ヶ所ある店舗では、専用アプリで商品のバーコードをスキャンしアリペイでの決済が行える。Hemaの各店舗はアリババの物流センターの役割も果たしている。

Hemaの運営主任を務めるHou Yiはフォーブスの取材に「我々のゴールはテクノロジーを活用して新しい小売業の在り方を探索することだ。新しいモデルが構築され次第、それを他の事業者らにも解放し、デジタル時代にふさわしい販売戦略を広げていく」と述べた。

しかし、アリババの前途には難題もある。中国の小売市場は小さな事業者が乱立状態にあり、数百もの小売チェーンがひしめき合っている。それらの事業者の全てにアリババのシステムを導入させるのは非常に難しく、独自のEコマースシステムを持つチェーンも多い。

「アリババに全てを握られるのは御免だと考える業者も多い」と関係者の一人は筆者に述べた。「アリババが描く”新しい小売業”というのはコンセプトに過ぎない。誰もまだその具体化を達成していないのだ」

コスト高に直面するアリババ

一方で上海本拠の調査企業86 Researchは「Hemaのチェーンは運営コストが高く、さほどの利益を生んでいない」と指摘する。北京や上海の一等地で4000平方メートル以上の店舗を運営するHemaは、配送事業の拡大のために人員を増強しようとしているが、そのコストは莫大だ。ベイン・アンド・カンパニーのアナリストは「Hemaは北京では黒字化を果たせないだろう」と述べた。

「小売業ビジネスはその地域特有の状況に左右される。地域のビジネススケールや人口密度を把握した上で、物流ネットワークに投資しないと利益は得られない。Hemaは北京で数店舗を運営しているが、商品あたりの提供コストが高すぎる」と同社のアナリストは述べた。

しかし、オンラインとオフラインの統合こそが、中国の小売業の未来であることは確かだ。その2つは互いに補完しあう関係にある。

86 Researchのアナリストは筆者の取材にこう述べた。「アリババのHemaでの試みは失敗に終わる可能性もある。しかし、リアル店舗は今後オンライン事業者と組んでデジタル化を進めるしかないのが現実だ。小売業者らはその状況を理解し、新たなインフラの構築を進めている」