対テロ法も? シーシェパードが捕鯨妨害を断念した理由 「標的にされた」と代表

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 環境保護団体『シーシェパード』は、日本の調査捕鯨に対する妨害行為を断念すると発表した。日本側の政治、経済、技術力を前に、力不足を認めた格好だ。団体側はクジラ保護のための代替行動を検討しているというが、現時点で具体的な手法は見つかっていないようだ。

◆日本の経済力・技術力を前に断念
 シーシェパードが妨害行為を中止する理由の一つは、資金の問題だ。英紙ガーディアンは団体代表のコメントを掲載している。日本の捕鯨漁船は経済大国である日本の政府から支援を受けており、これに対抗することが困難だったとのことだ。南極海に船を出すには相当なコストがかかるため、活動の断念に至った。

 米CNNは別の要因として、日本の高い技術力と法環境の整備を挙げている。軍事レベルの精度を持つ衛星を使えば、妨害船の位置をリアルタイムで把握できるようになる。妨害船を避けて安全に捕鯨できるため、船舶の派遣はもはや無意味になる。加えて、対テロ法案の成立以降、捕鯨船の護衛目的で日本から戦艦を派遣できるようになった。団体代表は対テロ法について、シーシェパードを狙い撃ちしたものとさえ感じているようだ。

 このように団体に不利な状況が重なり、今回の中止発表に至った。代表はオーストラリア放送協会(以下、ABC)に対し、「我々には彼らのような金もなく、彼らのような技術もない」(8月29日)と語り、全面的に負けを認めている。なお、今シーズンは中止するというニュアンスで伝えているメディアもあるが、ABCでは明確に「永久に中止する」と報道している。

◆オーストラリア政府への不満
 シーシェパードは、オーストラリア政府の対応にも不満を募らせる。ABCが掲載した団体代表のコメントでは、本来日本政府を糾弾すべきオーストラリア政府だが、貿易交渉への悪影響を恐れて行動に踏み出せないでいるとしている。自分たちが妨害行為を断念したいま、今度はオーストラリア政府が船を派遣して日本の動きを監視するべきとさえ考えているようだ。

 ガーディアン紙によると、代表はシーシェパード自身を、二の足を踏む各政府に代わって行動する団体だと表現している。あくまで生態系のために正義を実行しているとの認識が伺える。これまでの成果についても相当の自信があるようで、CNN(8月29日)が掲載したコメントでは、代表は「日本の捕鯨船の行いは暴かれ、彼らは恥をかいた。そして最も重要なのは、我々が彼らの死の銛から数千もの命を救ってきたことだ」と語る。妨害は中止するものの、一定の成果を挙げたとの認識のようだ。

◆捕鯨への国際的な視線
 今回シーシェパードが妨害を断念したとはいえ、周知の通り捕鯨に対する国際的な視線は厳しい。英BBCでは、2014年の国際法廷で日本に対する捕鯨禁止の裁定が下ったことを伝える。日本側は裁定以降も、科学目的の捕鯨(調査捕鯨)であるとして捕鯨を継続している。しかし、ガーディアン紙は、調査目的だとする日本の主張が同法廷ですでに却下されていることを指摘する。実質的に商業目的だと判断されたことから、日本の調査捕鯨は厳密には国際法違反の状態にあると見ている。

 一方でシーシェパードの行為も是認されているわけではなく、海外では強い批判もある。同団体が本部を置くアメリカでは、調査捕鯨の妨害行為を差し止める判決が過去に下っている。ガーディアン紙によると、団体はこれに違反して罰金刑を課されている。

 今後の動きについて、ガーディアン紙は「クジラを決して見捨てることはない」という代表の発言を紹介している。現状で具体案は示していないものの、捕鯨への抗議活動は今後何らかの形で再開する可能性があるようだ。