[8.29 第29回ユニバーシアード競技大会・台北大会決勝 日本代表1-0フランス代表]

 世界一の金メダルを引っ提げて国内に凱旋し、プロ入りに向けたアピールを続ける。国際大学スポーツ連盟が主催する第29回ユニバーシアード競技大会の男子サッカー決勝が29日に行われ、ユニバーシアード日本代表は、1-0でフランスを下して3大会ぶり6回の優勝を飾った。攻守にわたって豊富な運動量と連続性の高い動きを見せたMF戸嶋祥郎(筑波大4年=市立浦和高)は、ドリブルで右サイドを突破し、先制点をアシストした。

 戸嶋を「チームの心臓」と表現して来た宮崎純一監督(青山学院大)は「求めていたのは、地道に守る、運動量を持って組み立てに参加する、最後のシュートシーンに顔を出すというところ。戸嶋に、あのプレーを期待していたわけではないです。ただ、彼が自分で仕掛けてチャンスを作ったのは、大会を通して成長してきた結果だったと思います。もう、心臓というより、うまく例えられないけど、それ以上」と、殊勲の背番号18を評価した。チームメートからの評価は軒並み高く、優勝に大きく貢献したことは間違いない。

 決勝戦の前日に「高校選手権には、たまたま出られましたけど、僕が歩んで来たのは、決して、こういう(選ばれた選手たちの)世界ではなかった。(世界大会出場は)少し出来過ぎで、運もあったと思う。ただ、20人の枠に入る(可能性)というのは自分には見えていなかったけど、それに近いレベルには達していると思っていたし、枠に入る意気込みでやって来た。ここに来ていない選手の思いも背負っている。ここに立つ以上はすべてを出して貢献したい」と大会にかける気持ちを話していたが、戸嶋は大学生活の最終章で一気に評価を上げている選手だ。

 市立浦和高で全国高校選手権に出場したが、筑波大への進学は一般受験。決して名の通った選手ではなかった。年代別代表の経験はなく、全日本大学選抜の骨格が固まる2月のデンソーカップチャレンジでも関東B選抜。7月上旬のメンバー発表の際もバックアップメンバーだった。しかし、FW木戸皓貴(明治大4年=東福岡高)が負傷したため、7月下旬に代替選手としてメンバー入り。大会では、最後に滑り込んだとは思えない活躍ぶりを見せた。

 所属する筑波大で天皇杯の4回戦進出に大きく貢献し、ユニバーシアードでも株を上げている戸嶋だが、進路はまだ決まっていない。J3のクラブなどから興味を示されているが、正式オファーはまだ届いていないようだ。「それ以上の声がかかっていないのが、今の僕の力。この大会、次の大会(9月1日開幕の総理大臣杯、同20日の天皇杯4回戦)も含めて頑張るしかない。自分の就活という面もある」と話す戸嶋は、帰国後も勢いを止めることなく、突き進むつもりだ。

 コツコツと積み上げれば、夢に届く――。エリート街道を歩めなかった選手に勇気を与える男は「今までの経験が必要ないということを、ある意味で証明できたと思っているところは、少しある。母校の後輩に何か示すことができれば良いし、ほかのいわゆる無名の選手にも刺激になればと思うし、知名度のある選手にも刺激を与えられるようになりたい」と話し、目に力を込めた。世界一に貢献した力が本物であることを国内でも証明し続け、未来を切り拓く。

(取材・文 平野貴也)

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