久保裕也(撮影:Noriko NAGANO)

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6月、アウェイのイラク戦で久保裕也はすり切れていた。本田圭佑を右サイドに配置したため左サイドにまわり、相手のサイドのDF、MFをマークしつつ、ボランチがサイドに顔を出したときも対応していたのだ。前半からオーバーペース気味だったと言えるだろう。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の頭の中には交代策があったのかもしれない。

ところが井手口陽介が負傷したため、すべての歯車が狂った。久保は疲労の色を濃く見せながらピッチに立ち続けなければいけなかった。縦への勢いを一番持っている選手が走れなくなっては、日本は攻撃で後手に回るしかなかった。

今回のコンディションはどうだろうか。久保は「わりと大丈夫だと思います」と飄々と答える。この試合に勝てばワールドカップ出場が決まるという大切なオーストラリア戦の前日、久保はこれまでどおり、感情をほぼ表に出さず、この大切な試合での役割を語った。

今回はFWのそれぞれのポジションに3人ずつが選ばれている。順当にいけば、久保は本田、浅野と右サイドの先発を争うことになりそうだ。だがイラク戦での起用例のように、状況によっては左サイドに回る可能性もある。右が利き足の久保はどちらのサイドがいいのか。

「動き自体はそんなに変わらないですけど、ボールを持ったときは見方とかが違うかと思います」。そう言いながらも「左サイドだと中に入っていけるし、右サイドだとどうしても右で持ってしまうので(中央からは)遠くなってしまうんですけど、両方ともうまくやれる方法があると思います」とそれぞれに自信を見せた。

ではオーストラリアをどう崩すのか。3バックの相手なので、サイドが重要なのは間違いない。久保は5枚になりそうな相手のディフェンスラインを「サイドのコンビネーション」で突破したいという。

「プレッシャーは感じないようにプレーできたらいいとおもいます」「積極的にやっていきたいと思います」

笑顔もなく淡々と言い切る。久保はその落ち着きが凄みとして身についていた。

【日本蹴球合同会社/森雅史】