世界にトビタテ!歩いてスウェーデンにやってきたルームメイトとの出会いが留学を変えた

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 前編・後編にわたり国家プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」の取り組みを紹介してきたが、実際に世界に飛び立った学生はどのような経験をしているのだろうか。今回は、スウェーデンのルンド大学に交換留学をした、早稲田大学国際教養学部4回生の林将平さんの体験を取材した。

 スウェーデンへの留学前の関心事としては、環境問題をいかに一人一人が主体的に考え、行動することで持続可能性のある社会を実現できるのかを学ぶことだったという。しかし、ある人との出会いがきっかけで、もう一つのテーマが浮かび上がってきたという。

◆歩いてスウェーデンにやってきた、ルームメイトとの出会い
 林さんは、留学の初日にシェアハウスの前に立ちながら、自分のルームメイトがどんな人になるのかに胸を膨らませていた。そのドアの向こうにいたのは、意外なことに中東の男性だった。林さんは驚き、「どこから来たの?」と尋ねた。彼は「俺はシリアから来たんだ」と答えた。今度は、”どうやって来たの?”と聞くと「俺はここまで歩いて来たんだ」と答えた。

 冗談とも思えたやりとりだったが、彼のまっすぐな目はそのことが本当であることを表していた。林さんは、彼に出会ったことで、地球の裏側で難民問題により苦しんでいる人がいることを知らなかった自分に気づいたという。

 シリア人の彼は、1日13時間以上働いて、難民キャンプにいる家族に対しての仕送りを欠かさず行っていた。また、そんな忙しい中でも、困っている友人がいれば即座に助けようとしてくれるような人物だったという。

 林さんは、そんな彼との出会いを通じ、日本では難民一人一人の顔が見えにくい状況にあり、「数としての難民」という印象が強いと感じた。そうした課題意識から、留学先での環境問題への学びと並行して、難民問題で苦しみながらも誠実に美しく生きる人々を、リアリティをもって日本に紹介できないかと考え、ドキュメンタリーの製作を行うことにした。

◆取材で浮かび上がる公にはならない「声」
 SNSで募った10人もの日本とタイの留学生たちがドキュメンタリー製作に有志で参加してくれ、編集から取材のやり方、カメラポジションまで自分たちで学び、警察官から大学教授まで多くの関係者を取材した。

難民キャンプでの取材の様子

 取材で難民キャンプへ訪れた際のことだ。取材の前日に、欧州を揺るがしたパリ襲撃事件が発生した。キャンプにいる人々にその事件のことを尋ねると、彼らの多くは、不安感を隠せない答えであった。テロの主犯がシリア難民であるとの報道があり、欧州の国々が自国の移民・難民政策を厳しくするのではないか、と考えたからだ。

 その時に、多くの事件の裏側で、影響を受けているけれども公にはならない「声」が存在すること、そして、難民として逃げてきた旅路など彼らの語る体験は、多くの人が知るべき事実である、と感じた。

 取材で得た40時間ほどの動画素材は、半年間かけ15分ほどの映像にまとめ、7箇所で上映会を開催したという。

完成したドキュメンタリーの一場面

 事前に、なぜ留学をするのかを考え抜き、計画ことはもちろん大切なことだろう。しかし、事前に留学先での価値観を変えるような出会いや体験は計画できない。林さんのように、当初のテーマを学びながら、留学先でもう一つのテーマを見つけることもあるだろう。その両立がどれほど困難かは想像に難くないが、それをやり抜いた体験はきっと世界に飛び立つ力になるだろう。