クラウドファンディングで集めたお金、頓挫したらどうなる?

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夢のあるガジェットの制作を、他人や組織から出資を募ることで実現を目指すクラウドファンディング。一見クールで画期的な制度に見えますが、当然失敗例もあります。海外では詐欺事例も見られている「クラファン」の裏側を紹介します。※上の画像はイメージです。


【まずは基本から】4種類の方式があるクラウドファンディング


ファウンドプランナー代表の山本しょうです。クラウドファンディングカンファレンス(https://foundplanner.com )にてクラウドファンディングの情報発信を行っています。今回は、クラウドファンディングで集めた資金を集めたけどもプロジェクトが頓挫したらどうなるのか、ということについてお話します。

最新ガジェットに興味関心のある方ははすでに知っているかもしれませんが、「クラウドファンディング」と呼ばれる資金調達がいま世界中で注目を浴びています。

クラウドファンディング(以下、クラファン)をうまく活用することで、新しいガジェットやサービスの開発に必要な資金を集める起業家や、人よりも早く魅力的なデバイスやサービスを手に入れる出資者が増えているのです。

クラファンには、大きくわけて4つの種類があります。



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投資型クラファンとは、企業の創業期や新規事業の立ち上げなどに用いられる資金調達の選択肢の一つで、出資者に対し、出資金に応じて株式を分配するものです。

貸付型クラファン
お金を借りたい人・企業に対して、お金を貸したい人・企業が貸金業法に基づき融資してその利息をリターンとする、いわゆる債券のようなものです。

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おそらくクラファンとして最もイメージされるタイプのものが、この方式です。支援者がプロジェクトに出資することにより、プロジェクトオーナーから出資金額に応じたリターンをガジェットやサービスとして手に入れるという仕組みです。

プロジェクトの資金調達が成功してからガジェットやサービスを受けるため、事前購入や先行予約に似たものとなります。

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プロジェクトに対して支援を行いますが、あくまでも「寄付」のため、株式や商品などのリターンが発生しないタイプとなります。一般的な寄付と異なる点は、支援金(寄付金)を使って何を実現したいのか金額をあらかじめ提示(プレゼン)し、支援金を集めることを目的にしている点です。

以上4つに共通しているのは、原則的にすべてのプロジェクトで目標金額を設定し、期限内に目標金額を超える金額の出資を集めたプロジェクトにのみ出資がされるという点です。今回は、もっとも一般的であるの購入型クラファンの現状と抱えているさまざまな課題についてフォーカスします。


一流企業でも活用
日本のクラファン成功例


クラウドファンディングと聞くと、多くの人はベンチャー企業が利用する方法というイメージがあるかもしれません。しかし実際は、一流企業市場にニーズがあるかマーケット調査を兼ねてプロジェクトを立ち上げる場合もあります。

例えば、新しい機能を持ったデバイスを開発したけども市場にニーズがあるかまだわからない。そんなガジェットに対して購入型クラファンで先行購入権をつけて支援者を募ることで、市場ニーズを調べることができると同時に、資金調達を達成した売れることが確実視されたガジェットのみを商品販売に乗り出すことができるというわけです。

日本の一流企業のクラファン成功例はいくつかあります。デザイン家電メーカーのamadanaと、大手レコード会社であるユニバーサル・ミュージックの共同会社が、スピーカー内蔵レコードプレーヤーのプロジェクトを立ち上げ、1400万円を超える資金調達に成功したのです。

超大手のソニーでも、FES Watchと呼ばれる電子ペーパーのスマートウォッチを筆頭にすでに5つほどのプロジェクトをクラファンで立ち上げ約300万円の資金調達に成功しています。

大手企業は資金調達が目的ではなく、市場にニーズがあるかどうかのリサーチ目的となりますが、調達額=ガジェットの売り上げとなるため、ニーズのあるガジェットのみをさらに販売を広げるという選択も可能となります。

もちろん一流企業だけでなく、新しいガジェットやサービスを開発したいベンチャー企業がクラファンでプロジェクトを立ち上げ、数百万円もの資金調達に成功している例も数え切れないほどあります。

しかし、そこには新しいガジェットを手に入れることができる夢のある話だけでなく、投資としてのリスクが見え隠れしているのです。続いて、アメリカのクラファンでの詐欺事件や失敗例を紹介していきます。


アメリカでは詐欺事例も多発
事業頓挫の例も……


もともと投資に対して寛容な姿勢であるアメリカでは、すでにクラファンを用いて出資金を獲得することがかなり浸透しています。しかし残念ながら、利用者が増えれば増えるほどクラファンが抱える問題を露呈してしまった例があります。



詐欺まがいのクラファン事件

3Dゲーム開発のチュートリアルシリーズ「Ultimate Game Dev Tutorials」を制作していた開発スタジオETeeskiは、アメリカのクラファン仲介サイト大手のキックスターターで149人から4459ドル(約50万円)を集めました。

しかし、その資金をプロジェクトメンバーが酒やレストラン、バー、さらにはストリッパーに使い込んでしまい、制作が頓挫。メインプログラマーのTereshinski氏とクラファンで集めた資金を使い込んだ疑惑のある元社員と裁判で係争する羽目になっているのです。



完成前に事業が頓挫

また残念なことに、クラファンのプロジェクトがガジェット完成前に頓挫してしまった例は他にもあります。 キックスターターで「The Doom That Came To Atlantic City!」という昔懐かしい「モノポリー」をベースにしたボードゲームは、禍々しいコマが注目を浴び1246人の支援者から12万2874ドル(約1350万円)の支援金を集めました。

しかし、資金調達終了14ヶ月後にプロジェクト製作者であるErik Chevalier氏が自身の経験不足、法的な問題や複雑な技術的問題などを理由に中止を発表したのです。氏はできる限りすべての支援者たちに返金することを約束していましたが、米国連邦取引委員会(FTC)によって、調停が行われました。そして最終的に11万1793・71ドル、財務状態に偽りや間違いがあった場合には全額12万2874ドルを支援者たちに返済することで合意したわけです。

この事例で注目したい点は、自身の能力不足を理由にプロジェクトを中止した点です。Chevalier氏が資金を手に入れるために偽りのプロジェクトを立ち上げたわけでもなく、自身のために無駄遣いをしたわけでもありません。

クラファンでは、ベンチャー企業やエンジニアのみでプロジェクトを立ち上げる場合も多く、経験の有無や必要な知識を兼ね備えているかどうかを見破る術はほとんどないと言っても過言ではありません。



2015年法律が施行

このような問題点もあったため、2015年アメリカではクラウドファンディングに関する法案が施行され、投資者保護のためのルール整備が行われました。消費者被害・トラブルを未然に防止するため、「ネットを通じた適切な情報提供」や「ベンチャー企業の事業内容のチェック」などをクラウドファンディング運営会社に課す法律です。


プロジェクトが頓挫しても
基本的には返金はされません


基本的にプロジェクトが頓挫した場合、

・倒産により返金無し
・再度プロジェクトの立ち上げ
・期間を長引かせて実施

この3つに限られます。

基本的には返金はありません。ただ、アメリカでたまにありますが、お金が足りなくなったので再度募集します、とプロジェクトを改めて立ち上げる例もあります。また、期間が長引いてでもプロジェクトを立ち上げる場合もあります。

ただし、ホラーデザインのトランプのプロジェクトが頓挫した事があった際、制作、プロジェクトの進め方、その後の対応が悪く問題となり、裁判所が詐欺と認定。クラウドファンディング初の返金と罰金命令が出ました。



国内での法整備も必要です

ただ、日本のクラファン業界ではまだ同じような問題は表面化していません。これには、2つの理由があると考えられます。

ひとつは、そもそも日本の大手クラウドファンディング運営会社の審査基準がしっかりしているため、怪しいプロジェクトや詐欺まがいのプロジェクトの選別をしっかり行えているということです。そしてもうひとつは、何よりも、悪意のもったプロジェクトオーナーが(いまのところは)ほとんどいないという点です。



日本でもクラファンによる問題が勃発

だからといって日本で同じような問題が起こる可能性がゼロとは限りません。Logbarという日本の会社がクラファンで資金調達に成功したプロジェクトは、いわゆる「炎上」したことがあります。

Logbarが開発した指先のジェスチャーだけでいろんなものを動かせる指輪型ウェアラブル端末「Ring」は未来的なコンセプトやデザイン性から大きな注目を浴び、米キックスターターで88万ドル(約9600万円)もの資金を集めたました。しかし、出荷遅延やデザイン変更などにより、支援者から返金を求める声が上がり、Logbarはその対応に追われる羽目になったのです。

クラファンに出されているガジェットはプロトタイプの場合もあり、量産体制に入った時に課題に直面する場合もあります。この場合、デザイン変更が軽微であれば問題ないかもしれません、大きなデザイン変更ではユーザーから返金の声が上がるのは当然です。


問題が発生した場合の対処は、製品のプロジェクトオーナーに委ねられているのが現状です。というのも、日本ではまだクラファンに関する法律は整備されていないのです。

購入型クラファンの運営会社は、特定商取引法に基づいてサイトを運営することになります。そのため特定商取引法にに基づく表記はされていますが、クラファン運営会社の利用規約をよく読むと、

「プロジェクトオーナーと出資者の間でリターンに関して何らかの問題が発生した場合、当事者間で解決し、クラファン運営サイトは責任を負わないものとする」

と明記されているのです。つまりクラファン運営会社はあくまで仲介会社という位置づけに過ぎず、資金調達達成後の問題については原則的に出資者とプロジェクトオーナーで行うことになっているのです。


まだ膨らむクラファン市場
リスクを忘れてはいけません


世界銀行の試算によると、2025年までにクラファンの世界市場は900億ドル(10兆8000億円)から960億ドル(11兆5200億円)に及ぶと発表されています。市場が盛り上がるにつれ、法律未整備による問題も今後起こるかもしれませんし、今までと同じようにクオリティの高いプロジェクトのみを扱うということができるのかどうかも未知数です。

出資者もあくまでベンチャー企業への出資であり、リスク覚悟であることを忘れてはいけません。クラファンは商品の購入ではなく、あくまで出資。このことを出資者もしっかり理解しなければなりません。



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