フレデリックの気になるMVをチェック

フレデリックについて何か書けという。「はい、よろこんで」と、ふたつ返事で引き受ける。メジャーシーンで活躍する若いバンドのなかで、特に好きなバンドだ。個性的で独創的で、かつ思想的な骨太さと屈託ない遊び心を兼ね備えている。


理屈抜きで気に入っているが、この際、なぜ好きなのか? の理屈を考えてみる。自分のために、そして新しく素晴らしい音楽を求めているあなたのために。


 


「ルーツがナゾ」


数えてみると、この2年間で5回彼らに会っていた。音楽的ルーツの話も当然聞いているのだが、これがどうもハッキリしない。というか、焦点が絞れない。曲作りを手がけるのはベースとコーラスを担当する三原康司で、「何が好き?」と聞くと、ニコニコしながら「嫌いなものがない」と答える。


フレデリックの楽曲の特徴は、強迫的なリズムのループ感と、レトロスペクティブな80’s感あるシンセサウンド、そして語感とリズムが一体化したキャッチーなフロウ。一見、いわゆる四つ打ちダンスロックの法則にのっとった、今風のフェス向けサウンドかと思う音だが、一個一個の構成要素がなんだか違う。


どうも彼らの頭のなかには、80年代から2010年代に至る洋邦のロック/ポップス地図が、テーマパークのように広がっているらしい。「オワラセナイト」はデュラン・デュラン、「リリリピート」はカルチャー・クラブを意識したとか、「レプリカパプリカ」はアシッドジャズ、「スピカの住処」は松田聖子っぽいとか、「バジルの宴」はミクスチャーロックで、とか言う。


その他、ハードコアを聴いてきたとか、アンビエントが気持ちいいとか、ハイエナジーがカッコ良いとか、例えでディアフーフを出したり、ゴダイゴを出したり、日本の歌謡曲を語ったり、発想の源が相当フリーダム。今の時代のシーンだけじゃなく、「いろんな場所を大切にできてるバンド」だと、康司は胸を張って言う。なるほど。



「ミュージックビデオがヘン」


百聞は一見に如かず。リリースから3年、動画サイトで2,500万再生というとんでもない視聴数を誇る「オドループ」のミュージックビデオは、美女ふたりがくねくねと、無表情かつ無造作なダンスを繰り返すシュールな映像で、1,000万再生越えの「オンリーワンダー」は、かわいくてちょっと不気味な女子高生軍団に囲まれたモブダンス。




そして最新シングル「かなしいうれしい」は、これもかわいい女子たちが踊りながら増えたり減ったり、映像ギミックを駆使して送る奇妙にねじれたポップな世界。どの作品にも「かわいい女の子」「中毒性あるループ感」「シュールな仕かけ」がほどこされ、キャッチーを絵に描いたようなインパクトの強さ。


あざとさギリギリだが、彼らのポップな側面を思いきりデフォルメした、映像スタッフの作戦勝ちだろう。それもこれも、楽曲に絶対の自信があるからこそできる技。とにかくかわいい。



「リリックが深い」


実はこれがいちばん言いたかった。フレデリックは歌詞が良い。極めて率直かつロマンチック、語彙が正確で語呂がよく、時にシニカルでつねにユーモラス。しかも根底にある熱血と正義感が透けて見える。


「オドループ」で彼らと出会ったとき、“踊ってない夜が気に入らない”と連呼するサビに頬がほころび、ロックで踊るイメージをうまく言葉にしているなあと思った。しばらくして、これがいわゆるダンス規制として騒がれた、旧風営法への反対メッセージであることに気づいて驚いた。


「ハローグッバイ」の、“戦わない戦い方を僕たちは知っているはずなんです”というパンチラインは、何度聴いてもハッとする。アルバム『フレデリズム』の冒頭を飾る3曲、「オンリーワンダー」「リリリピート」「レプリカパプリカ」で鮮やかに描かれる、“ぼくらはみんなオンリーワンだ”という叫びにぐっとくる。


「ナイトステップ」の“スーツを脱ぎ捨てるんだ紳士”というフレーズは、幼いロックバンドからは絶対に出てこない、大人の心震わす名フレーズ。それがただの標語ではなく、人生賭けた思いとして届いてくる。一見子供向けのようで、大人がハマる絵本のような、強い吸引力がある。


出たばかりの「かなしいうれしい」のシングルでは、タイトル曲で“かなしい”も“うれしい”もどっちも愛情表現であるという哲学を説き、「シンクロック」の“僕らは時間も場所も越えて会うことができる”というテーマはまるで壮大なファンタジー。


「まちがいさがしの国」はタイトル通り、この国の今に“本当の幸せ知ってるか”と疑問をたたきつける、プロテストソングにまで踏み込んで見せた。聴いてるこっちが、居ても立ってもいられなくなる。心を焚きつける燃料が、フレデリックのリリックにはふんだんに仕込まれている。



康司と双子の兄弟、三原健司の繊細かつパワフルなボーカル、赤頭隆児の独創的なギターセンス、正式メンバーに加わったばかりの高橋武の正確なリズム。聴きどころはいくらでもあるので、あとは皆さんご自由に。と、ここまで書いたときに、10月18日に新しいミニアルバム『TOGENKYO』がリリースされるというニュースが入ってきた。桃源郷? 謎めいた、奇妙なイメージに期待が高まる。追い風は強く吹いている。突き抜けろフレデリック。


TEXT BY 宮本英夫



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