2018年ロシアW杯アジア最終予選を戦っている日本代表【写真:Getty Images】

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非公開練習で戦い方を徹底的に確認

 2018年ロシアW杯のアジア最終予選を戦っている日本代表。31日には勝ち点差1で競り合っているオーストラリア代表との大一番を迎える。これまで幾度となく激闘を繰り広げてきた相手だが、日本は同国にアジア予選で勝利したことはない。本大会出場権獲得へ、豪州に勝利するためのカギはなんだろうか。(取材・文:元川悦子)

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 ホームで2018年ロシアワールドカップ出場権獲得するためには、勝利が求められる31日の最終予選天王山のオーストラリア戦(埼玉)。29日のアウェイUAE戦をサウジアラビアが1-2で落とし、日本はオーストラリアに負けても9月5日の最終戦(ジェッダ)で引き分け以上なら出場権を獲得できる状況にはなったが、予選で勝ったことのない相手を倒さない限り、日本サッカー界に明るい未来は開けてこない。

 今後の代表の命運を左右すると言っても過言ではない重要な一戦が2日後に迫り、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が招集したメンバー27人全員が揃った。29日の非公開練習では2時間以上の時間をかけて、相手の特徴を叩き込むと同時に、自分たちの戦い方を徹底的に確認した模様だ。

 オーストラリアは昨年10月のアウェイ戦(メルボルン。1-1のドロー)では4-4-2の布陣を採っていたが、6〜7月のコンフェデレーションズカップ(ロシア)では3-4-2-1へとシフト。より中盤を厚くし、ポゼッション力を高めながら、攻めを組み立てるスタイルを推し進めていた。

 その形でドイツやチリに善戦し、1トップのユリッチ(ルツェルン)や2列目のロギッチ(セルティック)ら得点源が確実にゴールしたことで、チーム全体が自信を深めているに違いない。

「オーストラリアはフィジカルが強くて高さもあってと言われてますけど、彼らはすごいつないでくるし、全然蹴ってこない。しっかりマークを着いて裏を取られないようにしていれば、防げるんじゃないかなと思います」と長友佑都(インテル)が語るように、ポスタコグルー監督率いる現在の彼らはフィジカルの優位性を前面に押し出そうとはしていない。

 その基本通りに来るのであれば、日本としては相手のボール回しをいち早く寸断し、リズムを狂わせるような試合運びが求められてくる。

「後ろが3枚で中盤の層が厚くなっているので、彼らのやりたいようなポゼッションサッカーをさせないこと。あとはサイドで数的優位を作られてクロスを上げられないことが大事になってくる」と最終ラインの統率役である吉田麻也(サウサンプトン)も警戒ポイントを明確に口にしていた。

「僕らはアウェイの時よりもっとアグレッシブにやるべき」

 相手にポゼッションをさせたくないのなら、自分たちが主導権を握ればいい。ハリルホジッチ監督がどこまで攻撃姿勢を鮮明にするか分からないが、もともと技巧派集団の日本はオーストラリアよりボール支配に長けているはず。デュエルを第一に考える指揮官就任後はそういう特性が出にくくなっているが、暑さによる消耗を回避するためにも、アウェイ戦のような超守備的な戦いは許されない。

「僕らはアウェイの時よりもっとアグレッシブにやるべきだし、より攻撃的なサッカーを見せられるんじゃないかなと。自分たちがボールを回して、相手が守ってくれた方がウチとしてはやりやすい。そうやってペースを握りながら、0-0で進めば進むほど、向こうはプレッシャーを感じると思う。僕らの方が勝ち点1上だし、得失点差も僕たちの方が優位なので、うまくゲームをマネージメントしていかないといけない」と頭脳的な試合運びで相手を焦らす展開に持ち込むことの大切さを吉田は改めて強調していた。

 過去の対戦を振り返ると、オーストラリアは日本が先手を取ってもしぶとく粘って同点に追いつくだけの底力を何度も示してきた。衝撃的逆転負けを喫した2006年ドイツワールドカップ初戦(カイザースラウテルン)を筆頭に、2009年6月の2010年南アフリカワールドカップ最終予選・アウェイ戦(メルボルン。1-2の黒星)、2012年6月の2014年ブラジル大会最終予選・アウェイ戦(ブリスベン。1-1のドロー)はいずれも日本が先制しながら勝利を逃したゲームだった。

 昨年10月の前回対戦にしても、原口元気(ヘルタ)が早い時間帯に1点を挙げたにもかかわらず、その原口が不運にもPKを献上し、1-1に追いつかれてしまった。いざとなれば日本の天敵・ケーヒル(メルボルン・シティ)を投入し、ワンチャンスから1点を取れるチームだからこそ、日本がオーストラリアに先手を取らせるようなことがあると勝利の確率は一気に低下する。

「無失点」というのはロシアを賭けた最終決戦の最大のカギと言っても過言ではない。そこは吉田が中心となって意思統一を図る必要がある。

細部にとことんまでこだわったゲームを

 守備面で気がかりな点を挙げるとしたら、6月のイラク戦(テヘラン)で最終予選初先発を飾った代表キャップわずか4の昌子源(鹿島)が再びセンターバックに入ると見られること。

 昨年12月のFIFAクラブワールドカップではレアル・マドリーに闘志あふれる守備を見せ、今季はAFCチャンピオンズリーグでブリスベン・ロアーと対峙するなど着実に国際経験を積み重ねているものの、これほどまでに重圧のかかる大一番は人生初めてだ。

 本人は「いつも以上にプレッシャーはあると思うけど、それに押しつぶされるようでは選手としてダメ。プレッシャーを楽しみに変えていけるだけのメンタルは持っていたい」と努めて前向きに話したが、イラク戦直前のシリア戦(東京)で相手マークを外して失点を招くという致命的なミスを犯している。

 イラク戦でも吉田と川島永嗣(メス)が連係ミスをする前に、昌子と遠藤航(浦和)がペナルティエリアに侵入してきた相手に体を寄せ切ることができなかった。こうした二の舞を避けるべく、彼は平常心を保つことを第一に考えていくべきだ。

 自然体でさえいられれば、常勝軍団の最終ラインを統率者らしい安定したパフォーマンスは見せられるはず。「ユリッチは(コンフェデの)カメルーン戦を見ても荒いというか、メッチャ怒って、セットプレーでも押したり、引っ張ったりしたり、マークがつかんだ手をパーンって払ったりとか、(以前、鹿島で対戦した)ウエスタンシドニーの時と一緒だなと思いました」と昌子は相手FWの欠点を的確に見抜いている様子。

 それを駆け引きで露呈させ、退場に追い込むような頭脳プレーができれば、彼自身ももう一段階飛躍する。長友も「彼が自信を持てるようにどんどん声を出していきたい」と年長者らしい発言をしていたが、吉田や川島、ボランチに陣取るであろう長谷部誠(フランクフルト)らにも力強い後押しを求めたい。

 オーストラリアにはリスタートという武器もあるだけに、そこにはより警戒を払うべきだ。臨機応変に相手の出方を見つつ、スムーズな対応ができれば、簡単にやれることはないはずだ。「勝利の神様は細部に宿る」とはかつての日本代表指揮官・岡田武史監督(FC今治代表)の名言だが、それを守備陣だけでなく、チーム全員ができるか否か。勝ち点3がほしいのなら、細部にとことんまでこだわった完璧なゲームをするしかない。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子