ロシアW杯アジア最終予選も、いよいよ2試合を残すのみとなりました。勝ち点17でグループB首位の日本代表は、勝ち点差「1」の2チーム、オーストラリアとサウジアラビアとの試合を残している難しい状況にあります。

 サウジアラビアが8月29日のUAE戦に2-1で敗れて勝ち点を積み上げられなかったため、日本は31日にオーストラリアに引き分け、あるいは負けても、次のサウジアラビア戦に引き分け以上であれば、W杯出場が決まります。

 それでも、最終戦はアウェーで戦うため、オーストラリア代表をホームに迎える31日の試合で勝利してW杯出場権を手にしてほしいと、誰もが願っていると思います。ただし、現在のアジア王者・オーストラリアに対して、日本は過去のW杯予選で0勝2敗5引き分けと、まだ勝ったことがありません。そんな厳しい戦いが予想される中、頼れるキャプテンである長谷部誠選手が戻ってきました。


オーストラリア戦に向け、調整を行なう長谷部 photo by Getty Images

 ドイツ・ブンデスリーガ、フランクフルト所属の長谷部選手は、今年3月のバイエルン戦で、相手のシュートをクリアした際にゴールポストに激突して左すねを6針縫う重傷を負います。その後、一度はUAE戦を控えた日本代表に合流しますが、試合前にチームを離脱。今度は右ヒザの軟骨損傷が発覚して手術を余儀なくされました。


photo by Yamamoto Raita

 軟骨は「今の医学では再生させることができない」とも言われており、同じようなケガをした選手が復帰できずに引退を余儀なくされることもある――。そのため、長谷部選手はケガの名称を聞いた時、それを受け入れるのに時間がかかったそうです。

 それでも、「8月末にはピッチに戻る」という目標を立てて手術後のリハビリを懸命に続け、順調に回復。今月開幕した今シーズンのブンデスリーガで、2試合連続のフル出場を果たしました。開幕戦後に中山雅史さんが現地でインタビューした際には、回復具合は「まだ7割くらい」とのことでしたが、コンディションはかなり戻ってきているようです。

 長谷部選手は浦和時代にもヒザをケガしていますし、2008年から6年間在籍したヴォルフスブルクでは、試合に出られないどころか、練習を一緒にさせてもらえないような”干された”時期もありました。そんな時、長谷部選手は「サッカー選手として、人間として成長できるチャンス」と自らを奮い立たせ、逆境を乗り越えてきたといいます。

 その姿は、同じように海外リーグで戦う日本人選手たちにも勇気を与えてきたはずです。だからこそ、以前、内田篤人選手が「代表の練習のランニングで長谷部さんのすぐ後ろを走るのは、キャプテンの長谷部さんを少しでも支えたいから」と明かしてくれたように、多くの選手から慕われているのだと思います。

 日本代表のキャプテンとして、チームメイトから全幅の信頼を寄せられている長谷部選手は、実戦から離れていたこの5カ月間、次のオーストラリア代表との試合の戦い方もしっかり考えていました。

 現在のオーストラリア代表は、2015年のアジアカップ前後から世代交代が進み、海外リーグに所属する選手がさらに多くなっています。今年6月にロシアで行なわれたコンフェデレーションスカップを見て、オーストラリアの選手は体が大きく、フィジカルが強いのはもちろん、「きちんとボールをつなぐサッカーができている」と、長谷部選手は分析。守備を3バックにして、中盤のスピードのある選手が積極的にサイドを駆け上がるなど、バリエーションが豊かになった攻撃にも警戒をしています。その一方、相手FWの裏への動きの対応でDFラインの連係ミスがあるなど、オーストラリアの守備面の不安定さも指摘していました。

 実際、昨年10月アウェーのオーストラリア戦では、オーストラリアの最終ライン裏に抜け出した原口元気選手が先制点を奪っています。また、この試合、長谷部選手も何度も攻撃の起点になっていました。「ボールを奪ってから、相手DFライン裏へのパスを狙いたい」と長谷部選手は語っていましたが、その言葉どおり、31日の試合でも得点に直結する縦パスに期待しています!


photo by Yamamoto Raita

 ホームでのタイ戦を残しているオーストラリアが守備を固めてくる可能性も十分ありますが、その場合、攻め込む日本代表の裏のスペースを狙うカウンターに苦しめられることも考えられます。「もしかしたら、引き分け以下の結果になることもありえる……」という不安が拭えない状況にあって、長谷部選手は「サウジアラビア戦も残っている、と考えることも必要」と冷静に話してくれました。

 少し弱気な発言と受け取られかねませんが、これは、過去2大会のW杯最終予選を経験し、今回3度目となる長谷部選手ならではの”リスクマネジメント”なのだと思います。もちろん、オーストラリア戦に勝つことがベストですが、望んだ結果にならなかった時にチームの士気がどん底まで落ちてしまうことを避けなくてはいけません。そのため、「2試合のうち、ひとつ勝てばいい」と俯瞰して見ることが、土壇場での力になると長谷部選手は考えているのです。

 若い選手が多いなか、”最後に出場権を勝ち取る戦い方”を考えられる経験豊富な長谷部選手のようなベテランがいることは、チームにとって非常に重要なはず。先発で起用されるかどうかはまだはっきりしていませんが、仮に先発ではなくても、ベンチにいるだけで心強い存在であることは間違いありません。

 ロシアW杯は、本田圭佑選手も”集大成”と位置づけているように、前回ブラジルW杯からここまでチームを引っ張ってきた選手たちにとって節目となる大会です。長谷部選手は「サポーターの皆さんは、僕たちに期待してほしい。それが選手のモチベーションになる」と言っていました。試合当日、私もスタジアムで心からの応援を選手たちに送りたいと思います!

2018 FIFA ワールドカップ ロシア
アジア地区最終予選
勝てばW杯! 負ければ大ピンチ 運命の一戦
日本 × オーストラリア
8月31日(木)よる6時30分 放送
テレビ朝日系列 地上波独占生中継(一部地域を除く)

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