若者たちを狙ったねずみ講が中国で横行している。6月20日、武漢にある華中科技大学の卒業式で振り返る卒業生。参考写真( STR/AFP/Getty Images)

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 中国国内では現在、「傳銷」(無限連鎖講、ねずみ講)犯罪が蔓延している。ターゲットにされているのは、若者たちだ。この犯罪一つで、大学生の就職難、地方政府とねずみ講の癒着、騙すことに悪びれなくなるといった犯罪性を呼ぶ拝金主義など、さまざまな今の中国の社会問題が露呈する。

 犯罪グループであるねずみ講組織は、ターゲットが組織の管理下から逃げ出さないよう、身分証明や銀行のキャッシュカード、携帯電話を没収する。実体のない商品を買わせ、新規会員の勧誘をさせて、詐欺を強要する。抵抗すれば、監禁や暴行などの虐待行為を繰り返すという。

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 大学生などの若者がターゲットに狙われている。背景には、就職難や激しい貧富の格差などが挙げられる。また、犯罪グループと地方政府との癒着もあると考えれている。

 国内メディアによると、7月〜8月で4人の大学生がねずみ講犯罪関連で死亡。当局は、4人の大学生の死因について「溺死」「熱中症」などと、不適当な理由で事件を終わらせようとしている。親族らは警察らに対して、ねずみ講組織の関与を捜査するよう求めている。

監禁されて自力で脱出した青年

 湖北省地元紙・楚天都市報29日付は、ねずみ講組織に騙された後、監禁された青年が自力で脱出した事件を報じた。

 同紙によれば、安徽省出身の李君は今年7月、大学を卒業した後、運よく上海に近い江蘇省蘇州で月給3000元(約4万9200円、同地の私営で平均的な給与)の職に就いた。

 しかし、李君は大学時代の友人に「より高い給料の仕事がある」と勧誘され、8月2日に蘇州での仕事を辞めて、1000キロも離れた湖北省荊州市に移った。

 同地に到着し、李君はマンションの一室に住むことになるが、携帯電話は没収され、外出には関係者が必ず付き添った。不審に思った李君は、犯罪組織に騙されたのではと気づき、逃走を図った。

 「助けて」と記した紙幣と学生証をイヤホンでくくったものを、マンションの窓から道路へ投げ込んだ。運よく、通行人の通報で、14日に李君は警察に保護された。

ねずみ講 蔓延の背景

 

 時事評論員の顔丹氏は、現在、中国の大学生は就職難で、親に「コネ」がなければ職を見つけるできないと指摘する。「政府機関や国有企業などで働けるのは、官二代と呼ばれる高官子弟。それ以外の学生は、『大学卒業イコール失業』の現実に直面する。よりよい給料や条件を求める若者たちは、詐欺グループに騙されやすい」。

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 また、時事評論員の唐靖遠氏は、ねずみ講犯罪組織は各レベルの地方政府と癒着していると批判した。「ねずみ講組織の多くは設立当初から、地方政府または政府系メディアに支持されていた。そのため、当局は取り締まりに消極的だ」。

 唐氏によると、死亡した男子学生の親族は、息子が犯罪グループに監禁されていると疑い、警察に助けを求めたが、捜査を拒否されたという。

 唐氏は、中国当局が、いわゆる改革開放後、高い経済成長率を追求してきた結果、拝金主義が一気に広がったことも一つの要因とみている。「一部の人が金儲けのために手段を選ばない。しかも、多くの人が一獲千金を狙っている」。

 さらに唐氏は、中国共産党による欺瞞と不正が横行する今日の中国社会で、詐欺グループや被害者も含めた国民は「騙し合い」に慣れて、ウソを悪びれることなく、感覚がマヒしている、と道徳に基づいた判断力の低下を危惧した。

(翻訳編集・張哲)