なぜ日本だけが「介護と仕事」で悩むのか

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これから日本には誰も経験したことがない「超高齢化」が訪れる。そのときどんな変化が起きるのか。歴史を振り返りながら、「衰退期」に向けた家計の備え方を解説する。第3回は「介護」。現実にはまだ増えていないにもかかわらず、「介護離職」への関心が高まっている。それはこれから「厳しい現実」が到来することの予兆のようだ――(全6回)。

■「介護離職」はまだ増えてはいないが…

日本社会は高度成長期の蓄えをほぼ使い切り、今後は「貧しい国」になる恐れが高い。そうした「貧しい国」で、特に増加が懸念されるのは「介護」の負担だ。

労働力調査によると、「介護・看護」を理由とした完全失業者は4万人(図1)。ただし別の調査をみると、離職者はこの10年10万人前後で増えているとはいえない(図2)。みずほ総合研究所の大嶋寧子氏は「介護離職が注目される背景には、これから『介護と仕事の両立』が急増することへの警戒感があるのだろう」と話す。

「いま介護離職が増えているわけではありません。しかし団塊ジュニア世代では『晩産化』のため、育児と介護を同時に担うケースも増えるでしょう。海外と比較すると、日本は長時間労働を求められ、フレックスタイム制や在宅勤務といった柔軟な働き方も広がっていません。介護離職の急増を防ぐためには、企業が育児や介護をする人にとって『働きやすい職場』を整える必要があります」

■欧米で「介護離職」はなぜ目立たないか

「介護離職」への危機感があるのは、日本では「親族による自宅での介護」が依然として多数だからだ。図3をみると、主に事業者が介護をしているケースは15%未満だとわかる。

「欧米では介護は日本ほどの問題になっていません。それは意識のあるうちに『尊厳死』を迎えられるからです。日本では最後まで親族が手厚い介護をすることが求められ、尊厳死に至るプログラムが十分ではありません。国の財政は厳しく、社会福祉予算は段階的に減らされます。そのとき介護や老後への考え方が現状のままでいいのか。早急に議論を喚起すべきでしょう」(ブロガーの山本一郎氏)

図4にあるとおり、社会保障給付費は100兆円を超え、さらに増え続けることが見込まれている。「対国民所得費」は2012年の時点で30.9%。これから老後を迎える世代において、これまでのような「手厚い介護」を受けることは現実的ではない。個人としての備えと覚悟が必要になる。

(プレジデント編集部)