"人気の行列店"を近所迷惑で追い出せるか

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■オフィスの借主は住宅ほど保護されない

オフィスや店舗の賃貸で起こりがちなトラブルと、その対処法を紹介しよう。

まず法律の枠組みを押さえておきたい。居住用・事業用にかかわらず、賃貸借契約は民法や借地借家法、区分所有法の範囲で結ばれなければいけない。

ただ、居住用の場合、それらの法律に加えて消費者契約法で借主が保護されている。裏を返すと、事業用は消費者契約法の適用を受けず、借主の保護が薄くなる。

具体的に居住用と比べて保護のレベルはどう違うか。不動産トラブルに詳しい池田辰也弁護士は次のように解説する。

「居住用の場合、消費者契約法により、借主に過度の原状回復義務を課す契約は無効になります。たとえば自然損耗等についての原状回復義務を契約で合意していたとしても、応じる必要はありません。一方、事業用は、同様の合意が有効であると判断される余地があります」

■違約金の額は家賃の3倍程度まで

明け渡し違約金の額にも差がある。明け渡し違約金とは、借主が家賃を滞納した場合、貸主が借主に請求できるお金のこと。判例によると、明け渡し違約金の額は、居住用の場合、家賃の2倍までが相場でそれを超えると契約が無効とされる。

一方、事業用は、明け渡し違約金の上限が緩く、家賃の3倍程度まで。家賃を滞納するつもりはないかもしれないが、そうなったときは居住用に比べてリスクが高いことを覚えておこう。

賃貸借トラブルで注意したいのが、貸主からの契約解除だ。更新時期でもないのに貸主が自分の都合で借主に退去してもらいたい場合、貸主は立退料を支払って解約を申し入れなくてはいけない。しかし、契約解除の正当な理由があれば立退料は不要。そのため貸主から難癖をつけられて契約解除を通告されるケースがある。では、どのような理由なら解除が認められるのか。

「借主が信頼関係を破壊した事実があれば、契約解除の正当な理由として認められます。多いのは家賃滞納。約3〜6カ月滞納すると、裁判所は信頼関係が破壊されたと判断します」

他には、契約書に書いたものと違う目的で事務所を使っていると、信頼関係が破壊されたとみなされやすい。また、条例に違反する看板を出していたり、共用部分に商品を置いて倉庫として使っているケースも危険。貸主から再三注意を受けても改めなければ、契約解除の理由になりえる。

では、人気の飲食店で行列ができ、他の店子からクレームが来ているケースはどうか。

「それは契約解除の理由にならないでしょう。とはいえ放置しておくのもよくありません。近隣の邪魔にならないように、整理する人を置くなどの対策は必要です」

(ジャーナリスト 村上 敬 図版作成=大橋昭一)