ロシア・ワールドカップ・アジア最終予選がいよいよクライマックスを迎える。

 ラスト2ゲーム――。

 グループB首位の日本代表は8月31日にホームで同3位のオーストラリアと、9月5日にアウェーで同2位のサウジアラビアと対戦する。2位以内でフィニッシュすれば出場権を獲得できるが、3位に転落すればアジア第5代表決定戦、さらに北中米カリブ海4位とのプレーオフに回ることになる。


ロンドン五輪世代の原口元気たちがハリルジャパンを牽引する日も近い

 改めておさらいすると、日本は勝ち点17でグループ首位(5勝2分1敗)。サウジアラビア(5勝1分2敗)とオーストラリア(4勝4分0敗)はともに勝ち点16でそれぞれ2位、3位につけている。日本が2試合のうち1勝でもすれば、グループ2位以上が確定して出場権を獲得できるが、ともに未勝利に終わると3位に転落する可能性が高い。

 日本は過去8勝1分3敗と、サウジアラビアとの相性が悪くない。しかし、最終戦は何度も煮え湯を飲まされてきた中東でのゲーム。今回も何が待っているかわからない。それを考えれば、ホームのオーストラリア戦で決着をつけたいところだ。

 4分1敗――。

 これは、オーストラリアがアジアサッカー連盟に加入した2006年以降に行なわれたワールドカップ予選における対戦成績だ。そう、日本はワールドカップ予選でオーストラリアに勝ったことがない。

 ただし、これまで負けるイメージも湧かなかった。

 1敗を喫したのは、岡田武史体制だった2009年6月のアウェーゲーム(1-2)だった。この試合は、両チームともすでに出場権を獲得したあとに行なわれた消化試合で、日本はMF中村俊輔(当時セルティック→エスパニョール)、MF遠藤保仁(ガンバ大阪)、MF長谷部誠(当時ヴォルフスブルク)ら主力選手を温存して戦っている。

 その前の2009年2月のホームゲームは0-0だったが、岡田ジャパンが圧倒的に押し込んでいたし、いずれも1-1のドローに終わったザッケローニ体制の2012年6月、2013年6月の対戦でもゲームの主導権を握っていたのは日本だった。

 様相が一変したのは、昨年10月のアウェーゲーム(1-1)だ。

 2013年10月のアンジェ・ポステコグルー監督の就任を機に、高さとパワーに頼ったスタイルからパスをつないで崩すスタイルへと変貌を遂げたオーストラリアに、日本はボールを支配されて押し込まれることになる。

 だがそれは、日本の戦略でもあった。オーストラリアとは逆に、今の日本はボール支配率を高めてゲームを進めることに重きを置いていない。あえてオーストラリアにボールを持たせ、日本は自陣で守備ブロックをしっかりと組み、カウンターを繰り出していく。5分には早くも狙いどおりの速攻からFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が先制ゴール。後半にPKを奪われなければ、あるいは2度あったカウンターのチャンスのどちらかを仕留めていれば、勝ち点3が獲得できた。

 だから、ワールドカップ予選でオーストラリアに勝っていないというネガティブな戦績も、「そういえば、そうだったな」くらいの印象でしかなく、選手たちにもオーストラリアへの苦手意識はないだろう。

 ただし、今回の対戦はかなりの警戒が必要だ。

 アジアチャンピオンとしてオーストラリアが出場した今夏のコンフェデレーションズカップにおける戦いぶりを見るかぎり、昨年10月の対戦時よりもオーストラリアの進化が著しいからだ。

 昨年10月の対戦時には、オーストラリアは中盤がダイヤモンド型の4-4-2を採用していた。そのときは中盤のバランスに危うさが感じられたが、最近は3-4-2-1を主戦システムとし、ふたりのボランチが中央をしっかりと締め、バランスがよくなっている。

 また、前回の対戦でややぎこちなさが感じられたパスワークも、ディフェンスラインの中央に位置するDFトレント・セインズベリー(江蘇蘇寧)、中盤のMFアーロン・ムーイ(ハダースフィールド・タウン)、MFマッシモ・ルオンゴ(QPR)といった選手たちによって、より力強く、正確に、そしてスピーディになり、189cmのFWトミ・ユーリッチ(FCルツェルン)を中央に置く3トップが迫力のあるフィニッシュシーンを作り出す。コンフェデレーションズカップのチリ戦では、個々のテクニックとパスワークにおいては世界トップレベルを誇るチリに「蹴るサッカー」を選択させている。

 コンフェデレーションズカップの試合映像を見たという原口は警戒心を強めている。

「前にやったときよりもチーム力が上がっていると感じた。よりアグレッシブになっていたし、印象は全然違う」

 コンフェデレーションズカップを見るかぎり、オーストラリアが世界と渡り合えるだけのチーム力を備えているのは間違いない。

 だが、そうした強敵に勝つためのサッカーを、ハリルジャパンはこれまで磨いてきたはずだ。

 近年の日本代表は、まずは得意とするスタイル(=ショートパスをつないで崩す)を築き、それを磨くことが勝利への近道になるというチーム作りを進めてきた。だが、それが封じられるとめっぽう弱く、そもそもワールドカップの舞台では得意とするスタイル(=自分たちのサッカー)などやらせてもらえない。

 一方、ハリルジャパンはワールドカップで勝つために、対戦相手や戦況に応じた戦い方を磨いてきた。引いて守ってカウンターを繰り出した試合もあれば、ハイプレスを仕掛けて相手を飲み込んだゲームもある。対戦相手やチーム状況によって、システムも、選手の顔ぶれも変えながら戦ってきた。

 世界レベルであるオーストラリアが相手だからこそ、相手の弱点を突くような、したたかなゲーム運びをしなければならない。その点で8月31日の決戦は、これまでのチーム作りのひとつの集大成――日本代表の現在地を知るのにふさわしいゲームになる。

 前回対戦時にボランチを務めたMF山口蛍(セレッソ大阪)が言う。

「コンフェデでは(オーストラリアの)3バックがうまく機能していて、すごくいい仕上がりだったんじゃないかと思いました。今回も3枚でくるかもしれないから(前回の印象は)一回忘れたほうがいい。相手に合わせてうまく臨機応変にやらなくちゃいけないと思います」

 もうひとつ、期待することがある。それは、世界への扉を開くのが中堅や若手選手たち――原口やFW大迫勇也(1FCケルン)を筆頭とするロンドン五輪世代や、その下のFW久保裕也(ゲント)をはじめとするリオ五輪世代――であれば、なおいいということだ。

 世界との対戦を見据えれば、さらなるチーム力の向上が必要だ。いつの時代もチームが次のステージへと上がるための原動力となるのは、中堅や若手選手の突き上げであり、彼らが加速させる世代交代だ。

「僕らや、さらに下のリオ五輪世代が結果を出して世界の扉を開かないと、世界では勝てない。僕はこれまで20歳だろうが、30オーバーだろうが年齢は関係ないって思っていたんですけど、やっぱりどこか北京五輪世代に頼ろうとする部分があったかなっていうのを(6月の)イラク戦が終わって感じて。僕らの世代がビッグゲームでチームを助けるんだ、引っ張るんだという気持ちでやらなきゃ、チーム力は高まらない。それは自分を過信しているのではなくて、純粋な気持ちでそう思うんです」

 原口のこの言葉を聞けば、なおさら期待しないわけにはいかない。日本代表のチーム力をアップさせる可能性を秘めた、彼らの大いなる奮起を――。

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