日本人が健康寿命を延ばすために改善すべき生活習慣

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◆日本人の遺伝子スイッチを健康に切り替えるためには

 医師の奥田昌子氏は「特定の病気になりやすい遺伝的要素を持っていても、生活習慣の修正によって遺伝子のスイッチが切り替わる現象(エピジェネティクス)があります。良い方向でこれを起こせるのが、日本人に合った健康法です」。

 対策は、伝統的生活習慣の良い点を取り入れながら、不適切な環境要因を減らすことだという。

「実際に、減塩と動物性タンパク質の摂取量増加により脳出血が大きく減りました。ピロリ菌と肝炎ウイルスを封じ込めるとともに禁煙が広がることで、胃がんと肝臓がん、肺がんの症例も減ってきています」

 具体的な禁止事項としては、「日本人の健康維持には伝統的な和食の食習慣がやはり最適で、がん予防にも有効。遺伝的に酒に弱く、特に日本人男性は内臓脂肪が非常につきやすいので唐揚げとビールなどという組み合わせはもってのほかでしょう。飲酒だけでも、長年続けるとがんになりやすい体質をつくります。日本人女性の乳房は乳がんになりやすいとされていますが、牛乳が乳がんの発症率を高めるという研究結果もあるので、乳製品には注意が必要」と話す。

 また日本人の健康寿命は短く、介護期間は平均9〜12年。化学者の寺尾啓二氏は、健康寿命を延ばすために必須の成分を3つ挙げる。

「ミトコンドリアの中で糖質や脂質をエネルギーとして燃焼させる成分として、ビタミンB群のほかコエンザイムQ10とL・カルニチン、R・αリポ酸があります。この3つの成分は20歳をピークに減っていきますが、かつて長寿だったことがない日本人は高齢になるとこれらが激減する。30〜40歳くらいから補っておくのが得策」

 3つの成分は、基礎代謝向上や脂肪燃焼促進に効果を出した研究結果が数多く発表されているが、これらはもとは体内で合成されているため、食品からの吸収率が非常に悪い。そこに、欧米発の新しい情報に飛びつく風潮が弊害をもたらしたと寺尾氏は指摘する。

「コエンザイムQ10は一時、サプリメントや化粧品が量産されましたが皮膚はもちろん、脂溶性のため消化器で吸収されない。R-αリポ酸も胃酸で壊れてしまうし、L-カルニチンは味に難点がある。そのため、吸収を助けるシクロデキストリンとともに摂取しないといけないのですが、大事なことに焦点が当たらない」

 健康ブームに踊らされていては、本当の健康は手に入らないのだ。

●日本人が摂るべき3要素
・コエンザイムQ10
・L-カルニチン
・R-αリポ酸

<改善すべき生活習慣>
・代謝、脂肪分解能力が低く、特に男性は内臓脂肪がつきやすいので高脂肪食は控える

・4人に1人はカフェインで不快感をもよおす遺伝子を持つ。コーヒー、お茶の摂取注意

・肝臓が弱いので酒を控える。飲めると思っていてもダメージは確実に蓄積されており、がんの要因となる

・米、青魚、大豆などなるべく伝統的な和食を取り入れる

・糖質制限やグルテンフリーにこだわらない

・海外のサプリメントや薬は禁物

・特定のウイルス、細菌感染に注意する

【奥田昌子氏】
内科医、健診医、産業医、医学博士。三菱ケミカル豊橋事業所健康支援センター勤務。『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)がヒット中

【寺尾啓二氏】
化学者。シクロデキストリンを用いた機能性食品開発などを行うシクロケム代表取締役社長、神戸大学医学部客員教授。新著に『本当は健康寿命が短い日本人の体質』(宝島社)

(※)日本人とは?
「日本の国土で遺伝子を受け継ぎ、共通の生活習慣を持つ人々」(奥田氏)、「大陸との混血なく島国の中で代々生きてきた、ネイティブ」(寺尾氏)。本特集では両氏の見解を折衷し「日本に生まれ育ち、現在も在住している人」と定義する

取材・文/SPA!グローバル健康問題取材班
― 欧米の健康法は日本人に効かなかった ―