画像提供/アメリカのホームステージャー吉川みどりさん

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「大切な家を売るなら『ホームステージング』は必須。アメリカでますます注目が集まる『ホームステージャー』の実態」というタイトルのセミナーがあると聞いて参加した。日本でようやく動き出した「ホームステージング」だが、本場アメリカの実態はどうだろう。【今週の住活トピック】
アメリカのホームステージャー来日セミナー/(一社)日本ホームステージング協会

「ホームステージング」は中古住宅を早く高く売るのが目的

「ホームステージング」とは、住宅を売却するときに、家を家具やインテリアなどでディスプレイして魅力的に演出すること。「できるだけ早く、できるだけ高く」売ろうという仕掛けだ。

このセミナーの講師である吉川みどりさんは、ホームステージングの本場・アメリカのシアトル(ワシントン州)在住で、住宅の内装設計から施工、ステージングまで幅広い仕事をされている。

【画像1】「椅子にひざ掛けやクッションを置いたり、テーブルの上に暮らしをイメージできる小物を置くだけでも印象が違います」と説明する吉川みどりさん(撮影/住宅ジャーナリスト・山本久美子)

アメリカでは、ホームステージングが意味する範囲は広く、個人が結婚式やクリスマスパーティーのために家をディスプレイする場合もあれば、新築やリノベーション時に内装設計から入って最終的にインテリアの設置までする場合もあるというが、ここでは住宅を売却する場合に絞って紹介していこう。

住宅売却時にホームステージングをするメリットは、家具がないと広さがつかめないこともあるが、それぞれの空間でどんな生活が送れるかイメージできることで「早く高く」売れることにある。吉川さんによると、アメリカの2015年と2016年の調査で、多くの物件が早く売れた結果が出ているという。

「ホームステージングは、HOUSE=家をHOME=家庭にしてあげること」だと吉川さんは言う。家には愛がなければ売れない、というのが持論だ。演出した家庭の暮らしを手に入れるために、家はもちろんだが、10件に1件くらいの割合で同じ家具をセッティングしてほしいと言う買い手がいるというほど。

本場アメリカのホームステージングの実態は?

アメリカでは個人がリアルター(不動産仲介事業者)であることが多い。そこで当初、ホームステージングは、リアルターが自ら所有する椅子やクッションなどをディスプレイしていたことに始まり、その後ホームステージャーという職業が専業化していったのだそうだ。

ホームステージャーを雇うのはリアルターで、売買が成立すると手に入る仲介手数料から費用を負担する。そのため売りたいと仲介の相談を受けたらすぐにステージャーを雇い、市場調査をして、売りたい層(年収や年齢、職業、家族構成など)を設定して、ステージングしたらすぐに売り出せるように準備をするという。

ステージャーは、家を撮影するなどして打ち合わせを進め、必要があれば図面を書き起こし、予算を聞いてプランニングに入る。ステージングの内容が決まれば、家具などのレンタルの発注や手配、セッティング、売却後の撤去までが仕事になる。

リアルターの中には、オープンハウス時にクッキーやパンを焼いて匂いを演出したり、壁のペンキを塗り替えるまで手を入れる強者もいるそうだ。

ホームステージングが一般化すると、キャンドル1個から家具やインテリア、絵画までをレンタルするビジネスも生まれる。
吉川さんが紹介した事例では、家庭で使っていない家具などを引き取り、新品同様などの使える家具を集め、倉庫に保管し、バーコードで管理して、カタログやオンラインで検索できるようにしている。倉庫内にスタジオを構え、即座に撮影→DBに反映という仕組みも整えているのだそうだ。

ホームステージングにかける費用や期間は物件によりさまざまだが、アメリカは住宅が不足しているので、シアトルなら1カ月で8割が売れ、好立地ならすぐに買い手が見つかる状況だという。ステージングの家具などにかける費用は、1億円の物件なら20〜30万円程度が一般的で、これに運搬や撤去、ステージャーの報酬(どの程度時間をかけたかによる)などを入れると50万円くらいが目安になる。

アメリカでも居住中の段階で売却をする事例も多い。その場合、売主の所有物は撤去してもらうのが原則。売れるまでガレージに収納したり、ペットを預けたりしてもらう。「誰にでも売る」のではなく、「マーケットから見たターゲット層にしっかりアピールする」のが、早く高く売るための決め手だからだ。

日本でもホームステージングは広がる?

日本でも、少しずつではあるが、ホームステージングが注目されるようになってきた。
2013年8月に(一社)日本ホームステージング協会が設立され、日本の住宅事情に合わせたホームステージングの普及に力を入れている。同協会では、ホームステージャー(1級・2級)の認定資格制度を設けており、認定講座を受講して資格試験に合格した認定ホームステージャーの人数は、2017年8月4日時点で、1476人となった。代表理事の杉之原冨士子さんは「2017年度中には2000人を超える見込み」だという。

【画像2】第1回ホームステージングコンテストの入賞作によるホームステージング事例(写真提供/(一社)日本ホームステージング協会)

また最近では、大手仲介会社を中心に、売主にホームステージングを提案するようになってきた。仲介会社が費用負担するサービスとしては、売主が専属専任・専任媒介など1社だけに仲介を任される契約を結ぶことを条件に、各社が定めた査定価格や築年数、面積などの条件を満たす居住用物件に限られることが多い。高く売れる物件を独占的に仲介するためのサービスと言えるだろう。

吉川さんは「アメリカは10年くらい前からステージングが普及しましたが、日本はまだこれからです。ただし、日本は住空間や生活の仕方が違うので、そのまま取り入れるのではなく日本バージョンを構築する必要があるでしょう」と指摘した。

日本とアメリカでは仲介のシステムが大きく異なるが、誰に買ってほしいのかきちんとマーケティングして、売りたい層にしっかりアピールできるホームステージングは、日本でも今後試行錯誤しながら広がっていくだろうと思う。


(山本 久美子)