エバートンからマンチェスター・ユナイテッドに加入したロメル・ルカク【写真:Getty Images】

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グッズ売り上げは期待できなくとも…実戦的な2選手の獲得

 17/18シーズンのイングランド・プレミアリーグが開幕し、際立った強さを見せているのがマンチェスター・ユナイテッド。モウリーニョ政権2シーズン目を迎える今季はFWロメル・ルカク、MFネマニャ・マティッチというプレミアで実績のある新戦力が即フィット。最高のスタートを切っている。(文:粕谷秀樹)

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 3戦3勝。得点10・失点0。マンチェスター・ユナイテッドのスタートは、完璧といって差し支えない。GKダビド・デヘアの安定、2シーズン目を迎えたポール・ポグバ、ヘンリク・ムヒタリアンの充実もさることながら、新戦力のフィット感も好調の要因だ。

 たしかにヴィクトル・リンデレフは出遅れている。監督としての実績が皆無のアラン・パーデュー(解説者)にさえ、「一対一は危なっかしくて見ていられない」と失笑される始末だ。しかし、ユナイテッドを率いるジョゼ・モウリーニョ監督にすれば、パーデューのコメントは片腹痛い。

「リンデレフはプレミアリーグのリズムに馴染むまでの時間を必要としているだけだ」と語り、とりあえずはリーグカップ、リザーブリーグなどを主戦場とし、実戦の勘を養う時間の猶予を与えている。

 昨シーズン、ムヒタリアンのデビューを急がせて失敗した苦い経験を踏まえ、モウリーニョ監督は十分すぎるほど計算していた。パーデューはあらゆるクラブでノープランを指摘されてきた。逆立ちしたとしても、モウリーニョ監督の遠望深慮は分からない。

 さて、リンデレフに限らず、鳴り物入りでプレミアリーグにやって来た外国人選手が、初年度に期待を裏切るケースは少なくない。リバプールのルイス・スアレス(現バルセロナ)をしても馴染むまでに一年以上かかり、アーセナルの黄金期を支えたロベール・ピレスも、「激しい当たりに耐えるからだを作るまでに2年ほどかかった」と述懐している。

 環境適応力には個人差があり、スアレスやピレスの例が一概に当てはまるわけではないものの、言語や文化の違いはもちろん、どのリーグよりもスピードとフィジカルが求められるプレミアリーグに、即フィットするのは至難の業だ。

 だからこそユナイテッドは、ロメル・ルカクとネマニャ・マティッチを獲得したのだろう。補強の優先順位では両選手とも一番手ではなかったが、ルカクはエバートンやウェストブロミッチ・アルビオンで、マティッチはチェルシーで確固たる地位を築き、プレミアリーグのリズムは身に染みるほど理解している。

 関連グッズの売り上げが期待できるタイプではなく、より実戦的な2選手を獲得したということは、ユナイテッドの補強部門がついに目覚めた証だ。

プレミアリーグをよく知る〈極上の人材〉

 ルカクの存在感は際立っている。強靭、かつ柔軟なフィジカルを利したポストワークによって、アバウトなパスでも確実にマイボールにする。相手センターバックの枚数にかかわらず、だ。このキープ力があるからこそ、ユナイテッドの攻撃は数年にない破壊力が感じられるのだろう。ルカクにボールが渡った瞬間、2〜3列目のサポートは分厚く、素早い。

 また、ポグバ、ムヒタリアン、ファン・マヌエル・マタといったアシスト役にも恵まれているため、ユナイテッド特有のプレッシャーに耐えさえすれば、昨シーズンの25点を上まわるゴール数も期待できそうだ。ルート・ファン・ニステルローイ以来、待望久しい9番タイプがやって来た。

 マティッチの加入で、ユナイテッドの守備は格段にレベルアップした。迅速に、いとも簡単に高めのポジションでボールを回収できるため、ショートカウンターの機会も昨シーズンに比べると増えている。

 もちろん、マティッチの動きに呼応したDFラインもポジション設定が高くなるため、全体のラインもコンパクトになった。早めの勝負を得意とする両センターバック(エリック・バイリー、フィル・ジョーンズ)との連係もスムーズだ。

 マイケル・キャリックのパスセンス、理に適ったポジショニングも捨てがたく、必ず彼を必要とするときがやって来る。しかし、テンポが日々スピードアップする近代フットボール事情を考慮すると、36歳の大ベテランは重要なポイントで起用すべきだ。

 フィジカルでキャリックを上まわり、年齢で7歳下まわるマティッチが守備的MFの一角に収まった人選は、至極当然である。ロイ・キーン(アイルランド代表コーチ)が退団して以来、ユナイテッドが探し求めた中盤の1ピースが、マティッチの入団によってようやく埋まった。

 ネイマール(パリ・サンジェルマン)のような知名度はないものの、ユナイテッドは実戦タイプの2選手を獲得して好スタートを切った。勝利至上主義のモウリーニョ監督にとって、プレミアリーグをよく知るルカクとマティッチは〈極上の人材〉といって差し支えない。

(文:粕谷秀樹)

text by 粕谷秀樹