子どもに対する虐待がニュースになると、きまって「理解できない、ひどい親だ」「親の資格がない」などの言葉が投げかけられます。

でも、「自分もいつか同じ事をしてしまうのではないかと心配になる」あるいは「子どもに手を上げてしまった、これは虐待だろうか」と悩んでいるお母さんは少なくありません。

一人の母の立場から虐待について考えます。

虐待しているのは●●が一番多い


虐待は身体的、心理的、性的に暴力を加えたり、子どもに必要なケアを与えない(養育放棄)などをいいます。

どんな人が子どもへの虐待をしてしまっているでしょうか?

厚生労働省のデータによると、子どもに対する虐待をしている人の半数以上が実の母親。次に多いのが実の父親で、実の両親どちらか(あるいは両方)からの虐待が8割を越えています。


 子どもに虐待してしまった人

 実母・・・50.8%

 実父・・・36.3%

 実母以外の母親・・・0.7%

 実父以外の父親・・・6.0%

 その他・・・6.1%(祖父母、伯父。伯母等)

厚生労働省「平成27年度福祉行政報告例」

しつけと虐待は別のものです



虐待で逮捕された両親の多くが「しつけのつもりだった」と言いますよね。

「どこまでがしつけで、どこまでが虐待か」という「ライン」を知りたいというママパパも少なくないでしょう。でも行きすぎると虐待、という考え方はどうも正しくないようです。1回しか叩いていないから虐待じゃない、10回叩いたら虐待というふうにカウントできるというものでもないですよね。

判断基準は、その行動が子どもにどんな影響を与えるか、です。

児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)の第一条には「児童虐待は著しい人権侵害である」と明記されています。

相手の行為がどのような意味を持つか、受け手の側にたって判断されます。セクハラやパワハラなど各種ハラスメントや、いじめなどと同じように、強い側ではなく弱い側の立場が尊重されます。

ですから親の「つもり」ではどんなに心に愛情があっても、当の子どもに害をなすものは虐待です。

虐待の連鎖


虐待の連鎖という言葉があります。自分が子どもの頃に虐待を受けて育った人が親になると、子どもに対して虐待をしてしまう傾向がある、というもの。実際にどのくらいの割合で虐待が連鎖するかその確率は分かりませんが、「虐待を受けた」という自覚がある人が「自分もやってしまうのではないか」と恐れを抱く確率はとても高いのだろうと思います。

でも、連鎖に敏感になってしまうということは、自分の行動に自覚的になっているということです。つまり虐待してしまいがちなときに、自分で自分の行動に気付いてストップできる可能性が高いということ。

なかには自分の受けた子育てをそのまま何も考えずに自分の子どもにコピーしてしまう親もいるでしょうが「もしかしたら自分は虐待の連鎖をしてしまうのではないか」と心配する気持ちのある人は、逆に親を反面教師にして、子どもを尊重する子育てができるのではないでしょうか。虐待の連鎖を恐れる気持ちが、虐待の連鎖を断ち切る第一歩だと思います。

悩んでしまうお母さんに伝えたいこと 



ぎりぎりで虐待を持ちこたえている、今日は子どもを叩いてしまった、というお母さんに伝えたいことがあります。それは頑張っているから悩む、愛情があるから辛いのだということです。

よかったら以下の方法を試してみてくださいね。

育児の悩みをシェアしよう


「こんなことで悩んで恥ずかしい」ということはありません。育児中、どんなことでも辛いときは誰かに悩みをはき出しましょう。話すは放す、といいます。でも相手の人選は大事です。
「お母さんがしっかりしないからよ」などと偉そうに叱咤激励してくる人はNG。批判や否定はせずに聞いてくれる人がいいですよね。会った後に、何となく元気になれる相手なら最高ですが…適任者がいないときは、日記を書くだけでも違ってきます。言葉にするとモヤモヤを手放すことができますよ。

うまくいかないものだ、とマインドを変える


お母さんだからといって、常に子どもに上手に対処できるわけではありません。子育てを頑張っている人ほど感情が揺れるのは当然です。子育てはそもそも思い通りに運ばない方が多い、ということを知識として知っておきましょう。小さくても子どもは別の人格を持っています。思い通りになる方が珍しいのです。

理想は5割達成したらオッケー


子育てに大きな理想を抱いていると、現実とのギャップが辛くなります。仕事や勉強なら理想と現実とのギャップを埋めていくことに価値がありますが、子育てではその方法論はナンセンス。現実の自分や今ここにいる子どものなかに、かけがえのないものを見いだすのが子育てです。どうしたら「ありのまま」を許せるか…たぶん、この世に生まれて今ここに存在していることが、ありのままでいいよ、というメッセージを含んでいるんじゃないかなと思うのです。

物理的に休もう


ところで睡眠時間はちゃんと取れていますか?疲労と睡眠不足では誰もがイライラしがちですし、正常な判断力や自制心も失ってしまいます。母はスーパーマンではないのですから、時にはゆっくり休息しましょう。

自分の子育てを心配しすぎないで


昭和時代の子育てはもっとバイオレンスで、親が子を叩いてしつけるのがあたりまえ、という風潮がありました。私自身、親に叩かれた経験は何度もあります。そのせいで、とは言いませんが、じつは私も子どもを何度か叩いたことがあります。

あるとき玄関で靴を履くのに手間取っているわが子にいらだってバチンと頭を叩いてしまいました。
自分の手の痛みに呆然としました。娘に「叩いてごめんね」と謝ると、娘は「わがまま言ってごめんね」と謝りました。二人で抱き合って泣きました。

いま長女は大学生ですが、客観的に見てその出来事が大きなトラウマになっているようには見えません。

暴力は絶対いけませんが、親が一度や二度感情をぶつけたからと行って潰れるほど子どもは弱い存在ではありません。自信を持つのは難しいものですが、自分の子育てをあまり心配しすぎないことも、大切なのではないかと思います。 

  (文・曽田 照子)