ただの“ヤンチャ坊主”では醸し出せない、セックス&バイオレンスな匂い

写真拡大

■ バイオレンス性とイノセンス性を併せ持つ“演技者”

V6の強さは、相反するバラバラな個性が“WA”になっておどったときに最大限発揮される

V6はかくも不思議なグループである。

仲が良さそうに見えてバラバラに感じる時もあるし、バラバラな方向を向いているのに、向かっている先が一緒だと感じることもある。嵐やTOKIO、解散前のSMAPにしても、完全にブレイクし、個々の仕事が忙しくなった後でも、レギュラーのバラエティ番組を持っていた。だが、V6の場合は、現在『アメージパング!』(TBS系)はあるが、この番組で6人全員が揃うことはほとんどない。だからといってグループとして破綻しているかといえば、まったくそうではなく、むしろ今がまさに全盛期といった勢いを感じる。

たとえばファンの間で有名な『学校へ行こう!MAX』(TBS系)での「修学旅行」の夜の光景こそ、V6の関係性をもっともよくあらわしているだろう。明日早いから早く寝るように促すリーダーの坂本昌行に対し、最初にふざけだすのは決まって井ノ原快彦だ。それが、年少組のヤンチャ心に火をつけ、森田剛や三宅健、岡田准一が呼応し悪ふざけを加速していく。そして機を見て長野博もそれに加わる。暗闇の中、「痛い痛い痛い!」と悲鳴が上がり、電気をつけると長野が三宅にプロレス技を仕掛けている。「いい加減にしろ、お前ら」と注意する坂本にメンバーは「一番坂本くんがうるせえよな」と言うのだ。このワチャワチャ感こそV6だ。

年長組である「20th Century」3人と年少組である「Coming Century」3人からなるというのがV6の特殊性だ。年齢がバラバラな彼らは、V6に対する思いもバラバラだった。年長組の3人にとってV6は、「ようやく掴んだ栄光」だった。一方で、年少組の3人は違っていた。既にジャニーズJr.の中で「剛・健コンビ」と呼ばれ人気のあった2人は、V6をバレーボール応援のための“期間限定のユニット”のように捉えていた。岡田に至ってはオーディション合格後すぐのデビュー。森田はデビュー当時を「認められてない感じはずっとあった。一緒にやってても埋まらない距離がずっとあった」と振り返っている。そういったグループの成り立ちから、彼らがバラバラな方向に進んでいくのは必然だったのだ。

6人がそれぞれの方向に進んでいく中、森田剛は役者として開眼していった。最初にジャニーズファンを越え、ドラマファンに一目を置かれるようになったのは、おそらく『演技者。』シリーズ(’02〜’04年ほか フジ系)だろう。ここで森田は大根仁が監督を務めた「マシーン日記」や「激情」に参加した。前者は大人計画の松尾スズキ、後者はポツドールの三浦大輔の戯曲をドラマ化したもので、いずれもセックス&バイオレンスの匂いが色濃く漂う作品である。それに森田はピッタリとハマった。もともとその風貌からヤンチャさはにじみ出ていたが、ハマったのはそれだけが理由ではない気がする。彼が持つ「イノセント」な部分が作品に共鳴したのだ。それがストーリーのドギツさを中和した。映画『ヒメアノ〜ル』(‘15年)でも、森田剛演じる「森田」は、殺人を繰り返すバイオレンスな役どころだったが、どこか「イノセンス」な輝きを放っていた。もし、森田がこの役を演じていなければ、おそらくその暴力描写ばかりに注目が集まってしまっていただろう。大河ドラマ『平清盛』(‘12年 NHK総合ほか)で演じた平時忠も彼の持つバイオレンス性とイノセンス性が発揮されたもの。時忠は清盛(松山ケンイチ)のもとで恐怖政治を行っていく。そして「平家にあらずんば人にあらず」というセリフが彼の口から発せられた瞬間、それが平家の驕りをあらわすものではなく、純粋さ故に追い込まれていく苦悩をあらわす言葉に変容し、見るものを震わせた。

今夏に始まった『ハロー張りネズミ』(TBS系)では、「演技者。シリーズ」以来、久々に大根仁とタッグを組んでいる。大根が森田に用意したのは木暮久作。主人公・五郎(瑛太)の相棒だ。原作の風貌とは似ても似つかない。だが、常々原作に見た目を似せることが第一となっている今の風潮に疑問を持っている僕からすると、見事なキャスティングだと思う。暴力的な雰囲気の漂う作品の中で、男臭いが実は涙もろいという役はバイオレンス&イノセンスな森田にピッタリだ。

V6の強さは相反するバラバラな個性が“WA”になっておどったときに最大限発揮されるが、森田剛個人もまた相反する個性を併せ持っているのだ。

(文・てれびのスキマ)

◆てれびのスキマ=本名:戸部田誠(とべた・まこと) 1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『1989年のテレビっ子』、『タモリ学』、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』、『コントに捧げた内村光良の怒り』など多数。雑誌「週刊SPA!」「TV Bros.」、WEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載も多数。7月より「月刊ザテレビジョン」にて、人気・話題の芸能人について考察する新連載「芸能百花」がスタート