北朝鮮との交渉は決裂を恐れず、強硬な言葉をふんだんに使い、一切の妥協を排さねばならない――。

 北朝鮮との交渉を10年ほど実際に続けた米国の専門家が、こんなタフな「北朝鮮との交渉法」を明らかにした。拉致問題の解決を目指す日本にとっても交渉において役に立ちそうな教訓といえそうだ。

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北朝鮮と実際に交渉してきたリオッタ氏

 米国の首都ワシントンでは、北朝鮮の核兵器の脅威が熱い論議の的となっている。北朝鮮のミサイル発射に対する反発も激しい。8月29日に北朝鮮が日本の方角に向けて北海道の上空を飛翔する弾道ミサイルを発射したことも大々的に報道され、官民から激しい非難の声が沸き起こった。

 米国としては、軍事手段に訴えずになんとか北朝鮮に核開発を放棄させようと努めている。そのための手段には「圧力と対話」の両方があるが、現在はまず圧力だけに集中する形をとっている。

 だが水面下では、米朝両国はときには接触していることもあるようだ。公式にも、北朝鮮の出方次第で、米国が北朝鮮となんらかの交渉をしなければならない場面も出てくるだろう。

 そのような場合、北朝鮮との交渉ではなにが最も重要なのか。米国の国防総省の高官として北朝鮮政府と1996年から2005年まで交渉をしたアラン・リオッタ氏から、北朝鮮と交渉する際の「教訓」が発表された。

 米国の歴代政権にとって、戦争で死亡あるいは失踪した自国の軍人の後追い調査はきわめて重要とされ、「誰も置き去りにしたり、見捨てることはしない」という強い信念のもと根気よく実施してきた。

 リオッタ氏は、朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨の収集や、行方不明となった米兵の消息の調査のために北朝鮮と交渉する立場にあった。同氏はその考察を「北朝鮮との交渉の3つの教訓」という記事にまとめ、大手紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(8月25日付)に発表した。

北朝鮮との交渉で心掛けるべき3つの教訓

 リオッタ氏が北朝鮮との交渉の教訓と適切な方法として指摘したのは以下の3点である。

・北朝鮮の最高指導部が自国の交渉者に決定の権限を与えることはない。

(このため、交渉で北側の交渉担当者の機嫌をうかがうことは無駄である。北朝鮮の交渉担当官僚は、自分の担当する案件の重要性を上層部に認めさせるために強硬な言葉を使うことが多い。だが、交渉担当者に決定の実権はない。だから、その強硬な言葉に同様に強硬な言葉で応じても、失うものはない)

・北朝鮮との交渉では決裂を恐れてはならない。

(米側のほとんどの歴代政権は、北朝鮮との交渉では交渉を続けること自体を最大の目的としてきた。だから北朝鮮側は強気になって、強硬な態度を保つことが多かった。だが1996年の米朝交渉では、米側は北側の頑迷な態度を不毛とみなし、交渉を一時、打ち切った。その半年後に北朝鮮は態度を変え、米兵の遺骨収集に関して最大の譲歩をみせた)

・北朝鮮に妥協して自国側の主張を後退させてはならない。

(北朝鮮は、交渉の相手が絶対にこれ以上は妥協しないと判断した場合、かえって柔軟になることがある。逆に米国側が最初の主張や立場からやや後退して妥協案を示す可能性があるとみた場合、北朝鮮は急激に硬直性をみせる。そのため米国側は北朝鮮に対して『交渉のための交渉』という姿勢は絶対に放棄すべきである)

 リオッタ氏は以上のような北朝鮮との交渉術を「教訓」として提起した。そしてトランプ大統領が言葉の激しさをどんどんエスカレートさせて、北朝鮮に対する「炎と怒り」といった過激な表現を使うことのマイナス点はほとんどないと強調していた。

筆者:古森 義久