プロ野球のコーチが急死したことで注目を浴びている劇症型溶連菌感染症。「人食いバクテリア」という別名を持つ病気の症状や治療、予防法をご紹介します。

感染した30%以上が死に至る病気

突然発症し、急速に多臓器不全になり死に至ることも多い「劇症型溶連菌感染症」。メディアでは「人食いバクテリア」と報道されることもあります。米国で1987年に初めて報告された比較的新しい病気で、日本では1992年に最初の症例が報告され、毎年100〜200人の患者が確認されているそう。そして、このうち30%もの人が死亡しています。東京都では2015年、2016年で年間60人以上が罹患。近年、増加傾向にあります。

劇症型溶連菌感染症は、レンサ球菌による感染症です。通常は、レンサ球菌に感染しても無症状のことが多く、症状があっても咽頭炎や皮膚の感染症など軽いものです。それが稀に、血液や筋肉、肺など普段は細菌が存在しない組織に感染し、重篤な状態になるのです。残念ながら、日常にありふれたレンサ球菌が劇症型になる経緯については明らかになっていません。

劇症型溶連菌感染症は、患者の傷口に直接触れることなどによって感染します。はじめは、発熱や悪寒など風邪のような症状に見舞われます。そのほか、手足がズキズキ痛んだり、腫れ上がったりするほか、傷口部分が赤くなることもあります。手足がズキズキする前に、筋肉痛、下痢などインフルエンザのような症状が20%の患者にみられたという報告もあります。

発症すると、症状が進行する速度が非常に速く、筋肉や内臓、皮膚などの細胞や組織が壊死を起こすことが人食いバクテリアと呼ばれる所以でもあります。壊死のスピードは1時間に2〜3cmともいわれており、最終的には多臓器不全からショック症状になり、早い場合は発病後数十時間で亡くなることもあります。年齢や健康状態に関係なく、健康な人にも突然発症するのが恐ろしいところです。近年では妊産婦の症例も報告されています。

傷口を清潔にたもち、手洗いうがいを徹底

治療には、ペニシリン系薬が用いられます。また、血圧が低下するため、大量の輸液が必要なことも。レンサ球菌によって壊死に至った部分は、広範囲に切除する必要があります。

劇症型溶連菌感染症を予防するには、傷口を清潔に保つこと。レンサ球菌はどこにでもあるありふれた菌で、感染経路が特定できないことが多いのですが、手洗いやうがいもしっかり行いましょう。もし傷口付近に発赤や腫れ、痛みのほか、発熱などが現れたらすぐに医療機関を受診してください。劇症型溶連菌感染症は「5類感染症」に定められており、診察した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることが、感染症法によって義務つけられています。

執筆:月刊『からだにいいこと』編集 -株式会社からだにいいこと