法務局に出された羽賀夫妻(写真右下)直筆の所有権移転の申請書類には、実印が捺印

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《被告訴人らの下記所為は、刑法第96条の2の強制執行不正免脱罪に該当すると思料するので、被告訴人らの厳重なる処罰を求める》

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 8月22日、沖縄県警察本部あてに送られた1通の告訴状。それは、本誌が今年1月に公にした、4億円ともいわれる不動産を隠して保有していた、元タレントの羽賀研二受刑者と妻であるM夫人に対するものである。

 羽賀は'07年6月に恐喝未遂・詐欺の容疑で逮捕。'13年に最高裁で懲役6年の罪が確定し、現在は沖縄刑務所に収監中だ。

「彼は被害者であるY氏に医療会社の未公開株を“会社が破綻したら責任を持つ”という約束で、元値の3倍である3億7000万円で売却。だが、会社が破綻しても金を返すどころか、暴力団関係者を使って脅し、1000万円に棒引きにする書類に判を押させたのです」(全国紙記者)

 多額の株購入資金をだまし取られたY氏は、代金返還を求める民事訴訟を起こす。昨年10月に大阪地裁は、羽賀に3億9000万円の支払いを命じる判決を出すが、それを不服として控訴。しかし、大阪高裁は5月11日に一審の判決を支持し、控訴を棄却。最高裁へ上告することなく、判決は確定したのだが……。

「彼は一審判決が出たあとの昨年12月27日に離婚。そして、今年1月4日に所有する不動産の権利をすべてM夫人に移し、1月11日に法務局へそれを申請していたことがわかったのです。裁判に負けたから離婚して妻の名義にするなんて、こんなの明らかな財産隠しじゃないですか!」

 とY氏は怒りをにじませる。

 今年の1月31日号で本誌が報じたように、羽賀は故郷の沖縄に商業ビルや一軒家、軍用地など合計16筆の不動産を所有している。しかも、相場より高い家賃で借りる米兵相手の一軒家や米軍基地内の土地など、取りっぱぐれの少ない玄人好みの不動産投資であることも明らかになった。

「特に彼が所有している3つのビルは、海沿いの有名リゾート地にあり、米軍基地も近いことから、夜は地元客や米兵などでにぎわっているんです。なので、テナントは常に埋まっている状態で、すべての不動産を合わせると、月々300万円くらいの家賃収入を得ているのではないでしょうか」(地元の不動産業者)

 実際に法務局に提出した固定資産評価証明書に出された16筆の不動産の評価額を足していくと、1億6131万円ほどになる。だが、実際の市場では、さらに高値で取引されるのが通例だと話すのは、不動産の売却を扱う『ROSSOコンサルタンツ』の花咲圭祐氏だ。

「自己居住用の場合、評価額は市場価格の6割から7割というのがざっくりとした基準です。今回の場合、合計評価額が1億6000万円ですので、それが7割だとしたら、市場価格は2億3000万円くらいになるでしょう。

 賃貸やテナント用の物件の場合は、買う人は投資家ですので“いくら投資していくらリターンがあるか?”を考えますので、賃料設定額から逆算します。利回りは築年数やエリアの賃貸需要、駅距離などから判断されますが、沖縄の一棟物件は7〜9%くらい。

 羽賀さんの物件は、賃料を高く取れる店舗のテナントもいくつか入っており、仮に利回りを10%と見て賃料が月300万円だとすると、300万円×12か月÷10%=3億6000万円くらいの価値はあるのではないでしょうか」

 それだけ多額の資産を持っていながらも、法廷ではそれを隠し続け、お金に窮していると主張し続けてきた。

「一審のとき、羽賀はお金がないので数百万円で和解してくれないかともちかけてきたのです。しかも、彼は高裁へ控訴するための182万円に対し、訴訟に必要な費用を払えない人を救助する『訴訟救助』を申し立てているんです。僕だけじゃなく、国をも騙していたんですよ」(Y氏)

 そんな羽賀だからこそ、塀の中でも自分の財産を守ることに執着していたのかもしれない。協議離婚により不動産の所有権が羽賀からM夫人に移ったことを、夫婦そろって直筆で署名捺印された書類を法務局へ提出。また、別の書類には、彼と面談した司法書士が所有権移転についての事情について、こう記している。

《苦労をかけ続けた配偶者と離婚することになり、根抵当権等の担保が設定されている不動産ながら、これを財産分与することとした》

 だが、これにY氏は真っ向から反論する。

「だいたい離婚して、16筆すべての不動産を妻に渡すっておかしくないですか? しかも、昨年10月に一審の判決が出た2か月後に離婚なんて、タイミングがよすぎます。私は財産を守るための偽装離婚だと思っていますよ。それで、強制執行不正免脱罪で沖縄県警に告発したのです。実刑になればさらに刑期が延びるでしょうし、逃げ得は許さないですよ」

 そこで告訴状が受理されたのかどうか、沖縄県警察本部に問い合わせると、「質問についてお答えすることはできません」とのことだった。

 満期であれば'19年に出所予定だが、延長される可能性はあるのだろうか。刑法に詳しい『弁護士法人・響』の徳原聖雨弁護士に聞いてみると、

「この時期の離婚が正当なものなのか裁判所は厳しく見ると思います。また、強制執行を免れるために奥さんも協力したとみなされれば、共犯ということで罪に問われることになるでしょう。

 法律上は3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金ですが、数億円という額ですので罰金ですむ話ではないと思います。執行猶予がつく可能性もありますが、非常に厳しい判決になることも考えられます」

 今回は妻も含めて罪に問われる可能性が出てきた。羽賀事件の第2幕が、ついに切って落とされたのだ。