【特集:公共の場での授乳問題(8)】ママが閉じ籠もらないために「パパにできること」

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「公共の場での授乳」で子育て世代が揺れるいま「パパにできること」がある!

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「育児も、仕事も、人生も、笑って楽しめる父親を増やしたい」との思いから2007年にNPO法人「ファザーリング・ジャパン」を設立、ご自身も3児のパパである安藤哲也さんに聞きました。

イクメンが語る育児のコツ&テクニック、その驚きの答えとは?

――「公共の場での授乳」について論争が繰り広げられるなかで、思い悩むママが増えています。「ファザーリング・ジャパン」(以下、FJ)は安藤さんをはじめイクメン揃いかと思いますが、イクメンならではの、ママと赤ちゃんをフォローするコツやテクニックを教えてください!

安藤哲也さん(以下、安藤):FJのイベントなどでも、そんな風に聞かれることが多いのですが……

まず大切なのは“コツ”も“テクニック”も、そんなものは「ない」ということなんじゃないかな?

――エエエ!!そんな…。ではママは、パパにどうやって助けを求めたらいいのでしょう?パパは、どうやってママや赤ちゃんに寄り添えばいいのでしょうか。

安藤:僕や、FJの仲間たちの例から考えてみましょうか。

我が家の子どもたちは3人ともずいぶん大きいので、授乳期はもう昔のことになっちゃうのですが、3人ともほぼ完母でね。

その意味では、いま問題になっている「公共の場での授乳」で「どうしたらいいんだろう?」と悩んでいるママやパパと、立場としては同じだったと思うんです。

FJにもいま、完母の赤ちゃんを家で見ている主夫がいます。

赤ちゃんが完母だと、パパはおっぱいが出ないワケだから、ママにはどうしたってかなわない(笑)

僕も実際のところ、ママ抜きで赤ちゃんの面倒を見るのは2時間が限度でしたし、FJの完母主夫のパパも冷凍母乳をあげるだけじゃなくて、昼間にママのオフィスまで赤ちゃんを連れていって、授乳タイムをつくったりしています。

それくらい授乳期の赤ちゃんにとって、ママの存在というのは大きい。

でもね、産休育休中のママにしても専業主婦のママにしても、休日のワーママにしても、出かけたい時、出かけなければならない時ってあるじゃないですか。

そんな時には一緒に出かけて、僕なんかも大きなバスタオルをカバンに入れていって、授乳する時には妻に掛けてあげたり、周りに気を配ったりしていました。

パパがそばにいる「安心感」というのは絶対にあると思うので、それも「パパにできること」のひとつかもしれませんね。

とはいえ「公共の場での授乳」に否定的な声があったら……僕自身は「公共の場での授乳」は「いい」とか「悪い」とかではなくて、子どもを育てるうえで「避けられない」ことだと思っているけれども、ママやパパが外出を躊躇してしまう気持ちも分かります。

だからといって、ママが閉じ籠もってしまうことがいいことだとは決して思えない。

そういうシチュエーションで、パパに何ができるか。

――何か、できることがあるんでしょうか。

「パパにできること」をするために必要なこと

安藤:おっぱいの出ない僕らだって、たとえ2時間は無理にしても、20分や30分なら赤ちゃんの面倒を見られるんですよ。だからママがちょっと用事を済ませたり、リラックスできる時間くらいは、つくってあげることができるんじゃないかな。

で、ここからが重要!

ママが赤ちゃんを預けるにあたって「パパだから任せられる」「安心して気分転換して来られる」と思える、お互いの信頼関係を築くために大事なことってなんだと思いますか。

――夫婦の信頼関係を築くために大事なこと、ですか?

安藤:それは「日頃から子どもと関わっておくこと」です。

週末だけ子どもの面倒を見ようとしたって、赤ちゃんはギャン泣きでしょ?

パパとはいえほとんど知らない人がやってきて、ぎこちなく抱っこしたりお世話したりすれば、赤ちゃんが泣き出すのは無理もないこと。たまにしかやらない人がやったって、うまくゆかないのは当たり前なんです。

ここで最初の話に戻るのですが、結局のところ、育児には“コツ”も“テクニック”もありません。ましてや、能力の問題でもない。

ただ普段から子どもと関わる「時間」をつくっておく、日頃の努力の積み重ねしかないんです。

パパというのは、困った時に“ツール”みたいなものに走りがちなんですが(笑)

ママとパパの負担を減らすために、育児や家事がより効率的に進む“ツール”を考えるのはいいと思いますが、その場しのぎの“ツール”には走らないほうがいい。それは大抵うまくゆきませんし、そもそも問題の解決につながりません。

とりわけ産後の授乳期は、母乳にしたってミルクにしたって、ママは大変です。

ママが育児も家事もワンオペでするのではなく、ママが疲れている時に、パパが家事をすることも立派な育児。ママの話を聞いてあげることだって、間接的には育児です。

ワーク・ライフ・バランスを整えて仕事から早く帰宅するようにする、育休を取れたらもっといい。

そうやって子どもとの「時間」や、広い意味での育児の「時間」をつくることが、どんな“コツ”より“テクニック”より“ツール”より、重要なことなのではないでしょうか。

パパは、ママに勝てない部分はあるけれど、できることだっていっぱいある。

パパが「俺ひとりだって大丈夫」という確信を持つことは可能だし、パパにその確信があれば、そしてママにも「パパひとりだって大丈夫」という確信があれば、ママもパパも不安に思うことなく、お互いを信頼して、もっと自由に動けるのです。

結果として、ママが「閉じ籠もっていなきゃ」と思い詰めることもなくなります。

それこそ授乳期が終われば、パパと子どもだけで旅にだって行けますよ!僕も3人目が3歳になった誕生日、ふたりで2泊3日の沖縄旅行に行きました。

妻はその間、自分の時間が増えたといって喜んでいましたし、僕自身も楽しかったですし、いい思い出になってます。

FJは“いい父親”ではなく“笑っている父親”を増やすことを目指してつくりました。「ファザーリング(Fathering)」という言葉には“父親であることを楽しもう”という意味がこめられています。

怖〜い顔をした“いい父親”より“笑っている父親”のほうが、パパも、ママも子どももハッピーですよね。パパの笑顔が家族の笑顔を生み、ひいては社会を変えてゆく原動力になるのです。

「公共の場での授乳」にしても、いま育児にまつわる問題は山積みかもしれません。でも実は「パパにできること」はたくさんあります。“笑っている父親”が増えることで、子どもを取り巻く社会がいい方向に向かってゆくと信じています。

記事企画・協力:光畑 由佳

【取材協力】安藤 哲也(あんどう てつや)氏 プロフィール

1962年生まれ。二男一女の父親。NPO法人「ファザーリングジャパン」ファウンダー/副代表。

社会的養護の拡充と児童虐待・DVの根絶を目指すNPO法人「タイガーマスク基金」代表理事。年間約200回の講演や企業・自治体セミナー、父親による絵本の読み聞かせチーム「パパ’s絵本プロジェクト」等で全国を飛び回りながら、子どもが通う小学校でPTA会長、学童クラブや保育園の父母会長も務め、マクロにミクロに活動中。

著書に『「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)、『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由-親を乗り越え、子どもと成長する子育て』(廣済堂出版)、『家族の笑顔を守ろう! パパの危機管理ハンドブック』(ホーム社)、『パパ1年生』(かんき出版)、『パパの極意 仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『この本よんで! papa’s絵本33』(小学館)、共著に『新しいパパの教科書』(学研)、『パパルール―あなたの家族を101倍ハッピーにする本』(合同出版)、『絵本であそぼ!―子どもにウケるお話し大作戦 (はじめて出会う育児シリーズ)』(小学館)、翻訳絵本に『ぼくとおとうさんのテッド』(文渓堂)など。