失点シーンを含めて、前半から簡単にクロスを上げさせてしまったことは今後の修正点だ。茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第23回。テーマは「スプリント」だ。22節の広島戦、23節の新潟戦に続いて3連勝を狙って乗り込んだ札幌厚別では、0-1と敗戦を喫してしまった。
 
 監督が敗因のひとつに挙げたのが、普段よりも少なかった「スプリント回数」だった。それは就任当初より掲げる「『球際、切り替え、走力』で相手を上回る」というチームのベースに直結するもの。痛い黒星を振り返るともに、改めて土台の重要性を話してもらった。
 
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[J1リーグ24節]札幌 1-0 仙台/8月27日(土)/札幌厚別
 
 今節の敗戦はかなり悔しさが残るものとなった。「たら・れば」になってしまうが、ひとつ上の11位にいた神戸、10位のFC東京、9位の鳥栖が敗れたので、うちが勝点を重ねていれば……と。思い切り悔しがる必要がある。
 
 この試合では、失点シーンを含めて前半から簡単にクロスを上げさせてしまっていた。それに伴って、ペナルティエリア内でも後手に回ってしまう。中断期間以降はあまりなかった状況だけに、しっかり反省すべきだ。
 
 アタックでは押し込んでフィニッシュまで持っていけたり、CKを取ったりするなど、ある程度は自分たちが意図したボール回しをできていた面はあった。ただ、アタッキングサードでの積極性がもっとあっても良かったと思う。
 
 開幕戦での経験から札幌のGKの特長は分かっていた。だからこそ、ペナルティエリア外から思い切って足を振るべきで、実際に開幕戦ではその流れからナオ(石原直樹)がゴールを奪っている。
 
 前節・新潟戦の決勝ゴールもタマ(三田啓貴)のミドルシュートで、22節の広島戦でも(西村)拓真が積極的に打ったことがゴールにつながった。ちょっと「上手くやろう」とし過ぎている感じがした。
 
 また、スペースがないなかで札幌を攻略しようと思ったら、とにかく「パス&ムーブだ」という話をしていた。パスをして動き、相手のマンツーマン気味のマークを剥がす。しかし、そういうシーンは多くなく、また後方から駆け上がるシーンももっと作れたはずだ。
 その意味でも、敗因のひとつは「スプリント回数」ではないかと考えていて、試合翌日の27日のトレーニング時にも選手たちには話した。札幌戦でのスプリント回数は「133」。今季のベガルタの勝ち試合の平均値は「164.9」なので、実に32回ほど少ないことになる。
 
 もちろん、夏場であることやゲーム内容などによって回数が伸びない状況はあるため、一概に「走ればいい」というものでもない。ただ、この「32回」という数字は、単純に11人で割った場合でひとり3回ほど。90分のなかで決して増やすことが不可能ではない数字だ。
 
 前節の話をすれば、スプリント回数は165回だった。カウンターを仕掛け合うような、オープンな展開でスプリントが自然と増えるシチュエーションではあったが、前へのパワーをしっかりと出せていた。
 
 監督に就任した2014年シーズンから、『「球際」と「切り替え」と「走力」で相手に負けない』というのがチームのベースとして存在する。まずそこを徹底したうえで、「相手を質で上回る」、「組織力で勝つ」、「面白いサッカーをやる」という話だ。
 
 ずっと言い続けてきたからこそ、今季は意図的に土台の話を少なくしている。ミーティングの際にボードに試合のポイントを記すのだが、そこに書いても敢えて触れなかったり、「ベース」という言い方をするだけだったり。それを表現するのは、もはや当たり前のことだからだ。
 
 私は「自信」や「勢い」は、「ベース」の上に積み上げられるものだと考えている。そもそもの部分を疎かにしてしまえば、そんなものは簡単に消えてしまう。やっぱり泥臭さやひたむきさ、謙虚さといった勝利への真摯な姿勢を持ち続けなければ白星は手繰り寄せられない。
 
 余談となるが、この試合は7月30日に札幌へと移籍した(石川)直樹との初対戦でもあった。試合後に少し話をする機会があったのだが、ルヴァンカップでの健闘と躍進を約束した。
 
 予選リーグでは彼がキャプテンマークを巻いて、若手を鼓舞し、チームを引っ張ってくれた。だからこそ、「お前の分まで頑張って、必ず決勝まで行くから」と。まずは準々決勝の鹿島戦でリーグ戦のリベンジを果たし、その言葉を実現するための第一歩としたい。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は9月9日に行なわれる25節・鳥栖戦の予定。お楽しみに!