どこの町でも、専門の個人商店が少なくなって久しいですが、2017年1月にオープンした「ベジオベジコ根津」は、今注目されている“現代の八百屋さん”。東京都内でも歴史と情緒あふれる町・根津にあり、大きな“ベジ”のロゴと“愛情一筋 八百屋”と記された暖簾がひときわ目を引く、なんともおしゃれな佇まいです。

わずか8坪のスペースに、オリジナルの木箱が配置され、そこには宮崎を中心とした九州産の野菜が並べられています。奥には季節季節の野菜とフルーツをたっぷり使ったスムージーやコールドプレスジュース、煎茶、紅茶の販売も。それらは農薬や化学肥料を使わないオーガニックなものが中心。見れば見るほど、単なるおしゃれショップではないことがうかがわれます。それもそのはず、ここは“スムージー女子”たちからも信頼の厚い「ベジオベジコ」の初のフラッグシップ店なのです。

 

「ベジオベジコ」は、2013年に宮崎県のオーガニック野菜を提供するインターネットショップとして創業。生の葉野菜と果物をミキサーで混ぜ合わせたスムージーに適したセット商品が、美容に関心のある人たちに支持され、愛好者には著名なタレントさんや女優さんも。前述の通り、扱うのは宮崎を中心とした九州産の野菜やフルーツがメインとなっています。その理由を、代表取締役の平林聡一朗さんに尋ねました。

取材に訪れたのは夏真っ盛り。つまり、野菜やフルーツの種類が少ない時期だったのですが、宮崎県産の「飫肥杉(おびすぎ)」で作られたオリジナルの木箱には、つややかで張りのある野菜の数々が整然と陳列されていました。

 

店頭に並び、各地に配達される野菜&フルーツのほとんどが、ベジオベジコの現地スタッフが各農家を一軒一軒まわって集荷しているもの。左は宮崎県の伝統野菜「佐土原なす」。しぎ焼きにしたところ、トロトロの食感に驚きました。右は“和製グレープフルーツ”と称される、果汁たっぷりの「河内晩柑(かわちばんかん)」。やさしい酸味が特長です。

 

注文は専用アプリ「VEGERY」(iOS/Android)から。「ベジオベジコ」を試してみるなら、まずはセット商品がおすすめです。旬の野菜が8種類届く「¥2,000セット」、500mlのスムージーを2杯つくれる「スムージーセット」など。

 

卵に牛乳、パン、アルコール……と、野菜やフルーツ以外のアイテムも充実しています。今晩のおかずに迷ったら、メンチやアジの串カツなど加工食品も。

 

野菜に興味のない人においしさを伝えたい

「私たちは“農家さんをハッピーに”を理念に掲げ、出身地である宮崎の野菜を定期便として届けてきました。どうしてそう考えるようになったかというと、そもそものきっかけは2011年の東日本大震災後のことです。復興支援というのはおこがましいですが、岩手県の陸前高田ではワカメの養殖で海に出たり、場や農作業のお手伝いに通ったりしていました。

 

岩手を応援していたその頃、宮崎県では新燃岳という火山が噴火し、さらには鳥インフルエンザや口蹄疫があって……じつは自分の地元も落ち込んでいることを知りました。そこで自分たちにできることがないのか? と勝手な使命感のようなものから、地元の農家さんを応援するためにベジオベジコをスタートさせたのです」(平林さん・以下同)

 

震災当時、平林さんはまだ大学生。故郷のために自分の手でできることを模索しつつも、当初の職業選択に“農業に携わる”ことはなかったとか。ところが、宮崎の魅力を考えるうちに“野菜のおいしさを伝えること”にたどり着いたのでした。

 

とはいえ世間には、安心とおいしさを備えた“こだわり野菜を届ける”商売はすでにたくさん存在しています。たくさんの人々に宮崎の野菜を伝えるにはどうしたらいいかを考え、「野菜に興味ある人々ではなく、美容に関心の高い人たちをターゲットにしよう、という切り口で、まずはスムージー用のセットをはじめました」

 

持ち運びにぴったりで可愛いデザインのスムージー用ボトルも販売、野菜にはフードコーディネーターによるバリエーション豊かなレシピを同梱するなど、初心者にもやさしく、かつリピートしたくなる仕組みを提案することで、どんどんとその販路を拡げているのです。

オリジナルのボトルはスムージーにぴったり。0℃〜100℃に対応しているので、温かい飲み物を入れても大丈夫。1本1500円

 

食卓を変えていける“八百屋”に

“農家さんをハッピーに”という理念のために、平林さんがしていることは「農家さんから正当な価格で買い取ること」と「農家さんの想いやこだわりを伝えること」です。こう書くと「じゃ、よそは正当な価格じゃないの?」となるでしょう。必ずしもそういうわけではなく、従来の流通では、農薬の使用不使用や、手をかけた時間などに関わらず、一定規格であればその値段での取引となり、必ずしも手間をかけたからといってその分、高く売れるわけではありません。そこで平林さんは、「大切に育てられた野菜に対して相応の価値を払いたい、そうすることで、その農業が活性化する」と考えました。だから、そうした農家さん自身の考えをユーザーに伝えることにも積極的。生産者と消費者の顔が互いに見えることで、よりよい関係ができるのです。

 

「根津の実店舗のオープンに合わせ、これまでの宅配便(ヤマト運輸、佐川急便、ゆうパック)に加え、スタッフ自らが届けるデリバリーサービスを都内の一部地域で始めました。私をはじめスタッフが直接お届けしますから、農家のみなさんと召し上がるお客さんたちを、いっそうダイレクトにつなげる橋渡しとなっていると思います」。農家さんの想いや、どう調理したらおいしくなるかはもちろんのこと、ユーザーからの「こんなふうに食べたらよかった!」「もっとこんなお野菜がほしい!」というリクエストがあり、それを伝えるなど、まさに顔と心が見える関係が育っているそうです。

 

これまでもそうしたサービスがなかったわけではありませんが、画期的なのがその注文方法です。ネット販売に慣れ親しんだ時代とはいえ、ウェブサイトにログインしてあれこれ記入して……というのは面倒と思う方も多いはず。平林さんらは、なんとアプリでその手間を解消しました。アプリ「VEGERY(ベジリー)」はわずか3タップ! セット商品もありますが「福重さんの小松菜」「幻の佐土原なす」「苦みのない子供ピーマン」といった単品での購入も可能なのです。配達地域は限られますが、当日配達どころか「2時間後に!」という要望もOK。翌日配送なら関東全域が対象です。ふだんから多忙な人たち、突然の体調不良でお買い物に出かけられなくなった人にとって便利なサービスです。当初は野菜とフルーツでしたが、今はお米、卵、精肉、ハンバーグ、ワイン、ぬか漬けキットなどバリエーションがぐんぐん増えています。

 

「お客さんと対面でお話しするうちに、こんなのがあったほうがいい、取り扱ってという声がたくさん聞こえてきまして。それにお応えすることが、わたしたちの特徴になっていると思います。そのうち根津のお店では、『この野菜、ぬか漬けにしておいてよ、明日取りに来るから!』と言っていただけるようになるのではないでしょうか。かつて、町にあった“御用聞き”、なんでも揃えている“三河屋さん”のように、お客さんの暮らしに寄り添う存在を目指しています」

 

1.アプリから注文

注文はアプリからできて手軽。合計額が1500円以上になれば、商品はひとつずつでも購入可能(関東翌日配送は3500円〜)。産地・内容量・栽培方法・特徴・保存方法と食べごろがわかりやすく記されていて、使い勝手のいいアプリです。

 

2.スタッフが野菜を厳選

届いたお客さまからの注文に従って、野菜を吟味する代表の平林さん。

 

3.バイクでお客さまの元へ!

白いシャツに、昔ながらの“帆前掛け”姿でデリバリーに出発します。

 

4.自宅まで最速1時間でお届け

無事に配達。前回の商品の感想や新たな商品のリクエストなど、お客さまとのコミュニケーションが大きく役立つそうです。

 

5.必要な野菜を必要なタイミングで入手

買い忘れに気づいたときに、サッとアプリを操作してオーダーが可能。午後に注文しても夕方に届くという便利さを一度知れば、リピートしたくなるはず。

 

では実際、ユーザーはこのサービスをどう感じているのでしょうか? サービス開始時から愛好しているという、大谷比呂美さんに教えてもらいました。仕事が忙しく時間がない中で、その分「おいしくてカラダにいいもの」を求めて、これまでも有機野菜をはじめさまざまな宅配サービスを利用してきたそう。

 

「週に2回、お友だちを招いての食事会によく利用していますね。セットの野菜ではなく、メニューを決めて注文することが多いでしょうか。作っている方、売ってくれる方の顔が見えるのが安心ですし、スーパーでは買えない、よりいいものを手に入れているという実感があるんです。それに、なにより便利。アプリなので手軽で移動時間にでもサクッと注文できますし、『買い忘れた!』なんて時にも重宝します。

 

『こんなのあったらいいね』という意見にも耳を傾けてくれて。また、私の前に届けたお客さんに教わったレシピを教えてくださったり、その逆もあったりなど、生産者さん、お店、私たちそれぞれが近い間柄になったようで、それもまた楽しいですね」(大谷さん)

 

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