ケガから復帰の江口がグランドスラム・デビュー「うれしいけど、物足りなさ感じた」 [全米オープン]

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 アメリカ・ニューヨークで開催されている「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月28日〜9月10日/ハードコート)が開幕。日本勢は、錦織圭(日清食品)と西岡良仁(ミキハウス)が、それぞれ右手首と左膝の故障で欠場となったが、なお男女合わせて8人が出場している。

 初日は、左膝の故障から復帰してきて3ヵ月の江口実沙(橋本総業ホールディングス)が唯一登場。スペシャル・ランキングを生かし、繰り上がりでの本戦ダイレクト・インでうれしいグランドスラム・デビューを果たしたが、世界ランク41位のクリスティーナ・プリスコバ(チェコ)に2-6 2-6で敗れた。

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 知る人ぞ知る"因縁"の対決だった。昨年9月に中国の大連で行われた125Kシリーズの決勝で、江口は勝利まであと1ゲームというところで途中棄権した。内側側副靱帯および前十字靭帯の断裂という大ケガを負い、担架での退場。ほとんど手が届いていた125Kシリーズ初優勝を逃したばかりか、その後、8ヵ月間のツアー離脱を余儀なくされた。そのときの対戦相手がプリスコバだったのだ。現在、世界1位のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)の双子の姉である。

 江口は全仏オープンの予選で復帰。ここまで4大会に出場したが、まだ勝利はなく、実際のランキングは316位まで落ちている。しかし、故障選手の救済措置であるスペシャルランキング・システムによって保持していた「109位」でエントリー。当初はギリギリで本戦に入れず、予選から出場の予定だったが、約2週間前にビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)が欠場したため本戦に繰り上がった。

 これまでグランドスラムの予選に挑戦すること14回。全米オープンは2014年と2015年に予選の最終ラウンドまで進んだ場所で、特に2015年の逆転負けは悔やまれた。何度も予選の壁に跳ね返されてきた江口が、「7割くらい」の回復状態で夢の舞台を迎えたことは残念だったが、「楽しみだったし、直前まで緊張もなかった。試合を楽しめたらいいなと思っていた」と振り返る。

 一年前は122位だったランキングを41位まで上げたプリスコバも、3年ぶりの出場となる全米オープンに気持ちが入っていた。その1回戦の相手が江口と知ったときの感想は、「オー・マイ・ゴッド」。しかし試合は一方的だった。

 サービスが武器のプリスコバには、左利きというアドバンテージもある。この日もそのサービス力、長いリーチを生かしたパワフルなショットに加え、得意のドロップショットも多用する組み立てで、まだ動きに自信のない江口を苦しめた。

「私の状況を知っているだけに、走らされるだろうなと思っていた」という江口の言葉に、勝負の世界の苛酷さを思い知らされる。同情などしては、逆に食われる。前回の対戦で完全に負けていたプリスコバの攻め方には固い決意が見えた。

 江口は両セットとも序盤でブレークを許し、自身のブレークポイントはセットに2度ずつあったが、生かすことができなかった。

「もっと走れたのになって思うこともよくある。やっぱり物足りなさが残りました」

 それでも、復帰をあきらめかけたときを思えば、前に向かって進める今は幸せだろう。

 試合後の握手で二人は肩を抱き合ったとき、プリスコバは言った。

「あなたが戻って来られてよかった」

 因縁の相手からの言葉もまた、次へ向かうモティベーションになったに違いない。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「全米オープン」1回戦でグランドスラム・デビューを飾った江口実沙(橋本総業ホールディングス)。左膝の故障から復帰して3ヵ月後の舞台だった。(写真◎Getty Images)
Photo: NEW YORK, NY - AUGUST 28: Misa Eguchi of Japan returns a shot to Kristyna Pliskova of Czech Republic on Day One of the 2017 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on August 28, 2017 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Steven Ryan/Getty Images)