「前に行けないですから。ひとりひとりの能力が高い」

 8月26日に行なわれた第3節マンチェスター・ユナイテッド戦後に岡崎慎司の発した言葉が、この試合のすべてを集約していた。


岡崎慎司は相手の手堅いディフェンスに阻まれて無得点に終わった

 開幕から2連勝中、しかも2戦とも4-0の大勝と好調なマンチェスター・Uに、レスター・シティは苦戦を強いられた。30分経過時のボールポゼッションでは、マンチェスター・Uが70%を記録。同時間のシュート数もマンチェスター・Uの8本に対し、レスターはわずか2本と押し込まれていた。

 そんな劣勢のなか、2トップの一角として先発した岡崎も守備にまわる時間が長かった。過去2試合は攻撃的な姿勢で2得点につなげたが、「守備に重きを置かざるを得なかった。(試合前に監督からもそう)言われていたんで」。低い位置まで下がって守備に走り、パスの起点となるセントラルMFのネマニャ・マティッチとポール・ポグバに食らいついていった。

 実際、岡崎の守備は効果的だった。17分にはポグバへのスライディングタックルでボールを奪って速攻につなげた。45分にも身体を腰からポグバにぶつけて体当たり。フランス代表MFを吹き飛ばしてマイボールにした。岡崎が中盤に入った4-5-1に近いフォーメーションで、レスターはマンチェスター・Uの攻撃を食い止めていた。ピッチ上で日本代表FWも手応えを感じていたという。

「最初はマティッチだけを見るって感じだったんですけど、やっぱりポグバが前へ行くんで、(ポグバが)前に行ったときは僕がポグバを見て、(マンチェスター・Uが)後ろで回しているときはマティッチについてという感じで。(チームとして)そこを整理してから、そんなにやられなかった。だいぶ中盤を助けることができたかなと思う。(前半は)相手にミドルシュートしか打たせていなかった」

 ただ、「守備はうまくできたけど、ボールを持ったときはもうちょっと(うまく)やりたかった」と本人が振り返るように、攻撃面では思うようなプレーを示せなかった。監督から守備重視の指示を受けながらも、自主的に前線へ飛び出そうとしていたが、対峙するマティッチのマークに苦しんだ。

 中盤でボールを受けて前に運ぼうとしても、セルビア代表MFの足がスッと伸びてくる。あるいは、194cm・85kgのマティッチが身体をぶつけてブロックする。「前に行けないですから」との言葉どおり、フィジカルもアジリティ(敏捷性)もあるマンチェスター・Uの守備に手こずった。シュート数はカウンターから放った1本。マンチェスター・Uの壁は厚く、そして高かったということになる。

 今シーズンからゴールに向かう意識を高めている岡崎だが、優勝候補の呼び声も高いマンチェスター・Uを相手に、この試合は守備にまわらざるを得なかった。守備で効いていたその日本代表FWは60分で交代。クレイグ・シェイクスピア監督は「中盤の守備を強化したかった」と采配について説明したが、代わりに入ったのは運動量の少ないMFアンディ・キングで、レスターはその後に2ゴールを被弾して敗れた。岡崎としても、チームとしても、強豪相手に難しさを感じた一戦となった。

 今節を終えて、プレミアリーグは国際マッチウィークのため一旦中断。8月31日に行なわれるオーストラリア代表とのワールドカップ・アジア最終予選に向けて、岡崎も機上の人となった。プレミアリーグでゴールに向かう意識を強め、2得点につなげているが、その心持ちと積極的な姿勢を日本代表にも持ち込みたいという。

「レスターでプレーの意識を『もうちょっと前へ、攻撃的に』と変えてから2ゴールを挙げた。そういう意味では、代表でも(その意識が)活かされると思う。今までは『代表に合わせて』と形を変えていましたけど、僕がやれることは自分の特徴を出すこと。ゴール前にもっと入っていけるように、代表でも意識してやっていきたい。

 代表のワントップは身体が強くて、ポストプレーのできる選手に特化していて、2列目のために仕事をやらないといけない。そういうサッカーだと思います。ただ、その考えにとらわれ過ぎて(自分が)ダメになってきている部分もある。今までその考えに合わせようとしていたけど、そうではなくて、『俺はこうだ!』と。ダメでもいいからやっていく。

(プレミアリーグで)2点獲っているので、気持ち的にいい。周りも(岡崎が)点を獲っていると見てくれるし、対戦相手にもそういう風に思われるだろうし。自分の気持ちとして、自信を持って臨めます」

 プレシーズンマッチが行なわれた中国では高温の環境、キャンプ地のオーストリアでは高地への適応に苦しんだが、イギリスに戻ってきてからは「調子が上がっている」。実際、シーズン開幕後は動きのひとつひとつにキレがあり、運動量も豊富だ。得点感覚も鋭い今、最高のコンデイションにあると言っていい。

 もちろん、オーストラリア戦のFWに誰が起用されるかはわからない。ただ、ピッチに立てば、大きな力になることは間違いないだろう。

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